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太古の昔より対立する両者を鎮める手法として用いられた技。

それは全ての者に平等と平安をもたらした。


この状況においてそれが適切だと判断し、俺はその案を出したわけだが。


「何ですって?私の聞き間違いかもしれないから、申し訳ないけれど匹見君もう一度言ってくれるかしら」

「いやだから、じゃんけんで決めればと……」

「呆れた。あなたのような人間がいるから民主主義が崩壊するのよ。やはり匹見君に任せるべきではなかったようね」


黒葛原はシッシと俺に向かって手を払った。

これにはさすがの俺もイラッとくる。

反論してやろうと思ったその時、城ヶ崎が待ったの声を上げた。


「私はじゃんけんでいいと思うな。ほら、こういうのって誰かに決めてもらうのは良くないと思うんだ。だからレイレイ、ね?」


今の今まで私を選んでねオーラを出してたやつの台詞とは思えねえ。

だがしかし城ヶ崎のおかげで、俺の怒りは噴火しそこねた火山のように鎮まった。

ぬいぐるみ1つでここまで罵られる人間など俺以外にこの世にいるのだろうか。そう思えてならない。


黒葛原は納得はしてないもののゆっくりと首を縦に振った。


「分かったわ。ではじゃんけんで決めましょう。勝負は1回でいいわよね?」

「もちろん!レイレイ負けたからって恨みっこなしだからね?あ、ヒッキー掛け声お願い」


「じゃんけんの掛け声くらい自分たちでやれよな」と心の中で呟き、俺は口を開けて。


「さいしょはグーじゃんけんポン」


時間が止まった。

否ーー、そこだけ止まっていた。

黒葛原はパー、城ヶ崎はチョキ。はい、勝者城ヶ崎。


「やったー!パン君ゲットぉ!ねえねえヒッキーパン君だよパン君!」


これ以上にないほどの笑顔をした城ヶ崎が、まるで飼い主にメロメロな愛犬のように俺の周りをぐるぐるする。

それに俺にパン君パン君連呼されても困る。


じゃんけんによって見事敗北した黒葛原は足元を一点に見つめ只今思考停止中。

その絵がシュールなのでもうしばらく黙って見てようと思う。

黒葛原の腕に抱かれていたパン君のぬいぐるみは今にもするりと落ちそうだ。


ーーするり。


「っておいぃ!ほんとに落とす奴があるか!」


どうにかこうにか俺のヘッドスライディングキャッチによりパン君のぬいぐるみは事なきを得る。

まだこの商品は買ってないので雑には扱えないのだ。

その後はパン君のぬいぐるみを城ヶ崎へと献上し、自分自身でレジへと買いに行ってもらった。


「たっだいまー!ふっふふ〜ん♪ふ〜んふ〜ん♪パンく〜んく〜ん♪」

「えらくご機嫌だな。まあこれはあれだ。城ヶ崎、お前の普段の行いがーー」

「つまり私の普段の行いは悪いと?」


黒葛原は俯いたままそう言った。


「そうは言ってねぇだろ。被害妄想が過ぎるんじゃないか?」

「レイレイ……、さっき約束したはずだよ?恨みっこなしだって」

「もちろん分かってるわ。私は城ヶ崎さんのことは恨んでないから、私が恨んでるのは匹見君だけだから安心して」

「よかったぁ〜」

「何もよくねぇだろ、そりゃ理不尽にも程があるわ。つか並木さんの尾行はどうすんだ?すっかり見失っちまったが」


黒葛原は無い胸の下で腕組みをし顎をさする。


「確か私の記憶だと、私と城ヶ崎さんが売店にいる間並木さんの尾行は匹見君に任せたはずなんだけれど」


正直言おう。城ヶ崎がじゃんけんに勝ってくれて俺は嬉しい。


「……そうね。では今日はここでお開きにしましょう。今日の続きはまた後日でいいわよね城ヶ崎さん?」

「私は構わないけどヒッキーは?」

「もう好きにしてくれ。今日はもう疲れたしな」


外はもう日も暮れかかっている。

2人を家まで送ろうかと申し出たが、城ヶ崎はこの後友達と遊ぶから大丈夫と、黒葛原に関しては警察呼ぶわよと突き放され、今日は散々な1日だった。

それでも黒葛原の去り際のあの顔は見てあまりいい心地はしない。それだけは確かだった。

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