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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第五決算期

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転職96日目 進出計画

 鉱山奪取についての告知がなされていく。

 掲示板に貼り付けたわけではない。

 まずは噂話として話を進めていった。

 最初はこれからの進路について。

 一団として拠点をのばしていく方向を示していく。

 どうしてその方向に行くのか。

 その先に何があるのかを考えさせる。

 そういう流れに促すように話を持っていく。

 当然ながら先に鉱山があるのが見えてくる。

 ならば……という事で誰もが一団の目的を推測していく。

 公式発表が無くても誰もがそう思う。

 でなければ何の為に拠点を伸ばしていくのか分からない。

 めぼしい理由はそれしか見あたらない。

 モンスター退治の為なら、別に特定の方向に展開していく必要もない。

(これはひょっとして……)

 そう思うのはごく当たり前であろう。

 思いが噂となってあちこちに流れはじめ、誰もが何となく意識をしはじめていく。



 これまた自然にそれらは村や町に流れていく。

 出入りしてる者達や商人を通じてあちこちに。

 時間はかかるがそれらが領主や貴族にも届き、小さな流れを生み出していく。

 廃棄するしかなかった鉱山の奪取が出来るかもしれないという希望として。

 最初は小さな期待として、徐々に現実化できるかもしれないという欲望になって。

 やがてそれは、貴族達の動きとして少しずつ表に出始めていく。



 各所からの情報でそんな流れを感知しつつ、ヒロノリは動きを進めていく。

 一団として、まずは拠点を鉱山方向に伸ばしていく。

 必要な人員を確保するためにあちこちに募集をかけ、冒険者を募っていく。

 勧誘のための営業をあちこちに飛ばし人を確保していく。

 人を収容する場所を作るのも手間がかかるが、そうしないと必要な人員を確保出来ない。

 人員募集と同時に拠点の建築が進んでいく。

 集まってくる人に追いつくように宿舎が建てられていく。

 国内あちこちから木材を始めとした物資が流れ込んできて、それらはちょっとしたバブル経済を発生させていた。



 冒険者がそこかしこにあふれていく。

 一団に所属してない者もやってきて、拠点を利用するようになっていく。

 それらは宿舎に入る事はないが、宿代を払って逗留するようになっていく。

 そういった者達相手の商売も始まり、金の流れが生まれていく。

 鉱山奪取の噂にのってきた者達だ。

 当然のことだが、鉱山を取り戻したとして冒険者の利益になる事はない。

 間接的には何らかの恩恵があるかもしれないが、直接的な利点はまず発生しない。

 だが、何かしら大きな動きがあるかもしれないという期待が彼等をかりたてた。

 期待だけで動くのもどうかというところだが、そんなもので動くのも人の性分であろう。

 かくて何人かの先走りが最前線に向かい、モンスターと戦っていく。

 それだけでも十分な稼ぎを生むので生活に困る事は無い。

 ただ、余所者である一団外の冒険者との間で衝突が生まれるようにはなった。

 こればかりはどうしようもない問題である。

 やむなくヒロノリは、部外者の排除や規制に乗り出す事にもなった。

 彼にとって優先すべきは一団であり、それ以外ではない。

 人道は大事にするにしても博愛主義者でもなんでもない彼にとって、余計なもめ事を起こす者は庇護の対象外でしかない。

 爪弾きにして追放するくらいの措置はとる。

 場合によってはもっと苛烈な手段すらも躊躇わない。

 余計なもめ事を放置すればもっと悲惨な事になるのは、この世界でも前の世界でも経験済みだった。

 ならば、もめ事が波及しないように手を打つしかない。

 余所者でも平等に扱ったり、人権的な事を尊重していてはやってられない。

 そんなものは空虚な戯言にすぎないものだった。



 多少の騒動はあっても、一団の活動は進んでいく。

 何百人という冒険者が集い、モンスターとの戦闘を繰り広げている。

 確保した安全圏にて商業活動が活発化し、様々な物品が流れ込んできている。

 同時にモンスターの核も冒険者の活動地域から国内に流入していく。

 それらが様々な分野の魔術機具の動力となって産業を支えていく。

 大量消費が出来るようになり、一気に生産力が上がっていく。

 産業に直接関わる分野だけでなく、生活における消費もはじまっていく。

 蝋燭を使わない照明、冷凍冷蔵による保管庫、動力機関の燃料などなど。

 燃料であるモンスターの核がなかなか手に入らなかったから拡散しなかったそれらが、少しずつ数を増やしていった。

 それらが産業を少しずつ変えていく。

 需要が増える事でモンスターの核の価値も高まり、大量流入による価値の下落を食い止めてもいく。

 需要が満ちれば、より大きな無駄遣いが始まる。

 それが本当に無駄であるかどうかは考慮すべきであろうが、便利になったより便利を求めるのはおかしな事ではない。

 かくてモンスター退治に励む冒険者は、今日も拠点周辺での活動を続けていく。



「で、開拓地の方はどうなってる?」

「順調ですね。

 大量に流れ込んでくる物資のおかげで、横流しもバレにくいですし」

「木材も金属も持ち込めるようになったか」

「ええ。

 それでも、必要な数に達してるってわけじゃないんですけどね」

「そんなに必要になってるのか?」

「開拓地の方も拡大拡張してますから。

 必要なものはどんどん増えていますよ。

 このままだと、また窮乏する事になるかと」

「まいったな……」

「それでも、食料とか木材は現地調達が出来るようになったんで、少しは余裕がありますが」

「それ以外が問題か」

「今の場所だけだと限界ですね。

 そろそろ次の村を開拓する頃合いかと」

「そんで、また物が必要になると」

「そういう事です」

「まいったな」

 裏の方の拡大も順調に進んでいるが、悩みも拡大していった。

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