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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第四決算期

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転職78日目 開拓日記7

 流れ作業のようにとまではいかないが、順調に拠点は増えていっている。

 大がかりなものは無理でも、小さなものならば簡単に作っていける。

 とりあえず集積所のような小規模なものを幾つか造り、それを前線の方向に伸ばしていく。

 その先にある町や村の廃墟に向かっていき、いずれはそこを取り戻すように。

 少なくともそう見えるように配置はしていった。

 実際、そんなつもりは全く無い。

 かつてはそれも考えていた。

 村や町が復活すればそれだけ活動しやすくなるからだ。

 しかしそんなつもりは既にない。

 苦労して取り戻して横からかっさらわれるなら意味が無い。

 だったら自分達が活動しやすくなる事だけ考えていればよい。

 以前もそういったつもりでやってはいたが、今はそれがより顕著になっている。

 一団はモンスター退治のみに専念するようになった。

 拠点は冒険者が寝泊まりする事が出来る程度の簡素なものに。

 町や村には手を出さない。

 稼ぐ事により専念し、それ以外の部分は手を出さないようにした。

 以前はその一環で村などを復活させ、そこを再起させていこうとしていたのだが。

 貴族が乗り込んでくるなら、それらまで手を出す必要も無い。

 統治者として町や村の生活圏を担うのは彼等の責任である。

 たかだか冒険者でしかないヒロノリ達がそこまでやる理由は無い……というのが言い分であった。

 実際、冒険者であるヒロノリ達にそこまでやる義理や義務はない。

 拠点を中心にしてモンスター退治はしても、村などを復活させる理由は無いのだ。

 人情としては、人の生きてる場所を大切にしたいとは思うにしても。

 せいぜい、モンスター退治を続ける事で自然と安全地帯が形成していくくらいである。

 拠点を中心に活動すれば、その周囲のモンスターは減る。

 そうなれば安全な場所が増える。

 冒険者の役目というか出来る事はせいぜいそれくらいであろう。

 それ以上を求めるようなものではない。

 そんな事を自らやろうとしていたヒロノリが例外だっただけである。

 少なくとも表の方において、一団は完全にモンスター退治だけに専念するようになった。



「どうにかならんのか」

 貴族からそんな声をかけられる事もある。

 規模が大きくなり、無視する事が出来ない勢力となっているせいか、ヒロノリを呼びつける事が多い。

 その度に尋ねられるのは村の復興などについてである。

「お前達が取り戻したものなのだから、もっと面倒をみたらどうなのだ?」

 などとのたまってくれる事が多い。

 頭に来るし腹も立つ。

 心臓は憤りで際限無く高鳴っていく。

 それらを抑えてただ一言、

「余裕がありません」

とだけ答える。

 嘘というわけではない。

 実際余裕は無い。

 拠点を増やし、人を増やし、それらを維持するだけで手が一杯である。

 村の復興にまで手を伸ばしてる余裕など全く無い。

「俺達は冒険者です。

 モンスターを倒すのが仕事です。

 それが以外の事まで手を出してる余裕はありません」

 そう言って断るのが常である。

 だいたいにしてから、村の復興などの統治は貴族の仕事だろ……と胸の中で思いながら。

 言えば角が立つだろうし、面倒な事になりそうなので言いはしないが。

 何より、横から殴り込んで村に居座ってるのは貴族の方である。

 だったら自分らでその後の事はどうにかしたらどうだと思っていた。

 ヒロノリとしては、それ以上の面倒を見るつもりはもう無くなっていた。

 自分らの生活場所を確保する以上には。



 だいたいにして、税収としてもかなり莫大なものになっている。

 ヒロノリ達の稼ぎの三割が税金として徴収される。

 まともに活動してる冒険者の稼ぎは結構なもので、税収もそれに合わせて増大する。

 一日で銀貨一枚以上に稼ぐ者はざらである。

 それらから徴収する税金はそれなりになるはずだった。

 仮に一人一銀貨の稼ぎとして、そこから得られる税金は三千銅貨。

 村を中心に活動してる者達は、周辺拠点も含めて一百人は下らない。

 最低でも一ヶ月で三百銀貨の税収になる。

 年間で三千六百銀貨が手に入る事になる。

 その全てを自由に使えるわけでないにしても、村の復興に割く余裕もあるはずだ。

 実際には更に収益は多いので、税収はもっと上である。

 それなのに復興の方に金が使われた気配がない。

 村の整備が進んでるわけでもないし、周囲の田畑を耕そうという動きもない。

 村に定住する人を連れてくる様子もない。

 それらを統括するための役所のようなものを設置するというわけでもない。

「いったい何をしてるんだ?」と言う疑問を少なからず者達が抱いていた。

 もともこういった事を考えるのはまだ穏便な方で、

「どうせ無駄に散財してるんだろう」

と侮蔑する者もいた。

 どちらにしろ良い印象は全く抱いてない。

 目に見えない所で何かをしてるかもしれなかったが、知らない所で行われてる事など評価のしようがない。

 かくて貴族の評価は低下の一途を辿っている。



 それはそれとして、拠点のほうは拡大をしていった。

 小規模なそれは数を増やし、それこそ一ヶ月に一つと言えるほどの早さで出来上がっていく。

 堀と柵、炊事が出来る竈と物を置いておける納屋だけであるが、短期間の滞在には問題なく使える。

 そんなものをあちこちに建設していく。

 増大する一団員をそこかしこに送り込み、モンスター退治を続行していく。

 拡大を続ける一団の人数は既に四百人を突破している。

 小規模ながら拠点をあちこちに配置してるのは大きかった。

 そこから上がってくる稼ぎは大きく、ヒロノリ達が使える選択肢を大きなものにしていった。



 裏の方における活動もそこそこ進んでいっている。

 小さいながらも田畑を整備し、小規模ながら耕作が出来るようにしていった。

 木材も近場で調達出来るものは裏の拠点近くで確保するようになっていた。

 村の周囲、田畑の外れあたりにいくつかの小規模な拠点を造り、それらが村を守る砦になるようにもした。

 表の増大に伴った人員と規模の拡大に伴って、裏の方も拡大をしていった。

 冒険者だけでなく、農民や職人も流れてきている。

 中心となる村も拡大し、収容人数を増やせるようになっていた。

 何より大きいのは、ツヨシ達が移住した事であろう。

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