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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
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水面下で

デクスと手分けして階段を部屋の方へと駆け上がって行くと、何かが床に転がっているのが見えた。

「誠二!」

シエラは、廊下に倒れている、誠二を発見して駆け寄った。

良かった…階段じゃなかった。

シエラがそう思って誠二を抱き起すと、誠二は顔をしかめて大儀そうに眼を開いた。

「え…?シエラ?」と、重そうに体を起こすと、回りを見た。「あれ?オレなんでこんな所に寝てるんだ?」

シエラは、ホッとして言った。

「ミマサカからの術に掛かってたんだよ。こっちを探るために向こうから細く力を絞って放って来てたみたいで。龍雅陛下の結界が弱まってたから、それを抜けて来てたんだって。でも、もうコンラートが新しい結界を張ったから大丈夫だよ。」

誠二は、立ち上がろうと膝を立てて、ふと腹を押さえた。

「…そんなことが起こってるなんて知らなかった。ずっと寝てた感じだったんだけど、やたらと腹が減ってて死にそうだ。」

シエラは、同情したように頷いた。

「そうだよね。多分ご飯なんか碌に食べてないだろうから。なんでも遠くからだと操るのに苦労するみたいなんだ。そのままだと飢え死にしてしまうところだよ。」

誠二は、何とか立ち上がった。

「とにかく飯が食いたい。というか、オレだけか?他の二人は?」

シエラは、首を振った。

「まだ見つけてないんだ。部屋を見て来ようと思ってる。誠二は先に食堂へ行って。オレが探して連れてくから。」

誠二は、頷いた。

「そうさせてもらうよ。二人は頼んだ。」

そうして、フラフラとしながら食堂へと向かって歩いて行った。

シエラは、やっぱり術なんか掛かったままだったらまずかったんだと、コンラートには文句を言っておこう、とその時思った。


結局、美琴は部屋で、ライナンは兵士達の宿舎の近くで、倒れているのが見つかった。

部屋で美琴を発見したシエラは、誠二と同じように美琴を食堂へと送り、ライナンを探してさまよい歩いていたところを、デクスに連れられたライナンに会ってそれを知った。

そして、自分も食事を摂らなければならなかったシエラは、デクスと共に、どうしてこんなことになっているのか掻い摘んで話しながら、食堂へと一緒に向かった。

食堂では、誠二と美琴、それにアレクサンドルがもう、食事を終えて食後のお茶を飲んでいた。

「シエラ。良かった、ライナンも見つかったのか?」

誠二が一心地ついたのか、落ち着いた様子で言った。

シエラは、頷く。

「なんか兵舎の近くに倒れてたらしい。デクスが見つけて来てくれたんだ。」

美琴が、深刻な顔をして言った。

「アレクサンドル様から聞いたわ。大変な事になっているのね。なのに私達、何も知らずに術にかかっていたなんて。」

椅子へと座りながら、シエラは頷く。

「でも、それを利用したんだってコンラートが言ってたから。大丈夫だよ、そんなに長い間じゃない。朝食がちょっと遅くなったぐらいで済んで良かったよ。」

アレクサンドルが頷いた。

「あちらは何を考えておるのか。主らを殺すつもりであったのかと憤っておったところよ。このまま三食満足に食べられないままでいたら、主らは弱りきってしまっておっただろうに。」

ライナンが、目の前の食事を口に頬張りながら、言った。

「でも、多分すぐに気取られると思ってたんじゃないかな。コンラートが術に長けてるんなら、オレ達がおかしいと気付くだろうって。」

シエラは、首を傾げた。

「どうかな。栄進陛下は龍雅陛下を捕らえたぐらいなんだし、オレ達の命なんか何とも思ってないような気がする。とにかく、ここに居たら今はコンラートの結界が守ってるからね。みんなはここで待ってて。」

誠二が、食事を掻き込むシエラを見て言った。

「ちょっと待て、お前オレ達を置いていくつもりか?」

シエラは、頷いた。

「だって今回は命が懸かってるからね。オレは飛べるし最悪一人で逃げられるけど、みんなは違う。ヤマトの精鋭達と行くんだから。しかも少人数だよ?みんなには無理だ。」

誠二は、食い下がった。

「オレ達だって戦えるぞ?そのためにデクスに術を教わってたのに。」

しかし、デクスが割り込んだ。

「ならぬ。主らは基本的な事をマスターしただけで一般人と変わらぬぞ。ミマサカでは一般人は術を知らぬが、ヤマトでは一般人でもいくらでも神殿で学べるゆえ、ほとんどがある程度は使える。いわば護身術ぞ。主らはその程度。我らが対するのは軍人や修道士なのだ。主らでは到底敵わぬ。此度は諦めよ。」

アレクサンドルも頷く。

「こちらでは龍雅が王になってから術を一般に広く使えるようにしたのだ。ミマサカとは違う。国の考え方の違いであるが、主らは軍人には遠く及ばぬ。ここで待つのだ。」

シエラは、同じ大陸の中で国の違いでこうなるのだと思った。栄進がどう考えて術を禁じているのかは分からない…こうして外へ出て詳しく知ると、危ないという理由だけではない気もする。ヤマトでは、誰もが術を知り扱う事が出来、ミマサカでは違う。どうも、そこに政治的な匂いを感じずにはいられなかった。

