転職99日目 進出計画4
既存拠点の拡大、新規拠点の建設。
必要になる作業員。
密かに揃える事が難しいそれらを集め、見つからないように送り込む。
一度に大勢を移動させる事は出来ないから少しずつになってしまう。
そのため、どうしても作業が進まない。
それでも作業員は着実に増加し、作業の進行は確実に早くなっている。
焦れったい事である。
だが、以前よりも改善されてる事をまずは喜ぶしかない。
しかし、新規拠点の建設を考えると、今の人数だけでは心許なかった。
田畑の拡大もあるし、出来ればもっと人を増やしたい。
開拓地周辺の安全を確保する為に冒険者も増加させたい。
そう思うも、簡単に進むわけもない。
少しずつでも着実に物事を進めるしかなかった。
(あと、調査も進めなくちゃならんし)
開拓だけで物事が終わるわけではない。
周辺の調査も進めねばならないし、その為には冒険者が更に必要だった。
開拓地の防衛だけを考えれば良いならそこまで無理をしなくても良いのだが、目的はそこではない。
今後のためにも周辺地域の状況を調べておかねばならなかった。
古い地図だけでは確認出来ない、生の情報が欲しかった。
地図に記された場所に、確かに記された通りの何かがあるのかどうか。
記入されてない何かがどこにどれだけあるのか。
モンスターの分布はどうなってるのか。
移動の阻害になるものは何か、活動のための拠点を作るならどこが適切か。
考えて行動するためには情報が必要になる。
現在手元にある最新情報は、新しいものでも数十年前の段階で止まっている。
それでは何も出来はしない。
全く何も分からないわけではないが、正確さは著しく欠ける。
本当の意味での最新の、より正確な事実が求められていた。
そのためにも、調査が必要になる。
だが、そう簡単にいくわけもない。
正確な測量は諦めてはいたが、そうでなくても現地の視察だけは済ませておきたい。
だが、モンスターの蔓延る地域に赴くのは危険極まりない。
熟練の冒険者を数十人ほど集めて、ようやくどうにかなるという厳しさだった。
(レベル5以上の連中を数十人。
それと、荷物運びのための馬車を数台か……)
食料や水、必要な装備に道具を持っていかねばならないので、それくらいの規模になる。
簡単に集められるものではない。
特に人はそうそう移動出来るものではない。
外部に漏れる事を防ぐために、口の硬い者を選ばなければならないが、そんな人間は滅多にいるものではない。
物を集めるのも大変だが、人選は更にその上をいく難しさだった。
(いっそ、レベルの低いのも入れて、もっと人数を増やしてみるか……)
レベルの高い人間はなかなか見つからないが、少し条件を緩和すればどうにかなる見込みはある。
まずもってレベルの高い人間を見繕うのが難しいが、そこを少し変えれば幾らか困難さは低下する。
しかし、一度に多くの人間が消えると疑いを招く事になる。
気づかれないように少しずつ進めねばならない。
どうしてもこればかりは逃れる事の出来ない問題だった。
入れ替わりの激しい(死亡して未帰還になる者達)のがこの業界である。
誰かがいなくなってもそれ程問題にはならない。
それでも、一度に大量の人間が消えれば、誰もが警戒を抱く事になる。
大量に人が消えた地域に、強力なモンスターが出現したのではないかと。
そうなればモンスター退治が滞る事になる。
場合によっては軍などの調査隊が派遣されかねない。
波及的な影響として、今後の人員募集に影響が出る事にもなる。
死亡件数やそれに該当しそうな行方不明が増えれば、冒険者になる事を躊躇う者が増える。
そうなれば必要な人数を確保する事が出来なくなる。
人数の増加が一番必要なだけに、これはどうにかして避けたいものだった。
なので、一番不審に思われない形で移動してもらう事になる。
別の拠点に移動したとか、村の護衛に回ったとか。
無理のない形で姿をくらましてもらい、開拓地に出向いてもらっていた。
こんな手間をかけてるせいで、どうしても人員の抽出は遅れてしまう。
全く進んでないわけではないが、求められる人手には全然足りない。
如何にしてこれを解消するかが悩みであった。
無理だと思ってるので、諦めるしかないのが現状だが。
行き着く所は単純なものになる。
やれる範囲でやるしかない。
無理しても出来ないものは出来ない。
ならば、今やれる範囲でどうにかするしかなかった。
幸い、今は人の大量移動をしてる最中でもある。
これに乗じてそれなりの人数を一気に移動させてしまおうと考えていた。
あっちこっちに人が移動するので、誰がどこに行ったのかを考える余裕はなくなる。
こんな機会はそう滅多に訪れるものではない。
今のうちに問題の多くを片付けてしまいたかった。
(この際、レベルは諦めるか)
まずは人数を優先する事にした。
技術については、開拓地で上げる事も出来る。
なので、手当たり次第、見込みのある者を容赦なく送り込む事にする。
教育終了直後の者達も視野に入れて考えていく。
レベル3になった程度の者達であるが、現地でのレベルアップを考えればそれで十分だった。
とにかく人数を確保するのを優先していく。
レベルの高い者でも、有望そうなのは当然ながら選出する。
鉱山方面を含めて、各拠点での人数が足りなくなるが、それは募集する新人で補うしかない。
鉱山への進出が遅れるが、その分拠点の充実をしていく事で当面は誤魔化す事にする。
駆け足での進出計画のためにどうしても余裕が無かったから、それを解消するためにも都合が良い。
教育などで手間がかかるし、人の移動で苦労もするが、他の方面で幾らか楽が出来る。
それが今は少しばかりありがたい。
とはいえ、差し引きすれば手間の総量はさほど変わらない。
まだまだ苦労から逃れる事はできそうもなかった。




