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すっかり日も暮れ、帰宅した俺を待っていたのはやはり妹であるももちだった。

今日もいつものジャージ姿だ。お風呂から上がった後なのか、洗面所からドライヤーを持ってきてリビングのソファーで髪を乾かしていた。


「おかえりお兄ちゃん〜」

「おう。ただいま」


俺は疲れ切ったサラリーマンみたく鞄を床に落とし、制服のブレザーを脱ぎソファーに掛けた。

菟月高校の制服は黒が主色でブレザーの左胸には三日月のような高校バッジが付いている。どうでもいいが夜光塗料付きで暗いところだと地味に蛍光色を放つのだ。


「やっぱりお兄ちゃんって無愛想だよねえ。あ、ちなみにだけどお風呂沸いてるからご飯の前に入ってくれば?今なら愛しの妹の汗が染み込んだ極上風呂が待ってるよぉ〜?」


ニタニタと口元を緩めるももち。いつになくご機嫌だ。

しかし今は腹が減って仕方がない。


「俺はいつからシスコンになったんだ。いいよ、先に飯食うから。今日は確かお袋と親父仕事で帰ってこれないんだろ?」

「うん、そだよ。だからももちが先にご飯作っておいたから、ついでに先に食べちゃったのは許してね?ラップしてあるからあとはレンジでチンするだけだよ」


流石は俺の妹だ。もし血の繋がりが無ければ今すぐにでもプロポーズしてるところだ。

俺はさっき脱いだブレザーを自室のハンガーへと掛けるため一旦2階へと上がった。

タンスから部屋着を取り出し着替え、再びリビングへと向かう。

1人ご飯を食べていると、すっかり髪を乾かし終えたももちがこんなことを訊いてきた。


「最近お兄ちゃん帰りが遅いけど何かあったの?」

「どうしたんだよ急に。別に何もねえけど。珍しいなお前がそんなこと聞くなんて」

「あいや、別に何もなければいいんだよ」


どうしたんだももちのやつ?


ももちの表情にはどこか不安げな色が見え隠れしていた。

まるで我が子を心配する親のようだ。


「言いたいことがあるなら言えって。隠すことでもねえだろ?」

「うん、そだね。ほら、最近菟月市で不審者が出没してるって話知ってる?」


それは俺も地方ニュースで何度か目にしていた。

俺の住む菟月市はそれなりに都会で繁華街や商店街なんかもある。夜にちょっと裏路地を歩けばいかにも犯罪が行われてそうな暗い道が姿を現わすほどだ。

といってもここから数キロ先で、ここら辺は街灯もあって何ら安全ではある。

俺は熱々の味噌汁を吸って、ご飯を咀嚼した。うん、やっぱ美味え。


「……ふぅ。もしかしてももち、俺の心配でもしてくれてんのか?」

「べ、別にしてないし。ちょっと気になっただけだよ」


図星らしくあからさまに不機嫌になるももち。そんな妹がちょっとだけ可愛く思えてしまう。

俺は箸を置き、妹にこっちこっちと手を振った。


「ん?お兄ちゃん何?」

「いいからいいから」


手の届く距離に妹が来たところで俺は容赦なくももちの頭を撫でくり回してやった。

風呂上がりなだけあって手触り抜群だ。


「ちょ、やめてってばぁ!」


一説によると女の子は頭を撫でられると心地いいと感じるらしい。

ま、これは好きな人にされた場合に限るが。

いい加減そろそろ腹を殴られそうなので手を止めた。


「あれ、もう終わり……?」

「何だよももち。もっとして欲しかったのか?」

「な、な訳ないじゃん!お兄ちゃんのクセにムカつく!」

「ぼぇ!?」


やはり俺の腹に鉄拳が炸裂した。

気を害したらしくもう寝ると憤慨しながらももちはリビングから出ていった。

去り際に一瞬こっちを見てきたがたぶん気のせいだろう。


そして次の日、まさかまさかの依頼者第1号がとうとう現れてしまった。

しかも記念すべき初仕事がまさかあんなこととはこの時の俺は知る由もなかった。

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