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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第四決算期

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転職92日目 番外編:とある少年の冒険譚10

「今日はこんなもんか」

「そうですね、核も大分たまってますし」

 夕方も近くなり、一度全員が集まって戦果を確認する。

 倒したモンスターの数も手に入れた核もそれなりの数になっている。

 やろうと思えば更に稼げるが、ここで帰っても十分な収益になる。

「どうする。

 まだもうちょっと頑張ってもいいと思うけど」

 ヒロノリの言葉にハルキ達は困ってしまう。

 聞いてくれるのはありがたい。

 何も聞かずに全部を決めるというわけではないのだから。

 だが、一団の頂点にあれこれと言うのも気が引ける。

「それは……」

「どうしましょうか……?」

 腰が引けてどうしようもない。

 ヒロノリが圧力をかけてくるというわけではないが、どうしたものかと思ってしまう。

 それどころか、

「まだ余裕あるし、経験値も稼ぐついでにがんばってみるか?

 それとも、無理しないで撤退しちまうか?」

 ちゃんと色々と聞いてくてきれる。

 ありがたい事である。

 だからと言って、あれこれ言うのも気が引けるのではあるが。

 ただ、何も言わないというわけにもいかない。

 それはそれで、ヒロノリに逆らう事になりかねない。

 ハルキ達を脅したりするような人でないのは何となく分かるが、それでも下手に逆らうような素振りは見せたくなかった。

 何がどうなるか分からない。

 そのため、顔を見合わせて考える事になる

「まだ時間もあるし、あと二回か三回くらいは行けるんじゃねえか?」

「でも、ここで無理して全滅なんてのも嫌だし」

「帰りながらモンスターを探して、見つけたら倒していくか?」

 そんなやりとりをしていく。



 夕方と言ってもまだ陽が落ちるまで時間はある。

 時刻でいうなら午後三時を少し回ったところである。

 あと何十分かはモンスターと戦う余裕はある。

 もちろん、ここで引き返し、余裕のある午後を満喫する事も出来る。

 無理して帰還が難しい時間になるよりは、そちらの方が良いだろう。

 だが、新人達からすればもう少し経験値を稼いでおきたいというのもある。

 金銭的な収入は十分な領域に到達しているが、経験値の方はいくらあっても足りない。

 可能であるならば、もう少しモンスターを倒していきたいところだった。

 モンスター退治における最優先は、生還する事であり、生き残る事である。

 どれほど成果をあげても死んだら意味がない。

 生きて戦果を持ち帰る事で仕事が完結するのだ。

 十分な成果をあげたのだから、これ以上無理をする必要もない。

 自分達の能力とおかれた状況次第であるが、安全確実な方を求めるのは間違ってはいない。

 もう少しやっていきたいという気持ちはあるが、その為に生じる負担や危険も考えねばならない。

「戻りましょう」

 ハルキ達の見解はそれで一致する。

 余裕のあるうちに撤退する、という原則に基づいて。

 ヒロノリは満足そうに頷いた。



 拠点に戻って核を売り飛ばし、そこから税金を支払って今日の仕事を終わらせる。

 そのまま食堂に向かい、早めの夕飯にありつく。

 いつもより早い時間だったので他に冒険者はいない。

 余裕をもって座る事が出来る。

「おつかれ」

と互いに言い合いながら食事が来るのを待つ事が出来た。

「上手くなってきたな」

 ヒロノリが声をかけていく。

「最初の時よりずっと上手く動けてるよ」

「そうですか?」

「ああ。

 だんだん慣れてきたんだろうな」

「あんまり実感無いですけど」

「自分じゃなかなか分からんもんだろうさ。

 けど、成果と結果が違ってる。

 それを見れば分かるさ」

 実際、今日は今までより早く終わらせる事が出来た。

 モンスターとそれだけ遭遇する事が多かったせいであるが、それらを退ける事が出来たからでもある。

 漫然と戦ってるだけならこうはならない。

 周囲に対する警戒と、やってくる敵への適切な対応がなければ全滅していた可能性すらある。

 この近隣のモンスターは強力というほどではないが、今のハルキ達の能力からすれば手に余る場合もある。

 頻繁にモンスターと遭遇したのにそれを凌いだのは、それだけ実力が上がったという事である。

 レベルにはあらわれてこない部分で。

 個々の能力ではない、連携する事による強さを身につけてきた証拠である。

 負担を負担と感じる事がないほど円滑に物事をこなせたのだから。

