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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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事実は

シャデルは、ミマサカからの再三の使者に訝しんでいた。

ショーンが戻って、翔太が残っているので、あちらではそれなりに回っているはずなのだ。

あちらでは、こちらは全てディンダシェリアだと思っているが、こちらはディンダシェリアとアーシャンテンダに分かれていて、シャデルはアーシャンテンダのサラデーナの王なのだ。

残りの三つの国の王達は、全てシャデルに任せると言っているので、基本シャデルが決めるのだが、戦となると別だった。

何しろ、真実ミマサカと隣り合っているのはディンダシェリアのリーマサンデで、シャデルが戦をすると決めたなら、真っ先に戦場になるのはリーマサンデなのだ。

なので、シマネキヅキでの戦に、シャデルが手を貸すなどあり得なかった。

その事を、あちらの王である栄進は知らないようだった。

どうも栄進は、あまり学ぶということをしない王らしい。

しかし、デクスがあちらに居る以上、シャデルも知らぬ存ぜぬで済ませるわけにもいかなかった。

「…困ったものよ。」シャデルは、ショーンを前に言った。「こんな時に戦など。」

ショーンは、頷いた。

「何でもヤマトの王であるリュウガが、犯罪人のデクスを引き渡せと言った栄進に単身乗り込んで来て、始末しようとしたのだとか。病むに病まれず封じたが、あちらはそれを理由に攻め込もうとしておるようだと言って来ています。しかし、オレはリュウガ王に会いましたが、そこまで愚かな王ではなかったのに。デクスに唆されて、己の力に慢心してそんなことをしたんでしょうか。」

シャデルは、首を振った。

「戦となると片方からの話だけを鵜呑みにするわけにはいかぬ。しかしデクスならあり得るだけに真実味はあるの。しかし、たかがデクス一人を守るために、他国の王を消そうとするだろうか。戦になるのに?」

ショーンは、息をついた。

「オレはそこまでリュウガ王を知っているわけではないので、何とも。」

シャデルは、ミマサカの方角を見つめた。

「…しかし、良からぬ気がするのは事実。我が参るのが一番良いのだろうが、ここを任せる者が居らぬゆえ。とはいえ…ヤマトの方の話も聞かねばなるまい。ならばショーン、一度ミマサカへ行って、使者としてヤマトへ参るか。」

ショーンは、考えた。ミマサカへ行って、そこからヤマトへ渡れるだろうか。今は一触即発の状態のはずだ。表から行って、無事に大河を渡れるとも思えない。

「…無理ではないでしょうか。ヤマトは王を捕らえられて気が立っておるでしょう。それに、今ヤマトで実権を握っているのは、リュウガ王が居ない今、コンラートです。記憶は戻っていないようでしたが、あのコンラートが我らを無事に迎え入れるとは思えない。ミマサカから真っ直ぐに行けば殲滅されるのがおちでしょう。」

コンラートの性質なら、従兄が捕らえられて劣化の如く怒っているはずだ。

加えてあの力は馬鹿にならない。ウラノスから惜し気もなく能力を与えられ、天で安穏と暮らしていたのだ。ウラノスに対する執着を見ても、それが今リュウガだとしたら、すぐに攻め込んでいないのが不思議なぐらいだった。

シャデルは、空を睨んで言った。

「だが、ヤマトヘいきなりに潜んで行くのもデクスが居るゆえ危険ぞ。とはいえ今の状況だとヤマトもこちらと話しがしたいのではないか。栄進ばかりがこちらと話して、あちらの事が全く耳に入って来ぬのだ。しかし、使者を送ろうにもミマサカが間にあるゆえ来られないのかもしれぬ。どうしたものか…。」

ショーンは、立ち上がった。

「少し、こちらの国境を見て参りましょうか。」

シャデルは、頷く。

「リーマサンデから窺って来てくれるか。ディンメルクから海側を行っても良いぞ。ミマサカには、しばらく行かぬ方が良い。栄進が、どうもこちらを利用しようとしておるように思えてならぬのだ。デクスの事があるゆえ、気にかけておったが、頭から信じるのは危ないかと思う。」

