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シマネキヅキ~The World of SHIMANEKIDUKI~  作者:
二つの国の対立
35/77

会合

会合の間では、臣下一同がひしめき合って座っていた。

とはいえ、これで全てではなく、各部署の責任者だけなのはシエラにも分かる。

その一番の上座に、コンラートが座ってこちらを見ていた。

「こっちへ。みんなに一通り説明したんだ。アーシャンテンダのシャデル王に秘かに使者を送る事にはみんなが同意してくれたよ。」

アレクサンドルは、示されたコンラートの近くの椅子へと座りながら、言った。

「考えたのだが、空を高く飛べば、あちらからは手を出せぬのではないか。それどころか、気取る事も出来ぬのでは。」

コンラートは、それを聞いて首を振った。

「僕、今あっちを探ったんだけど、高い結界を張ってるんだ。多分、僕達が空高く上がって逃げたから、その対策をエイシンのヤツがとってきたんだと思うんだよね。」

アレクサンドルは、顔をしかめた。恐らくは、これまでの術を洗いざらい修道士から聞き出して、その中から出来る対策を打って来たのだろう。

こちらのコリンもアレクサンドルも、空を飛ぶことが出来る。そして、栄進は知らないが、シエラもデクスも飛べるのだ。

栄進からすると、自国の空の上を、ポンポンと飛んで行かれたらたまらないという事だろう。

デクスが、言った。

「それは、どのようなものか。領地全体に結界を張るのは無理であろう。龍雅陛下ならいざ知らず、あちらにはそこまでの術士は居らぬはず。」

コンラートは、息をついた。

「それが、分からないんだ。一度近付いて見て、どんな様子なのか調べて来なければ、と思っていたところだよ。今、これまでしなかったいろんな気配があっちから流れて来て、なんだか気持ち悪いなって。そりゃ、龍雅を捕らえてるんだから、こっちが取り返しに来るのは分かってるし警戒もするだろうけど。」

デクスは、頷いた。

「ならば、先に調査か。大河の近くへ見に参ろう。飛べる者達で手分けして、大河の端から端まで飛んであちらの様子を隈なく調べるのだ。それからでなければ、ディンダシェリアには使者を送る事は出来まい。片っ端から捕らえられて質に取られてはこちらは身動きできぬようになる。」

邦光が、言った。

「ですが、空を飛べる者の対策を打って来ているのなら、少人数で行くのは危ないかと思うのですが。大河の近くまで行くのは良いのですが、大河の上まで行くのはお勧めできませぬ。ちょうど中央に国境がございますから、その辺りに何をしておるのか案じられます。」

コンラートは、言った。

「分かってる。無理に近づいたりしないし、河の上には行かないよ。ここにはまだ、龍雅が生きている証の結界が残ってるから、安全だろう。デクスとアレクサンドルにはここに居てもらって、僕とシエラで調査に行って来ようかと思うんだ。」

それには、デクスが抗議するように言った。

「我らの方が術を知っておるのだぞ?古来からの術を体得しておるのだから、主こそここに居れ。逆に我とアレクサンドルが行った方が探って参れるわ。」

邦光も、コンラートを見てすがるように言った。

「コリン様、どうかここにお留まりを。龍雅様が捕らえられてしまった今、コリン様より他に、この城を動かせる者が居らぬのでございます。幸い、力を持つ術士が三人も揃っておるのです。どうか、この三人にお任せして、コリン様はこちらに。」

コンラートは、歯ぎしりした。確かに王が捕らえられ、その血筋で能力を継いでいると思われるのがコンラート一人しか居ない現状、臣下がコンラートまで捕らえられてはと恐れるのは分かるのだ。

だが、コンラートは真実龍雅の従弟ではない。それでも、龍雅が捕らえられてこの国を離れている以上、それを大義名分をもって守れるのはコンラートしか居ないのだ。

「…分かった!でも、くれぐれも気を付けてくれよ。シエラはまだ記憶が戻って無いからめっちゃ未熟なんだ。本当に気を付けてくれ。」

デクスはホッとしたように頷くと、シエラを見た。

「では、すぐに出るか。主は寝ておらぬで大丈夫か、シエラ。」

シエラは、こんなことがあって興奮しているのか、全く眠気が来ないので、頷いた。

「平気。それより、龍雅陛下が心配だから。いらっしゃらない間にヤマトに何かあったら、それこそ大変だもの。でも、誠二達は放って置くの?オレだけ?」

それには、アレクサンドルが答えた。

「飛べぬとこの距離は時が掛かるのだ。ミマサカを遠目に端から端までザッと見て参るのだからの。あれらは置いて参る。これだけ騒いでおっても寝ておるのだし、わざわざ起こす事もあるまい。とりあえず、我らで行って参ろう。早くディンダシェリアと連絡を取り合わねば…栄進があちらの王に何を言うか分からぬからな。」

