転職61日目 好きで開いてるわけではないが、会議をせねばならぬ
「まあ、だいたいこんなもんか」
会議において出された様々な提案と、それをまとめた試案を手にしていく。
「色々な作業を平行していく事になるけど、頑張っていこう」
ヒロノリの声に、各部の代表者達は「はい」と返事をしていく。
皆、顔には緊張が浮かんでいる。
それもそうだろう。
これからは、本当に色々と大変な事になるのだから。
次の廃村に出向くための前準備として、途中の何カ所かに拠点を設置する事が決まった。
人や資材を集めておくための中継地点である。
復興中の村の拠点の拡大と平行してこれらの作業を行っていく事となった。
手の込んだ物は作れないので、堀と柵だけの簡単なものになるが。
そのため、人が住むには適さず、本当に集積所として、そして緊急時の避難先としての機能しかない。
しかし、金もかからず短時間で作れるという利点がある。
もとより集積所としての機能があれば良いので、手間がかからないというのは重要な要素だった。
まずはそれを何カ所か作る事とした。
また、これらの集積所としての拠点であるが、テントなどを持ち込めば宿泊も出来なくはない。
そうした場合、そこをモンスター退治の拠点として使う事も出来る。
そうであるなら、人をそこに集めてモンスターとの戦闘の中心地とする事も出来る。
出向く先はモンスターが大量に発生するので、稼ぐには都合がよい。
増大する人員を投入する先として便利に使えたりもする。
今後更なる増員を計っていただけに、人を送り込む事が出来る場所があるのはありがたい。
それを考慮して、新人の大量採用を決めていく。
村の奪還に大量に人手が必要なので、どうしても大量採用するしかない。
周旋屋に頼んで、更に多くの人手を集めるよう頼んでいく。
同時に、事務員の何人かを各地の周旋屋に派遣し、人手を集めるよう指示を出していく。
人手が集まるまで、短く見ても二ヶ月はかかるが、その間に集積所などを作っていけば良い。
それだけならさして時間はかからないのだから。
拠点拡大と、集積所の設置、新人募集と教育
それに伴う人員の大幅な移動・配置換え。
それらが一気に進んでいく事になる。
集積所の設置のほうは、資材と作業員を集めて一気に作られていく。
資材の置き場所と、寝起き出来る場所を考えてやや広めに作られた。
縦に二十メートル、横に四十メートルの場所が一日で出来上がっていく。
出来上がった次の日から腕に自信のある者達が泊まり込み、一週間ほどモンスター退治を開始していった。
押し寄せるような勢いでやってくるモンスター達を凌ぐのは大変だが、その分金になる。
レベルの上がってる者達にとっては雑作もない作業ではあったので、比較的簡単に稼ぎを増やす事が出来た。
集積所建築で支払った費用も、かなり早く回収出来そうな勢いである。
復興してる村の方の拠点も拡大を続けていく。
新たに場所を確保して宿舎も設置。
場所と人員を収容出来る場所を作った事で更に多くの人員を割く事が出来るようになっていく。
買い集めた資材も、一旦この拠点に運ばれ、そこから一気に前線へと向かっていく。
その為、毎日のように馬車が行き来する事となっていった。
それに伴って人も多くが出入りするようになる。
大半が一時的に通過するだけの運搬人であるが、それでも立ち寄れば食事の一つもしていく。
それらを相手にする食堂の方も収益が増加していった。
ただ、食堂の広さが足りないので、早急な増大が求められてもいった。
これについてはヒロノリもそうした方が良いとは思っているのだが、すぐには目処が立たない。
また、外来者の食事などについては、
「いっそ村のほうで食堂を作っては?
その方が儲かるでしょ」
と進言もした。
「なんなら拠点の空いてるところにワゴンでも設置しておけば良いし。
弁当で売りにだしたら?
冒険者相手の弁当とか出してるでしょ。
それで良くない?
食事するだけなら、空いてる場所にベンチでも置けばよいだけだし」
そういった言葉を聞いて、彼等も考えを少し変えていった。
どのみち一時的に通過していく者達は、腰を落ち着けてる余裕もない場合が多い。
だったら、簡単に食べられるような弁当を用意して、それらを出した方が便利であろうと。
おにぎりやサンドイッチのような軽食が主体であるが、それでも十分である。
実際、それらを売りに出したら割と好評になった。
運搬業者達も、短時間で食事を済ます事が出来るのでありがたかったらしい。
拠点内の空いてる空間にベンチが並べられ、そこで簡単な食事をすます者達の姿が多く見られるようになる。
一品当たりの値段は安いが、それでも数がはけるのでそれなりに儲けにもなる。
冒険者相手の弁当が基本であったが、これが今後更に発展していく事になる
そんな調子で一ヶ月が過ぎ、二ヶ月目も終わろうとしていた。
集積所であり中継地点である拠点の方は更に二つほど数を増やしていた。
寝泊まりする者達も増えていき、成果も順調に上がってくる。
新人募集の成果も少しずつ上がってきており、遠く離れた町からやってくる者が増えてきていた。
戦力になるまで時間はかかるが、収容場所を作ってる最中でもあるのでそれはそれで都合が良い。
集積場所も設置が終わり、資材を少しずつ集めはじめている。
冒険者の方の数が揃えば、村の方に一気に取りかかる事が出来る。
それまではモンスター退治をしながら金と経験値をためるしかない。
「まあ、そっちはそれで良いとしてだ」
ヒロノリは会議の席でそう切り出した。
解決されてない問題山積みで何一つ良い事はない。
それどころか、資金繰りと新人の育成と、人の配置でてんてこ舞である。
だが、それでもヒロノリはこの話を持ち出すしかなかった。
「いい加減、食堂を大きくしなくちゃいかんと思う」
要望がどうこうというだけでなく、収容人数を考えると手狭になっている。
それの解決をどうにかしたかった。
居合わせた責任者達もそれは理解している。
「確かにそうですね」
「あのままってわけにはいかないでしょう」
「でも、どうやってやります?」
悩ましい問題である。
食堂のすぐ隣には宿舎があり、それが拡大拡張を阻んでいる。
と言ってもすぐにそれを撤去するわけにもいかない。
せめて新しい宿舎を作ってからでないと、人の収容に問題を出す。
「新しい宿舎を作って、今あるのを解体って事になるんだろうけど」
「それはそれで手間と金がかかりそうですね」
「だから、上手くそうできるように考えてもらいたい」
「はあ……」
余計ではないが、問題を増やされて会議の参加者はため息を吐いた。
彼等自身の食生活にも関わってくる事なので、文句は言えなかったが。
それでは今日はこのあたりで。
さすがにこれ以上は無理です。
明日もあるので。
あと、感想ありがとうございます。
滅多にもらえないからありがたいです。
泣けます。