「…今回はここに居ましょう。」美琴が、誠二に言った。「私達は足手まといになるわ。一般人よりは力があるみたいだけど、術を知らないんだもの。危険だと聞いていたけど、もしかしたら栄進陛下は民に力を持たせないように考えて術を決めた人にしか教えてないような気がして来たわ。」

シエラも、そう思った。だがショーンはディンダシェリアの住人だが、それに賛同しているようだった。危ないのは確かだが、どちらが良いとも言えないのかもしれない。

誠二が黙り込んだので、その話はそれで終わり、アレクサンドル、デクス、そしてシエラと誠二、ライナン、美琴は、食事を終えてコンラートに会うために王の居間へと向かった。


「…気取られたか。」

栄進が言うと、目の前にいるイライアスが頷いた。

「は。恐らくは結界が弱くなっているのに気付いたコリンが、結界を張り直したのかと。一瞬で遮断されました。」

栄進は、苦渋の表情を浮かべた。やはり、あのコリンの力は本物だった。

何しろ、このイライアスもかなりの力を持っているが、それをあっさりと遮断してしまったのだ。

どちらにしろ、時間の問題だとは思っていた。あちらで術に掛かった三人は、動かすのが難しく食事をさせるのにも一苦労だった。このままでは体が使い物にならなくなると、イライアスからも聞いていた。

イライアスの術で知ることが出来たのは、龍雅が一人でこちらへ来たのは栄進に、手を出させるためだったということだ。

コリンの力を知っている龍雅は、コリンから栄進が隠し通して来た心の内を聞き、策を練ったようだった。

そして、攻め込む口実のために自ら捕らえられ、後をコリンに任せたのだ。

しかし、コリンはすぐには取り返そうと思っていないらしく、あくまでも公に被害者だと思わせたいと、こちらから攻め込んで来るのを待っている。

…トキワ大戦の二の舞はせぬ。

栄進は、固くそう思っていた。父は、龍信の罠にかかって龍雅の存在を知らずに攻め込んだ。そのままこちらを制圧することも出来たが、龍雅はそれをしなかった。龍信の思惑は外れたのだろうが、栄進は龍雅は甘かったと思っていた。だからこそ、今こうして捕らえられ、父を殺した報いを受けるのだと。

だが、違った。

これは、罠だったのだ。

二十年前と同じ罠を仕掛けて来ていたのだ。

「…まだ攻めぬ。」栄進は、言った。「何を策していても龍雅はこちらの手の内ぞ。絶対に取り返そうとするはず。機はあるはずだ。コリンも封じて、身動き出来ぬようにして殺す。それまではこのままにらみ合いよ。」と、脇の基明を見た。「ディンダシェリアからの返事はまだ来ぬか。」

基明は、首を振った。

「未だ。あちらも災害で忙しいらしく、使者は後から返事を返すと帰されたのだと聞いております。ただ、内政には干渉しないと申しておられたそうで、良い返事は期待出来ぬかと…。」

栄進は、眉を寄せた。

「ショーンだけでも戻ってもらえぬかと今一度申せ。翔太に、連絡をさせてはどうか。同郷の者の言葉は聞くだろうて。」

基明は、頭を下げた。

「は。では早急に。」

そして、そこを出て行く。

イライアスは、険しい顔で栄進を見た。

「しかし陛下、龍雅王のことはどのように説明致しますか。ショーンを納得させる説明を陛下が出来たとしても、回りのもの達は陛下のように気取られずに偽りを申す事は出来ませぬ。」

栄進は、顔を険しくした。

「修道士達とは接しさせぬ。他に詳しく知る者は居らぬし、主はショーンに会わぬで居たら良い。国防のためにアレク大河へ行っておると申すゆえ。とにかくは、アレクサンドルもデクスもあちらに居る以上、ディンダシェリアの協力は不可欠ぞ。幸い、龍雅はあちらと交流しておらぬ。とにかくは、あちらにディンダシェリア大陸へ行かせぬ事よ。警備を強化せよ。ヤマトから、誰も出してはならぬ。交易も止めておるな?」

イライアスは、頷いた。

「は。今朝から一切ヤマトの船は港に入れておりませぬ。民の間では何事かと不安が広がっているようでありますが。」

栄進は、イライアスを見た。

「とりあえずは政務上の不具合が生じていて、しばらく国境を閉じると告示せよ。いつ開戦するかも分からぬしの。ただ、経済活動が止まると国庫からも支出が多くなるゆえ、交易関係の者達以外は通常の生活をしておるようにとの。」

イライアスは、頭を下げた。

「は。では、大臣にそのように知らせます。」

イライアスも、そこを出て行った。

栄進は、それを見送って、これから先の事を考えて眉を寄せた。龍雅だけが敵ではなかった。だが、こちらも味方を増やして行く方法はいくらでもある。

栄進は、一歩も退くつもりはなかった。

もう、踏み出してしまったのだ。

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