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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第四決算期

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転職72日目 開拓日記2

「まあ、モンスター退治のほうはこれでいいけど。

 問題はそれ以外だな」

「ええ、一般的な作業のほうを担う人間を送り込まないと」

「住居のほうもどうにかしないといけないし」

「生活がそもそも成り立ってません」

 人知れず手に入れた廃墟における問題はまだまだ続いている。

 会議で出て来る足りない部分は、解決に手こずる部分であった。



「とにかく、住居をどうにかしないと。

 冒険者ならともかく、一般人にテント暮らしは無理ですから」

「倉庫をとりあえず建てて急場を凌ぐとしても、そんなに長い間は無理ですし」

「共同生活になるのは仕方ないとしても、早めに小屋でも作らないと」

 これらは全て作業員についての問題だった。

 拠点に必要なものを建築していく人間や、炊事・掃除・洗濯といった日常を支える者達を抱えるためには住居が必要だった。

 冒険者とて、野外での寝泊まりを長期間行うのは無理である。

 とにかく屋根と壁が必要だった。

 それが出来上がらない事には人を送り込む事が出来ない。

「それ以前に、周りがモンスターだらけの所に生きたがる人がいないんですけどね」

 一番の問題はそこであった。

 当たり前なのでどうしようもないが。



「あと、食料や物を手に入れるのも難しくなります。

 人数が増えればそれだけ食料も必要になりますし。

 運搬するのも手間です」

「途中に立ち寄れる場所があればいいんですけど、それもないですし。

 運搬につけなくちゃならない護衛を集めるのも難しくなってます」

「人数をこれ以上増やすのは難しいですね」

 このあたりも規模の増大を阻む要因になってきている。



「ただ、作業員がいないと生活そのものが成り立たないので。

 人は嫌でも増やしていかないと」

 モンスター退治だけやっていれば良いわけではない。

 それを支える人間も必要になる。

 二つの拠点でもそれは明らかになっている。

 戦闘が主な目的であっても、それだけをやる人間で拠点は維持出来ない。

 それらを抱えるためにも、様々な土台が必要だった。



「拠点の整備だけでも人が必要ですし」

「廃屋の撤去すらなかなか進んでないので、早急に作業員を送り込まないと」

 それらを支える生活要員と必要な物をまとめる事務員なども含めねばならない。

 全部で数十人ほどが必要になる。

「すぐに全員送り込むのは無理だよなあ……」

 嘆きたくもなる。

 だが、どこからか手を加えていかないと、ずっと今のままである。

 どうにかして状況を改善せねばならない。



「出来る限り現地で調達出来るようになればいいんだけど」

 食料にしろ資材・材料にしろ、なるべく持ち出しを控えるようにしたい。

「せめて畑とかを元に戻せればいいんだけどな」

 常に消費するものである食料を現地で育てる事が出来れば、負担はかなり軽減される。

 そうなるまでにかなりの時間はかかるが。

「そうなると、畑を守る為の設備も必要になりますし」

「作業員をかなり送り込まないと」

「農作業をする者も必要になりますし」

「結局、持ち出しは大きくなるか」

 最初のうちはどうしてもそうなる。

 ある程度現地での生産が出来るようになるまでは、こちらから物を届けていかねばならない。

 必要な物を調達する手間を考えると頭が痛くなる。

「まあ、どうにかしてやってくしかないか」

 腹をくくるしかなかった。

「拠点に必要な施設と、畑を確保するために必要な措置を考えていってくれ。

 必要になる道具とかも。

 人もどれだけ必要になるかをおおまかでいいから見積もっておいてくれ」

 なるべく急いで着手できるよう、それらに着手するよう求めた。



 物を集めるのも大変だが、それ以上に大変なのが人だった。

 一団内ならともかく、作業員となると外部の人間が大半となる。

 そういった者達が増えると情報が外部に漏れやすくなる。

 どうにかしてそこを回避したいのだが、こればかりはどうにもならない。

 まさか拠点の方に閉じ込めておくわけにもいかない。

 送り込んでしまえば帰って来る事は不可能なので、隔離は出来る。

 だが、出来るからといって実行してしまうわけにはいかない。

 ある程度現地に駐留してもらわねばならないが、一定の期間が過ぎれば帰還させねばなるまい。

 作業員を奴隷として酷使するならともかく、人として扱うなら閉じ込めておくわけにはいかない。

 となると、戻ってきた時に情報が漏れる可能性がある。

 そこをどうやって解決するかである。



(畑を餌に出来ればいいけど)

 利益で釣る事を考えていく。

 土地を持ってるというのは強みである。

 農業が産業の主力であるこの世界においては特に。

 町に住んでる者達であっても、田畑を持って農場を手に入れる事を望む者は多い。

 それだけに、田畑で人を誘導する事も考えてしまう。

(開墾したら提供するって事にすりゃ定着するかな)

 墾田永年私財法をそのまま実行する事になる。

 あくまでヒロノリ達が勝手にやるものであるので、公式的な保障のあるものではないが。

 だが、公的な措置に対抗してるのだから、このあたりは無視していくしかない。

 そもそも、遠くにある廃墟に拠点を作ってる事が、ある意味非合法なのだ。

 今更他の部分で法律に抵触してる事を気にしても仕方ない。

(所有をはっきりさせておかないといけないか)

 面倒くさい書類管理が必要になりそうだった。

 どの土地が誰のものであるのかをはっきりさせねばならない。

 でなければ、後々の騒動に発展しかねない。

 測量に記録の管理が必要になる。

 やってる事は政治や統治そのものである。

 そこまでやりたくはないが、他に頼れる所がないのだから仕方が無い。

 もはや冒険者の一団のやる事ではなくなってきていた。


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