シエラは、何も言わずに出て行くのには気が退けたが、それでも寝ているのを起こしてまで話すのもまた気が退けた。

なので、頷いて立ち上がった。

「オレ、まだあんまり速く飛べないけど頑張ります。行きましょう。」

デクスは、頷いて立ち上がった。

「参ろう。何かあったら主はこちらへ戻って連絡することが出来るしな。人数は居た方が良い。参るぞ、アレクサンドル。」

アレクサンドルも、頷いて立ち上がった。

「よし。では、調査をして参る。主らはその後ディンダシェリアへ向かうもの達の選別をしておいてくれ。二手に分かれる方が良いゆえ、八人ほど居れば良いか。」

コンラートは、頷いた。

「それは任せて。気を付けてね。こんなことをして来るぐらいだから、あっちも勝算があるんだろうから。」

アレクサンドルとデクスは頷き、シエラと共に会合の間を出て行った。

コンラートは、邦光を見た。

「邦光、術に長けた者を六人、兵士を二人選んで。多分、術と術の戦いになるから、術に長けてれば長けてるほどいい。兵士は、実力行使に来た時のための人員だからとびきり手練れをお願い。ディンダシェリア大陸に入ってしまえば大丈夫だろうけど、ミマサカを抜けられなきゃならないからね。」

邦光は、頭を下げた。

「は!早急に!」

そうして、ディンダシェリアへ向けての対策が進んで行った。


夜が明けた頃、誠二と美琴、ライナンが起きてきて、食堂へと入って来た。

何やらボーッとしていて、頭がハッキリしないようだ。

まるで人形のように何も話す事なく入って来た三人は、自動的に椅子へと座り、目の前に準備された食事を摂り始めた。

コンラートは、言った。

「…おはよう。」三人が、こちらを向く。「シエラが居ないのに、何も聞かないんだね。」

言われて、ハッとしたように美琴がこちらを向いた。

「…確かにそうだわ。シエラはどうしたの?」

コンラートは、そんな中でも黙々と食事をしている誠二に眉を寄せながら、言った。

「昨夜、龍雅が捕らえられたのが分かったんだ。だから、デクスと一緒に偵察に行ったよ。」

ライナンが、言った。

「陛下が?大丈夫なのか?」

特に驚いているようでもない。

まるで、うまくプログラムされたロボットのようだった。

「…大丈夫だよ。すぐに取り返す。その方法も分かったしね。」

そこで、誠二がやっとこちらを向いた。

「何か作戦があるのか?」

コンラートは、スッと表情を明るく変えると、言った。

「うん。僕を誰だと思ってるの?神の愛ぐし子だよ?デクスも言ってたでしょ、記憶の戻った僕に、敵う者なんて居ないんだよ。だからリュウガだって僕を側に置いてたんだからさ。あっちの城の事は、前に行った時に全部探ったよ。術を使えば何でもないんだ。」

すると、美琴が言う。

「でも、あっちでは何も知らない風で居たんでしょ?ショーンという嘘が分かる人が居たって聞いたわ。」

コンラートは、にんまりと笑った。

「そんなの、ショーンごときが僕の事を探れるはずはないじゃないか。それにね、エイシンだって嘘があるよ。隠してたって、僕には分かる。リュウガと一緒にしないで欲しいな。僕のが力があるの、君たちは知ってるじゃないか。」

三人は、ピタリと止まった。

そして、また動き出したかと思うと、誠二が言った。

「君は龍雅陛下より力があったっけ?」

コンラートは、うんざりしたように手を振った。

「やだなあ、見てるでしょ?リュウガがなんで一人であっちへ行ったと思ってるの?エイシンの事を僕が気取ったから、引っ掛けるためじゃないか。あっちを攻め落とすためには、大義名分が必要だからね。隙を見せたらエイシンは馬鹿だから、何か仕掛けて来ると思ったんだよ。見事に引っ掛かった。これで僕はいつでもあっちに攻めて行けるし、攻め込んで来るなら好都合じゃないか。僕はリュウガより力があるんだからね。一人で全部殺してみせるよ。僕はリュウガみたいに甘くはないから、そのまま城までエイシンを討ち取りに行くさ。だいたい、リュウガはエイシンの本心を知って後悔してたんだ。なんであの時にあっちを制圧しておかなかったんだってね。エイシンが可哀想に思ったみたいだけど、僕にはそんな気持ちはないし。さっさと殺してシマネキヅキを統一するつもりさ。ただ、民の気持ちもあるからさあ。攻めて来てもらわないとなあ。リュウガが捕らえられてるんだから、今から攻めても誰もこっちが悪いとは思わないだろうけどね。」

コンラートは、言い終えると上機嫌で食事を続ける。

美琴達は食事の手を止めていたが、立ち上がった。

「…ちょっと食欲がないから。部屋へ戻るわ。」

コンラートは、頷いた。

「大丈夫?心配しなくてもそのうちにシエラは戻るから。あいつだって天から来たのを思い出したんだから、僕の助けになってくれるよ。じゃあ、また呼ぶね。」

三人は、返事もせずにまた、ぞろぞろと一列に並んでそこを出て行った。

コンラートは、それを見送ってから、言った。

「…侍女。クニミツを呼んで。」

その顔には、笑顔はなかった。

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