ショーンは、頷いた。

「では、行って参ります。もしショウタから連絡があったら、一度戻って来るように言ってもらって良いでしょうか。今は有事であるからと言って。」

シャデルは、それに頷いた。

「もう留学生たちには引き揚げるように指示を出した。恐らく翔太はそれらを率いて戻って来るのではないかの。」

ショーンは、ホッとした。では、ディンダシェリアとアーシャンテンダの民は巻き込まれずに済むな。

「よろしくお願い致します。」

ショーンは、そう言うと窓から南へと飛んで行った。

シャデルはそれを見送りながら、コンラートの記憶が戻っても、こちらの話を素直に聞かぬだろうな、と思っていた。何しろ、ウラノスを一旦は黒い命に変えてしまいそうになるほど、逆らったのだ。

シャデルは、やはりウラノスともしっかりと話し合わねばならない、と思い、ここから一番近い位置にある、台座へ向かおうと自分も窓から飛び立ったのだった。


その頃ヤマトでは、アレクサンドルは邦光と共に他三人、直秀、克重、アントニーを連れて北から、デクスとシエラは他四人を連れて南から、それぞれ出発しようとしていた。

双方が全く同じ、コンラートが書いた書状を手に、どちらかがディンダシェリア大陸へ到達するのが目的で、無事にミマサカを越えられたもの達がそれをシャデルに渡し、話をする。

ただ、デクスはあちらが狙っている張本人なので、話を聞くか分からない。

なので、ショーンと面識のあるシエラが共に行き、デクスの真実を話す予定だった。

何しろシエラは術に長けてはおらず、それをショーンも知っている。嘘を隠し通すだけの力もないので、シエラが嘘をついていないのは分かるはずだった。

コンラートが、皆を見送りに城の出口まで来て、言った。

「ここは僕に任せて。みんなが戻るまで絶対に誰一人殺させたりしないから。」

アレクサンドルは頷いた。

「主の力なら大丈夫だろうが、我はあちらの民を逆に案じるわ。栄進が下手な手を打ってこちらへなど誰か送り込んで来たら、主ならあっさり殺そうが。悪いのは何も知らずに命に従う民ではなく、栄進なのだからな。そこを忘れるでないぞ。」

コンラートは、頬を膨らませた。

「分かってるよ。でもそいつらがこっちの民を殺そうとしたら殺すよ。僕はそういうの平気だもんね。だってどうせまた天の循環に入って生まれてくるんだからさ。」

デクスは、咎めるように言った。

「だからそれぞ。地上はやはり楽しいもの。いろいろままならぬのがまた天とは違って学びになって有意義なのだ。せっかくに降りたのだから、誰でも何かを学んで上がりたいと思うではないか。まして回りの命との交流がそれで絶たれるのだからの。今生家族や友として暮らしておったのに、それらと別れるのはお互いにつらいのだ。気持ちを汲んでやらねば。」

