転職7日目 あまり期待出来そうにない部分に気付いていく
(どうもチートっぽいのは無さそうだな)
自分の能力を確認し、実際にモンスター退治などに出向いてみてそう感じる。
異世界転移で、おそらく神様らしき存在による手引きでここに来てるので、もしかしたらと思っていた。
しかし現実は実に厳しく、そういう能力などのそこあげはなされてない。
経験値修得で補正があるのかと思ったが、今のところそれらしきものはない。
レベルが格段に上がる可能性もあるが、現時点では確かめる事が出来ない。
必要な経験値がたまるまで待つしかない。
ともあれ、今のところ他の者達に比べて特別優れてるところはない。
これと言って劣る所も無いようだが、ボーナスがないのは寂しいものがあった。
(給料でももらったこと無いしなあ)
どういう査定をされてるのか、ボーナスが出された事は無い。
そもそも存在しないかもしれないが、やはり寂しいものがあった。
せめて異世界転移に神様から特別賞与を与えてもらいたかったが、期待は出来そうもない。
やはり転生や転移で気前よくご褒美をくれるような存在は希なようだった。
(残念だ)
世間とあの世の厳しさを感じる。
だが、手に入ってないものを求めても仕方ない。
無いなら無いで、手に入れられるものを求めていくしかない。
(せめてハーレムは)
などと別方向の妄想を逞しくした。
しかし色事方面のご都合主義も無さそうだった。
この手の話のお約束というか主人公特権というか、そういったものは異性関係でも無いようだった。
これが創作物なら、今頃何らかの都合により仲間になってくれる美少女や美女などが出ているはずである。
これが全くいない。
該当するような存在が全くいない。
まずもって同業者はむさ苦しい男ばかりである。
当たり前だが、冒険者は体力勝負である。
女につとまるような仕事ではない。
全く女がいないわけではないが、例外的な少数のようだった。
少なくともヒロノリのいる町にはいない。
美人の女冒険者というのがまずありえない存在だった。
貴族や騎士などといったところのお嬢様と出会う事もない。
そういった者達との接点はほとんどない。
この町の領主の家族くらいなら遠目に見ることもあるが、一般庶民や平民と支配階層との接点はせいぜいそれくらいだった。
身分の違いというのは大きく、それが違うと接点が極端に少なくなる。
最下級の貴族であるなら庶民や平民と同等の生活をしてるが、それらも領主の近隣に住居を構えている。
彼等はそこから役所などに勤めに出る。
当然領主の居城などの近くに通う事になり、行動範囲は限定される。
まずもって庶民や平民のところまで出て来る事は無い。
全く無いわけではないが、彼等と接する事が出来るのは一定以上の地位を作った者達に限られる。
貧民とまでいわなくても、平民や庶民の中でも下の階層に所属する者が日常的に接する可能性は少なかった。
また、女が役人や騎士になるという事がそもそも無い。
どちらにしても世襲制の仕事であり、基本家父長が就くものだ。
下級官吏というか、役所でも下っ端の仕事であってもこれは例外ではない。
騎士となると特にこの傾向が強くなる。
何せ、職務内容は職業軍人である。
それこそ男の世界だ。
戦闘が基本任務であるだけに、女を巻き込む事はほとんどない。
戦争時に炊事や看護などで有志の女性陣が従軍する事はあるが、そういった部門や部隊は常設されてはいない。
基本的にはそういった後方勤務と呼ばれる場所も男所帯である。
そういった所が人手不足を補う為に冒険者を雇う事もあるが、それで女性と接する機会が出来るわけは無かった。
ただ、全く女が従事する仕事がないわけではない。
役所というか、領主の家族に仕える部署には女官が勤める事になる。
主に領主の母や妻、娘などの傍にて仕事をしていく事になる。
騎士においても同様で、領主の女性家族の周辺警護のために何人かの女騎士が配置される。
だが、実に少数であり、基本的に領主の家族の傍にいるものだから外に出る事がない。
これらと接点を持つというのが、まずもってあり得ない事態だった。
神社などにいる神職の女性ならば出会う機会もあるが、そういった者達がモンスター退治などの冒険に出る事も少ない。
神職は神社の業務をこなす者達であり、モンスター退治をするのが仕事ではない。
この世界、昔ながらの信仰や宗教はあるが、だからと言って神様などの力をもちいた魔法などがあるわけではない。
魔術は存在するが、それは神々などとは別に存在するものである。
超自然的・心霊的な要素を感じさせる魔術であるが、どうも宗教や信仰とは関係はないようだった。
なので神社や神職の者達が超常の力を用いるというわけではない。
そういった技術を身につけてる神職の者はいるが、それは神が授けた奇跡というわけではない。
魔術を用いる他の多くの者達と同様、修行を経て身につける技術だった。
もちろん神社から冒険者に依頼が出る事はある。
だからと言って神職の者達が冒険者に同行して行動するとは限らない。
監視役や案内約として同行する事はあっても、基本的に仕事を依頼したら解決するまで神社で報告を待っている。
そういう意味では数多くの依頼人と変わるところはない。
彼等は依頼を発注する。
そして、仕事の結果を受け取る。
ただそれだけだ。
では庶民平民である商人や工房などの娘はどうかというと、これもやはり接点がない。
王侯貴族や武家などと違い身分による差があるわけではないが、やはり社会的な地位が全然違う。
同じ庶民平民であっても、その中で隔絶した差がある。
数人程度の部下を抱えてる零細・中小企業の親方の娘ならばまだ接点はあるが。
それにしたって冒険者に好んで接近させようなんて考える者はいない。
ようするに、いわゆるファンタジーな物語における出会いのようなものは全くない。
王侯貴族のお姫様との出会いなんて存在しない。
女騎士に同行してモンスター退治に出るなんて事もない。
神社の神女さんと一緒に冒険なんて事も無い。
裕福な商人や大手の工房の娘なんてのもありえない。
もしそれらと接点を持ちたければ、英雄的な功績を打ち立てるしかない。
具体的に言うならば、いくつかの村や町をモンスターから守るようなものになる。
モンスターに制圧された地域の開放でも良い。
文字通り英雄である。
普通の人間にはまず無理であった。
冒険者が日常的に接する事が出来るとなるとかなり限られる。
せいぜい、酒場の女給さんや店で働いてる娘さんなどと知り合う程度だ。
はっきり言えば、そこらの村人その1や町人その3などといった群衆と立場は同じになる。
なおかつ、彼女らにしても選ぶなら同じ町の者を選ぶので、冒険者は基本的に選考対象外になる。
接するときの笑顔もせいぜい営業用でしかない。
劇的な出会いなど何一つない。
日常系な作品のような展開すらない。
現実世界と全く状況は変わらない。
ハーレムルートすらほとんど可能性はなかった。
皆無だとはっきり認めるには、色々とつらいものがある。
たとえわずかでも可能性があると信じたかった。
折角の異世界転生、このままなんて悲しすぎる。
22:00に続きを出す予定。