「先行き楽しみだよ。

 一団としてもありがたい」

 確実に仕事をこなして戻ってきてくれる冒険者は大事である。

 それらがいなければ、経営が成り立たない。

 生き残って着実にモンスターを倒していってくれる存在が必要になる。

 そうなりつつあるハルキ達はヒロノリにとって大事な存在である。

 利害や打算によるものではあるが、団長としてどうしてもそう考えてしまう。

 もちろん、人柄や性格などが好ましい人物であるのが前提であるが。



「でも、このままで上手くやってけるか分からないですし」

 賞賛は賞賛としてありがたく受け止めながらも、不安を口にしていく。

 今はヒロノリが参加してくれてるからどうにかなってるが、この先は分からない。

 ヒロノリの参加は一時的なものだというし、一定の期間が過ぎればこの一群は解散となる。

 団長の仕事があるのでいつまでもモンスター退治をしてるわけにはいかないのは分かるが、戦力として貴重な存在がいなくなるのは損失でしかない。

 その穴をどうやって埋めたらいいのか、というのは今後の問題である。

 団長と共に行動するという重圧から解放されるのはありがたいが。

 そんなハルキ達の懸念に、

「だったら募集のチラシでも見てくればいい」

 あっさりと返答をされる。

「手の空いてる奴はどこかにいるもんだし、なんなら新人同士で多めの人数で行動すればいい。

 どうしても人が見つからないなら、分け前を多めにするっていう条件で慣れてる奴を引き込んでみればいい。

 意外と誰かがやってくるもんだ」

「そんな簡単にいくんですか?」

「見つかるまで時間はかかるだろうけど、どうにかなるもんだよ」

 様々な理由であぶれてる者はいる。

 もともと個人で行動し、その都度どこかに応援で入ってる者もいる。

 組んでいた仲間が解散となり、一時的に失業になってる者もいる。

 モンスターとの戦闘で仲間を失った者もいる。

 そういった者達がたいていどこかにいる。

 特に安全性を優先して、新人と共に拠点周辺で活動する者は常に存在する。

 稼ぎや成長をある程度妥協し、その代わりに安全確実な生還を求める者もいる。

 そういった者達は、下手にモンスターの出没地域まで出向いたりせず、新人達の一群に参加して拠点周辺で活動する。

 そういう者達が出てくるようになった。

 それなりに活動期間が長くなり、様々な者が所属するうちに自然と様々な活動形態が生まれていった。

 意図しないでそれぞれの隙間を互いに埋め合わせる事が出来るようにもなっている。

「一団の事務所に申請して、人手を集める事を考えてみろ。

 それでどうにかなる事も多いぞ」

「そんなもんなんですか?」

「ああ、そんなもんだ」

 当たり前のように断言する。

「こういう細かな需要に応える機会が出てくるのが、大勢集まってる強みだ」

 その言葉にハルキ達は少しだけ安心をしていく。

 団長が言ってるのだから言葉の重みが違う。

「じゃあ、後で行ってみます」

「そうしろそうしろ。

 飯を食ってからでもまだ間にあうだろうしな」

 事務所の受付時間までまだ余裕がある。

 空きっ腹に飯を入れてからでも間に合うはずだった。

 早めに帰ってきて良かったと思えた。



 食事が終わって事務所に駆け込んだハルキ達は、すぐに募集案件の申請をした。

 自分達の状態と求める人材像を記して提出するだけである。

 あとはそれが掲示板に張り出され、結果が出るのを待つだけとなる。

 そう簡単にいくとは思えないが、今はこれにすがるしかない。

 出来ればヒロノリがいる間に誰かがきてくれるよう願うところだった。

 熟練者がいない期間はなるべく作りたくない。

 自分達だけで上手くやれるとはとても思えないのだから。

 やはり経験があるのと無いのでは違いは大きい。

 ヒロノリと一緒に行動して強く実感した。

 細かな注意や教訓が実に多い。

 一朝一夕では身につかないものが少しずつ染みこんでくる。

 一緒に行動してる数週間でハルキ達の動きが変わってくる程に。

 必要な技術レベルを上げれば身につく事ではあるのだろうが、そのために必要な経験値を稼ぐためにも、慣れた人間の同行が欲しかった。

 あると無いのとでは活動の負担と生存率が変わってくる。

 良い人が来てくれるようにと願いながら、ハルキ達は事務所から退出していった。

 間がかなり空いてしまった。

 体力気力がどうにもわかなかったので、作業をほったらかしにしてしまった。

 ようやく少しは回復してきたので、またボチボチ書いていければと思ってる。



 短編で、

『『 悪役転生、ただし雑魚 』凡人転生悪役編/試作品』

というのをあげているので、こちらもよろしく。

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