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作品1

嫌いな相手に喜ばれる話


遂に決行の時は来た。思い返せばあいつとも長い付き合いだった。何の縁だか知らないが幼稚園から小学校、高校まではまだいいが大学まで一緒になっちまった。側からは誰だって親友に見えるだろうが、俺にとっちゃ目の上のたんこぶ以外の何でもなかったんだ。成績だって一度も勝てたことはない。今どき張り出しもしないのに下手に友達扱いだから嫌でも俺が負けてるってわざわざ教えてくれるんだ。部活だって恋愛だって一番近くで見てきたし、あいつのせいで俺がずっと惨めだってのも一番知ってる。

でもこれで終わりだ。俺はお前と決別して俺の人生を始めるんだ。お前さえいなければ俺かってなかなかのもんなんだ。親友のよしみだ、死んでもらうぞ。お前が俺のこと好きなのはよくわかってるけどな、俺はずっと大っ嫌いだったんだよ。

計画は簡単だ。いつものように駅に呼び出して、先回りした俺が途中の踏切で押す。暗がりでやればバレない。完全犯罪だよ。

「来たな。」

いつものように、何度と見たように俺と落ち合うところの友人の姿がある。これで最後かと思うが、決意は固い。そういえば後ろから見るのは初めてだなあ、と呑気な心持ちがあったが、身体は筋肉の昂りを堪えながら着実と奴の背中ににじり寄っていた。


カンカンカンカン…


…行こう

こんな俺にでも簡単に殺せる踏切をほっといた地方線を恨むんだな。

心を決めた俺は誰もいないことを見て思い切り地面を踏みしめ十分線路に飛び出る速度で奴の背中を目掛けて駆けた。

ドッ。

鈍い音がした気がした。喧しい踏切をそばに達成感と衝突の衝撃でぼやけた頭の回復を待って、万を辞して仕事の成果を確認しようと頭を上げると、何やら千切れた肉が転がっていることに気づいた。不思議と平静が保たれている中、ひとつ拾って手に広げてみると、暗闇に赤黒く血が光っていた。


「おい!大丈夫か!」

まず目撃されていた可能性に気づき種々のサスペンス顔負けの隠蔽ルートが巡ったが、声の主は、殺そうとした友人だった。


「なんでお前が、待ってたんじゃないのか!?…それよりお前助けてくれたんだろ、ありがとう!」


事態が飲み込めず、緊張した喉を言葉は通らなかったが、よく見渡してみると、何やら黒い固まりが線路のこちら側にあるのが見えた。

どうやら、俺は突き飛ばそうというところであのイノシシかなんかにぶつかって、結果殺そうとしてたあいつを助けたことになったらしい。


「なんだかわかんねえけど、ありがとうな!俺、お前がいなけりゃ死んでたよ、お前と友達で本当によかった!」


カンカンカンカン…

赤と青の光に照らされ、ふと手に何かを握っていることに気づき、開けると掌には目玉が乗っていた。

魚屋で見るイカのようで、青い光に照らされたそれは深海を思わせるようだった。不思議と目があっているようで、哀しそうな表情に、血は泣いているみたいだ。


線路に飛び込んだ

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