彼らのその後、築かれた未来
これを読んでいる貴方がどのような人間であるか、私にはわからない。
だが、最後まで読んだのなら、一つだけ言わなければならないことがある。
残念に思うかもしれないし、非常に言い訳がましく聞こえるかもしれないが、どうかここで本書を閉じず、もう少しだけ読んでほしい。
お察しのこととは思うが、この作品はフィクションである。
人物の名前、国、団体は実在したが、この物語は虚構に満ち溢れている。
ジョウ・キサラギは異世界人などではないし、地球などという星は存在しない。
あくまでも、実際の出来事を基にして書かれた、ただの娯楽小説であることを理解してほしい。
私はある人物の供述を参考に、この作品の執筆にあたった。
結果として、四人の人物の背景を追いながら戦史を追体験する構成となったが、我々の持っている知識だけで書くには、あまりにもつまらなさすぎた。
そこで私は本作を、独自の設定を多分に絡めた、新解釈の大河小説として書くことに決めたのである。
さて、ここからの歴史は皆も知る通りのものだが――
登場人物たちのその後を語って、締めくくろうと思う。
無論、この作品の設定によるものであり、実在した人物との関係は一切ない。
ルイーズ・リヴィアは『センドプレス』の名を捨て、『アークガイア統一国家』を建国した。
当初は議長の座に就くことを拒否していたが、不平が出てくるのを避けるため、最終的には一応の戦勝国として渋々承諾した。
彼女の政治は不思議なほどに民衆に支持され、なんと彼女自身がその在り方に疑問を抱くまでの三十年もの間、議長であり続けた。
その統一国家では、未だに大きな争いは起きていない。
ダン・ガードナーは統一国家の議員として、国家運営に携わった。
意外にも三年程でさっさと退任したが、その手腕は見事であったとルイーズは語る。
建国初期において紛争が発生しなかったのは、彼のおかげといっても過言ではないだろう。
その後は、『ストロイ』という名前を取り戻した故郷で、静かに暮らしたという。
ベンは、ルイーズの側近としての役目をはたしている。
亡き友の遺志を受け継いだが故の選択なのか、それとも単純に自分に向いている仕事だと判断したからなのか、それはわからない。
なぜならば、未だに彼はうまく言葉を喋れないからだ。私が聞いたところでよくわからないのである。
だがそれでも、彼がルイーズの支えになっていることは確かだろう。彼がひとたび睨みを利かせれば、大抵の不埒物は逃げ出すのだから。
アデラは商会を立ち上げた。
案外才能があったのか、商隊での経験が活きたのか、彼女の店は大変繁盛している。
今では彼女の『トーマス商会』は世界規模で支店を出し、人々の生活になくてはならないものとなった。
死んだ友人の名前を使って堂々と商売をするあたり、彼女はとてもたくましい性格をしているのだろう。
ピーター・アビーは私のもとで働いている。
何を隠そう、本書の製本は大部分を彼が担っているのだ。
奇行には驚かされるが、それ以上に彼は博識な上に頭脳明晰で、有能なのである。
そして遂に私は、思わずアビー家から引き取って養子にしてしまったのであった。
シェリー・ドライヴァーは運送事業を始めた。
ドライヴァー家は元々多くの車両を保有していたが、そのうちの何台かを彼女が買い取ったのだ。
資金の出どころがアデラであることから想像できるように、『トーマス商会』の足として日々こき使われている。
……しかし、どこか物足りないようだ。もう二度と、彼女の望むものを載せて走ることは出来ないのだから、それも当然か。
エル・ポールソンは、当時の帝国の内部事情と、ガス・アルバーンという男について私に語ってくれた。
ある意味では『異界閃機ブレイバー』という作品は、私と彼女の合作になるのだろう。
――だが、その栄誉を彼女が得ることはもうない。
一通りの情報を私に提供した翌日、彼女は獄死していた。自らの首を掻き、自害したらしい。
牢獄の中は撒き散らされた血で染まりきっていたが、彼女の死に顔は安らかだったという。
そして、ジョウ・キサラギとサクラ・ホワイトだが――
その後の彼らを見たものは、誰もいない。
アークガイアに危機が訪れでもしなければ、もう姿を現すことはないだろう。
この平和を噛みしめて日々を生きることこそが、彼らに対する最大の手向けなのではないだろうか。
旅歴三五二年、七月十四日 ブレット・ワイズ




