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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

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転職57日目 今までの蓄積がこれからに役立つ

 風呂が出来上がってから顕著になってきたが、ヒロノリが拠点にいる時間が増えていった。

 最前線で、構築中の場所なのでどうしても問題が発生しやすい。

 そのため、その場での判断がどうしても必要になる。

 最初は現場の指揮官がその都度判断する事にしていた。

 それでどうにか対処出来ると思っていたのだ。

 しかし、やってみるとそういうわけにもいかない事がすぐに判明した。

 何せ一団の金が大きく動いている。

 一つ一つの問題を解決するにも、おいそれと決定をするわけにはいかない事が多々ある。

 なのでやむなくヒロノリが最前線である拠点に出向く事になった。

 当然であるが、ヒロノリがいても問題が解決するというわけではない。

 専門知識があるわけでも、何かを閃く頭のさえがあるわけでもない。

 ただ、そういった知識を持ってる者や、その場で出てくるアイデアを採用するかどうかなどを決める事が出来る。

 小さな事ならそれこそ現場の判断でやれば良いが、そうもいかない事の方が多い。

 それらの可否を決める裁定者が必要だった。

 新しい物事も多く、その都度判断や指示をしていかねばならないだけに、現場の指揮官だけでは手に余る。

 ある程度やり方や対処方が決まってる既定の出来事ならそんな事は必要無いのだが。

 その為、どうしてもヒロノリが最前線に出向く必要があった。



 その反面、町の方での業務の方は、ヒロノリがいなくても動くようになっていた。

 たいていの事が既に定型化されていて、その通りにやれば問題なく進むようになっている。

 あえてヒロノリがいる必要がない。

 全てが順調ということも無いが、それこそ現場の判断でどうとでもなる事がほとんどだった。

 町にある事務所は、ある程度完成されていた。

(出来上がってる所は、俺がいなくて大丈夫なもんなんだな)

 意外な発見ではあった。



 ただ、前線における様々な作業もそれは同じである。

 何をすべきかを解明させ、やり方を構築し、それを記録して手法としていく。

 それが出来ていけば、こちらもヒロノリが必要なくなる。

 今はまだそこまで到達してないだけである。

 だからこそ、ヒロノリがあれこれと指示を出し、やり方を確立していかねばならなかった。

 失敗も当然山盛りである。

 それすらも、次回に同じ事をしないようにするための土台となっていく。

 様々な出来事の一つ一つが試行錯誤の対象だった。

 主立った者が集まった会議でも、それが目の前にあらわれていた。



「とにかく拠点を拡大して、もっと人を入れられるようにする。

 あと何十人か入れないと、金が続かない」

 経営会議においてそう言うヒロノリに、集まった者達は頷いた。

 稼ぎを確保するためにはそうするしかない。

「今年中に隣に同じくらいの広さの場所を確保して、宿舎を増やす。

 あと四十人は収容出来るようにするぞ」

 敷地の広さを考えれば収容能力はもっとある。

 ただ、資金の関係でそこまで宿舎を作る事が出来ない。

 今年中に出来るのはそのあたりが限界だった。

「それが終わったら、この先まで進む。

 地図によれば、この先に村があったはずだ。

 そこを目指すぞ」

 一団の次の目標はそこだった。



 廃村を復活させたが、そこで終わるつもりはなかった。

 その先にある村を、その先にある町を目指していた。

 モンスターとの最前線どころではない。

 モンスターのまっただ中に突入していく事になる。

 それでもヒロノリはそこに向かうつもりだった。

 単純に稼ぎを増やすためである。

 復興してる最中の廃村に向かうモンスターを減らすというのもある。

 攻撃を幾らか分散させる事が出来れば、村の脅威も減る。

 そうなれば田畑の方に労力を向ける事が出来る。

 田畑の手入れは今もされてるが、振り分けるべき人が少なくてほとんど進んでいない。

 モンスターの脅威もあるので、作業は遅れがちになっている。

 それを打破する為にも、そもそものモンスターを減らさねばならなかった。

 その為にも、モンスターをどこかに引きつけねばならない。

 モンスターの勢力圏にある村の確保は、その為のものでもあった。



 簡単にできる事でないのは既に承知している。

 しかし、無理だというほど難しくもない。

 既に廃村を復活させ、拠点を作り出してる。

 その手法と蓄えた経験がある。

 何がどれくらい必要になるのかの目処はついていた。

 かつての記録が、これからやろうとしてる事に必要な物事を割り出す道しるべになっていく。

 作業人員、物資、日数、費用。

 それらがほとんど即座に呈示されていった。



「まず、村の近くに拠点ですね。

 これがないとどうしようもない」

「堀をつくるだけなら、小さなものなら一日で出来上がります。

 柵も、木材を一緒に持っていくならその日の内に作れますね」

「問題なのは、その為の費用と人員です。

 最初に作った拠点くらいの広さなら五十人位の作業員がいればどうにかなります。

 ただ、それだけの人数と、必要な物資を移動させる手段をどうするかです」

「金もそれだけかかります。

 人もそうですが、馬車も我々が保有してるだけでは全然足りません。

 どこからか借りてこないとなりませんから、これも金がかかります」

「何より、寝泊まりする場所です。

 一日で往復が出来るわけじゃないので、一泊は絶対に必要になります。

 なので、全員が寝泊まり出来る場所だけでも一日で作らなくちゃなりません」

「そこが一番の問題か」

 話を聞いててヒロノリも問題点が見えてきた。

「距離か……」

 それがもたらす必要な時間と手間。

 どうやってそれを解決するかが悩ましいものだった。

「一気に全部出来上がればいいんだけどなあ」

 それこそゲームのように、選べばすぐに建築が出来る、というようなものであれば良いのだが。

 現実もこの異世界もそこまで優しくは出来てない。

「堀と柵だけならいいんですが。

 それを作って、なおかつ作業員を収容する広さとなると無理ですね」

「もっと作業時間がとれればいいんだけど」

 そこを解決出来ないから足踏みしていた。

 更に奥にある廃村までの距離は、やはり馬車で一日(正確には数時間)ほどかかる。

 そこまで一気に物資や人を運ぶ手段がない。

 運べたとしても、それで一日が終わってしまう。

 作業をするなど不可能である。

 村の跡地に寝泊まりする事も難しい。

 今ではどうなってるか分からないので、建物が残ってるかどうかも不明なのだ。

 ただ、昔の地図などにその場所が記されてるという程度の代物である。

 復興中の村からのびる道の跡があるので、その方向に何かがあるのは確かなのだが。



「まあ、悩んでたってしょうがないわな」

 そういってヒロノリは地図に目をむける。

「一気に出来ないなら、少しずつ作ってくか」

「と言うと?」

「まずは行ける範囲に小さな拠点を作る。

 堀と柵だけ作っておけばいい。

 それを、この村まで道沿いに作っていくぞ」

 地図に名前を残す村を指しながら考えを口にしていった。

 20:00に続きを出す予定。

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