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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第五決算期

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転職95日目 手に入らないなら別の使い道を考える

「さてと」

 一ヶ月余りの冒険者活動から帰ってきたヒロノリは、久しぶりの会議で一同を見渡した。

「現状はどうなってる?」

 その言葉をきっかけに報告があがっていく。

 各部署の現状などが報告され、進展や問題が一つ一つ出てくる。

 ほとんどが定期報告のようなもので、特段問題となってるようなものはない。

 ヒロノリもそれに満足していく。

 秘密のうちに開拓していった拠点も順調に拡大しており、今は田畑の開墾が進められている。

 それらを守るための堀やら柵やらも作られており、防備もしっかりとしたものになっていっている。

 木々の伐採なども始まり、木材の自力調達も少しずつ可能となってきている。

 いまだに足りないものだらけであるが、確実に発展していっている。

 ただ、目くらましも兼ねて、モンスター相手の拠点作りの方に重点をおかねばならない。

 手間はかかるがこればかりは仕方がなかった。

 それでも、発展の速度はかなり向上してきている。

 土台となる一団の規模が拡大してるため、一団が開拓した村に割く余力も大きくなってるからだ。

 いずれはこの開拓村を土台にして次の段階に移れるだろう。

 その為にも今少しがんばっていかねばならない。



 一団が目指してるのは、鉱山の方への進出である。

 以前から考えていた事だが、貴族達が出しゃばってきた事でそちらに向かうのを躊躇していた。

 どうせ横取りされるのだと思うと気分がのらない。

 そうなる可能性は十分にあった。

 だが、そうやって足踏みしていても何もはじまらない。

 今現在、金属などはどうしても必要であり、それを調達出来る鉱山は重要な意味を持っている。

 確保はどうしても必要であり、避けては通れない。

 横取りされるのは癪に障るが、それでも手に入れねばならなかった。

 採掘がはじまればそのおこぼれもある。

 横流しも可能になる。

 モンスターが巣くってる今のままではそれすらも望めない。

 必要な物資を手に入れるためには、どうしても奪取せねばならなかった。

 その後の事については目をつむるしかない。

 悔しいが、全ては今後の為である。



「拠点の拡大はどれだけ進められる?」

「この調子なら、小規模拠点はあと幾つか。

 大規模拠点も一つは建設出来るかと」

「人は集まるか?」

「希望者はいます。

 我々の知名度が上がってきてるらしく、積極的に参加をしてくる者達も出てきてます」

「ありがたいね」

 思ってもいなかった影響が出ている。

 それが良い方向に出ているようで何よりだった。

「引き続き人員の拡大と、収容出来る拠点の建設を続けていってくれ。

 今年中に鉱山をとりたい」

「となると、かなり急いで建設を進めないといけませんね」

「出来るか?」

「予算の方がかなり厳しくなりますね」

 別の者が声をあげる。

 金銭の出納を担当してる部署からだった。

「収益の増加もあって賄う事は出来るでしょうが、今年はこれ以上の拡大は難しいですね」

「そこまでいければ御の字か」

「はい。

 それに、金だけの問題じゃありませんし」

「人や材料の問題か?」

「建設期間もです」

 今度は施設の担当者からの意見が出てくる。

「人と材料を集めるのに時間がかかります。

 建設そのものも手間がかかるので。

 金がどれだけあっても、こればかりはどうにもなりません」

「そうだよなあ……」

 どうしてもかかってしまう時間はどうにもならない。

 短縮するにも限界がある。

 こればかりはどうにもならなかった。



「今年中に鉱山に挑むのは無理か」

「出来るだけ道筋はつけたいと思いますが。

 でも、鉱山の近くまで拠点を通すのがせいぜいですね」

「そこまで出来れば十分だ」

 鉱山は欲しいが準備は必要だ。

 その為の準備もいる。

 全てを調えるのにもう少し時間と金が必要になる。

 さすがに今年のうちにそれらを調達出来るとは思えなかった。

「今年も残り半年を切った。

 残りの時間で鉱山まで手を出すのは無理だろうよ」

 いくら何でも無茶である。

 やるなら、来年のための布石として直前までの道筋をつける事くらいだろう。

「それまでに、出来るだけ鉱山の情報を集めろ。

 何が必要になって、どれだけの人手がいるのか。

 必要な技術とレベルは幾つくらいなのか。

 鉱山の中と周辺にいるモンスターの事も。

 とにかく出来るだけ調べるんだ」

「すぐにはじめます」

 あがってくる返事に淀みはない。

 しかし、懸念の声もやはりあがる。

「でも、それだとあちこちにばれませんか。

 鉱山を取り戻すってのが」

「また貴族どもの横槍が入るかもしれませんぜ」

「構わないよ」

 ヒロノリははっきりと言った。

「むしろそのほうが有り難い」

「はい?」

「どういう事です?」

「開拓してる方に目が向かないだろ?

 派手に動けばそっちに気が向く。

 むしろ鉱山の方を宣伝したいくらいだ」

 答えを聞いて誰もが納得した。

 一番重要なのは鉱山ではない。

 開拓してる村の方だ。

 そちらに気づかれないように、別の方向に目を向けさせるつもりなのだろう。

「貴族連中に横取りされるかもしれんし、そうなったら腹立つけどな」

 それでも、開拓を気づかれるよりは良い。

「あとは、鉱山開発に力を入れてくれればなおありがたいんだが」

「何か目論見でもあるんで?」

「そっちに力を入れたら、他の方に向ける余力もなくなるだろ?

 俺らが動きやすくなる」

 全ては開拓を悟られないようにするためであった。

 鉱山とそれを手に入れる労力を無駄にする事にもなるが、それでも秘密を守る事を優先していく。

 それに全てが無駄になるわけではない。

 作り上げた拠点はモンスター退治の時に十分使える。

 冒険者として活動するならそれで十分だ。

「貴族さん達には、鉱山開発を頑張ってもらいましょう」

 もう既にヒロノリは自力での鉱山開発に見切りをつけていた。

 だったら、それをどうやって切り捨てるかを考えた方が良い。

 出来るだけ自分達に旨みが出る形で。

 横取りした相手が負担を受け持つ形で。

「ついでに、鉱山から出て来るものを上手くこっちに流れるようにしといてくれ。

 出来るだけの布石をうっておいてもらいたい」

 それくらいの余録は当然いただくつもりだった。

 横取りされるのだから、当然の分け前である。

 会議に出ていた者達も、それを聞いて静かに頷いた。

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