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8.二人のこれから

 村に戻ったレーナは、すぐに診療所の方へと向かった。

 大きくはない村だが、診療所は比較的しっかりしている。

 木造の二階建てで、ベッドは二階にいくつか配備されており、カーテンで仕切られている。

 診療所の前では、白衣を着た初老の女性が迎えてくれた。


「おかえり。あの子の治療なら終わっているよ」

「ほんと?」

「ああ、あんたの事を心配しているから、早く言ってやりな」

「ありがとっ。マースさん!」


 ひらひらと、マースが手を振って答える。

 マースはこの村の出身ではないが、長い事ここで診療所をやっているらしい。

 村人達からの信頼も厚かった。

 もちろん、レーナも信頼している。

 レーナは足早に診療所の中に入り、ベッドが置いてある部屋の方に向かった。


「あ、レーナ!」


 スフィアはレーナの姿を見ると、元気そうに名前を呼んだ。

 包帯を巻いてはいるが、身体は起こした状態だった。

 昨日に比べると、朝からもそうだったが元気そうだった。

 レーナはほっと胸を撫で下ろす。


「もう起きていて大丈夫なの?」

「うん。骨は折れてないから、打撲に効く薬を使ってもらったよ」

「そっか。ならよかった……あ、これかな。スフィアが言っていたお守りって」


 レーナは森で見つけたペンダントを見せると、スフィアは驚いた表情をしていた。


「あっ、それだよ!森のところにあったの?」

「うん。草陰に隠れてた」


 レーナは答えて、ペンダントをスフィアへと手渡す。

 スフィアはそれを大丈夫そうに握りしめていた。


「よかった……ありがとう。これ、大切なものなんだ」

「うん、見つかってよかった」


 昨日の態度からそれは分かっている。

 だからこそ、レーナは森まで行って探してきたのだから。

 スフィアはレーナの方を見ると、確認するように問いかける。


「怪我とかはしていない?」

「大丈夫だって。あそこくらいなら結構いくし」


 そう答えると、スフィアはまた少し驚いたような表情をする。


「レーナってなんか、思ったよりタフだね」

「あははっ、なにそれ」

「ごめん、変な意味とかじゃなくて、会ったときはもっとか弱い女の子みたいなイメージがあって……。でも、ボクの事運んでくれたりもしたし……」

「あー、まあよく言われるかも」


 そう言われるのも仕方のない。

 レーナ自身、普通にみればただの女の子だからだ。

 腰に提げた魔剣だけが、唯一レーナが魔王であったという事実を証明する。


「重くなかった?」

「全然、軽かった」

「うーん。もうちょっと鍛えないとダメかな?」


 軽いと言われるのはあまりいいものではなかったらしい。

 女性的にはその方がいいとレーナは思っていたが。


「スフィアは今のままでいいと思うけど。わたしの方が鍛えた方がいいかも」

「ボクは今のレーナが好きだよ」

「へっ!?」


 思わず変な声が漏れてしまう。

 そういう意味でスフィアが言ったわけではない事は分かっている。

 けれど、言葉にして言われるとレーナは動揺してしまった。


「あ、ごめん。なんか変な言い方だったかな?」

「い、いや、その、わたしも、スフィアの事は……好きだよ?」


 自然な流れでそう返答したつもりだったが、大分言い淀んでしまった。

 そんな様子のレーナをスフィアは見て、


「ふふっ、そんな恥ずかしがるような事じゃないよ」

「そ、そうだけど……笑わないでよ」

「ごめんね?」


 そのやり取りの後、二人は声を合わせて笑った。

 少なくとも、今はスフィアと視線を合わせても平気だった。

 まだ、鼓動は高鳴るけれど、それがスフィアの事が好きなのだという事だと、レーナは考えていたからだ。

 スフィアの身体を支えて、診療所を出る。

 少なくとも大事に至る事はないが、一週間ほど安静にする必要があるとの事だった。


「じゃあ、ボクは宿の方まで云ってもらってもいいかな?」

「うん」


 そう言って連れていこうとしたが、レーナはぴたりと足を止める。


「レーナ?」

「良かったら、なんだけどね。怪我が治るまではうちに来ない?」

「え?」

「あ、ご、ごめん。急に変な事……」

(な、何言ってるんだ、わたし……)


 あくまで純粋に、スフィアの事を心配して言ったつもりだったが、家で世話をするなどと急に言い出すのはおかしな話だとレーナは思った。

 そんな事を言い出してしまう自分も、どうかしていると。

 スフィアはきょとんとした表情をしていたが、


「えっと、ボク怪我をしてるから色々迷惑掛けちゃうかもしれないけど、それでもいいのかな?」


 それは、スフィアからの行ってもいいのか、という問いかけだった。

 レーナはすぐに頷いて答える。


「も、もちろん。それに迷惑なんかじゃないよ。わたしもその、あそこの家に一人でいるよりは二人の方が……いいし」


 レーナがそこまで言い終えると、スフィアはレーナの前に立った。

 すっとレーナの手を優しく取ると、嬉しそうな笑顔を浮かべる。


「ありがとう。申し訳ないけど、しばらく一緒にいさせてもらってもいいかな?」

「う、うん!」


 こうして、元魔王であるレーナはスフィアと一週間の共同生活を開始する事になった。

こんな感じの日常フェーズが六割か七割かも?

もう少ししたら魔王活動の方の展開にいけるかもです。

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