コンラートは、横を向いて頷いた。

「分かったよ。ヤマトの民を殺したら殺すけど、殺されなかったら倒すぐらいにするよ。」

アレクサンドルはまたま不安だったが、それでも頷いた。

「主を信じよう。では、行って参る。」

コンラートは、また頷いた。

「行ってらっしゃい。サディアスのためにも、アレクサンドルは捕まらないでね。」

封印を解かせようとするからだろう。

アレクサンドルは頷いた。

「誰に言うておる。捕まりはせぬわ。」

そうして、コンラートと別れて城を出た。


城の外で、デクスは言った。

「ではの。お互いあちらで会う事を祈ろうぞ。」

アレクサンドルは、頷く。

「主はあちらに警戒されておるから難しいだろうが、気を付けて参れ。なに、もし捕らえられても我がすぐに参ってあれらに話すゆえ。案じるでない。」

デクスは、苦笑した。

「別に我は助かりたいとは思うておらぬ。この命が有意義に使われるのなら、良い事よ。もしあちらの条件が我の命なら、我はそれを飲むつもりよ。」

それにはシエラが反論した。

「そんなの、オレがさせないからね!デクスは被害者なんだもの、ウラノスだってだから助けたのに!だからオレが頑張るし大丈夫だよ!」

デクスは、苦笑した。

「そうか、分かった。では参ろう。」

そうして、ヤマトの術士達と共に、二手に分かれてデクスとシエラ、そしてアレクサンドルはタキを出発したのだった。


アレクサンドルが他の四人をあっさりと気の玉に籠めて運んで飛んで行ったのを見て、シエラは言った。

「デクスはあれ、出来る?」

デクスは、首を振った。

「あれは無理だな。あやつほど我には力がないのだ。主なら出来るのだが、まだ未熟であるし落としたら大変ぞ。やったことがなかろう?」

シエラは、首を振った。

「ないと思う。たぶん、クロノスの頃ならやったと思うけど。」

デクスは頷いた。

「そうであろうな。では、吊り下げよう。」と、他の四人を見た。「主ら、何かハーネスのような物を持ってはおらぬか。我らがそのベルトを掴めば吊り下げられるような。」

義朋が言った。

「はい。登山用の物なら有りますが。」

出して大きくしたのは、尻の部分を覆うような形のベルトの付いた物だった。

デクスは、それを手に取って見て、言った。

「ふむ。これなら大丈夫そうよ。全員これを付けて、三人は我が、一人はシエラが吊り下げて参ろう。車では時がかかってしようがないからの。飛ぶのが速い。」

四人は、それを聞いて身を固くした。車が遅い…。

シエラは、顔をしかめながらも頷いた。

「オレ、やったことないけどやってみる。」

余計に身を縮める四人に、デクスは言った。

「大丈夫よ、落ちたら我が拾いに参るから。とはいえシエラ、落とすでないぞ。そうよ、腰に巻き付けて行けば問題なかろう。さあ、急げ。あちらはもう発ったのだぞ?」

言われて四人は、渋々ハーネスを装着した。

シエラとデクスについて来るのは黒髪黒目の義朋と緑の目の寿康、それに茶髪の兄弟の一人のアーサー、そして体がとても大きくごついこげ茶の髪に緑の瞳のゴードンだった。

他は術士だが、ゴードンだけは生粋の軍人だ。とはいえ、術も使えるのだが、空を飛ぶなど考えたことも無いので、大きな体を縮こまらせて緊張していた。

それを見たデクスは、言った。

「そうだの、本当なら重さを考えたらゴードンはシエラにと言いたいところだが、術が一般の民ぐらいしか使えぬから怖いであろう。我は寿康とアーサーとゴードンを吊り下げるゆえ、主は義朋を頼む。」

この中では、義朋が一番地位が高そうなのは、見ていて感じていた。それでも、義朋が体を硬くしたのを見て、シエラは言った。

「あの、オレ飛び始めたばかりだけど、飛ぶのは慣れて来たから大丈夫だよ。落ちる事は無いから。ただ、着地の時が不安なだけ。」

義朋は、それを聞いて目に見えて狼狽した。デクスは、呆れたように言った。

「だから脅すでないわ。そうよな、そろそろ着地だと高度を落としたら、義朋に降りると申せ。そうしたら、こやつは構えるゆえ、着地の衝撃は己で何とかしよるわ。」

義朋は、それには神妙に頷いた。術には長けているが、飛んだことは一度もない。だが、少し体を浮かせるぐらいなら大丈夫だった。

高所から落ちた時の術は、何度も習ったのでその対策なら出来そうだった。

覚悟を決めた義朋は、ハーネスのベルトをシエラに差し出した。

「よろしく頼む。」

シエラは、頷いた。

「任せてくれたら大丈夫。本当に、飛ぶのはもう大丈夫なんだよ。」

シエラは、差し出されたベルトをしっかりと腰に巻き付けて、義朋に手伝われて装着した。

「では、参るぞ。スピードを出すゆえ、息が詰まるやもしれぬし、そこは風圧をもろに受けぬように各々対策をせよ。」

デクスの無茶ぶりにも皆、真面目に頷いて構えた。

そうして、デクスとシエラは、南へと向けて飛び立ったのだった。

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