表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/159

転職56日目 新年度が始まるにあたり、やはり慌ただしい

 この世界に来て四年目に突入していく。

 目出度くもなく三十三歳になったヒロノリは、相も変わらず忙しい日々の中にいる。

 ブラック企業から解放された異世界で、やはりブラック企業的な冒険者になって。

 そして、仕事の忙しさはかつてのブラック企業とあまり変わらない。

 前より悲惨な目にはあってないのは救いだが。

 しかし納得しかねるものはある。

(前と変わらないなら、なんでこっちに飛ばされたんだろ)

 神か悪魔か知らぬが、この世界に来た時の神社で聞いた声が忘れられない。

 いったいどういうつもりで異世界に移動させたのかがさっぱりだった。

 あるいは単純にヒロノリの願いをかなえただけなのだろうか?

(だったら、もうちょっと境遇を良くしてくれ……)

 前より悪いというわけではない。

 周囲に問題となるような人間はいないのは救いである。

 なのだが多忙はあいかわらず。

 その割に給料が良いというほどでもない。



 モンスター退治にでかければそれなりに稼ぐが、それでも銀貨三十枚程度である。

 この世界ではかなり多い方だが、それでも隔絶した稼ぎというわけではない。

 事務作業をしてる時には、これが銀貨二十枚程度に下がるくらいだ。

 一団の運営費から給料を出さねばならないから、それほど大きくするわけにはいかない。

 給料の金額を決めるのはヒロノリの意志で決められるが、全部を思い通りになるわけではない。

 給料を多くすればそれだけ一団の運営に使える金額が減る。

 そうなったら、不満を他の誰かが抱くようになる。

 運営費の使われ方は、事務員達には筒抜けである。

 人件費も例外ではない。

 そんな中でヒロノリだけ給料を多くしたら確実に不満を抱く者があらわれる。

 なので、極端に突出しない程度に給料はおさえてある。

 ちなみに、事務作業でも重要な部分を担ってる十人程にも月給で銀貨二十枚は支払っている。

 立場はともかく、給与水準においては変な差はつけないようにしていた。



 そんなわけで、稼ぎという面で見れば他とそれほど差があるわけではなかった。

 モンスター退治による銀貨三十枚というのも、レベルの高い者なら十分に届く収入だった。

 他と大きな差があるわけではなかった。

 というより、差を付けられる部分があるわけではなかった。

 強いていうならば、一団の活動や運営について最終決定権があるという事くらいだろうか。

 様々な提案があろうと、最終的に決めるのはヒロノリである。

 それが他の者との差とは言える。

 なのだが、全てを自分の思い通りに出来るわけで無いのは既に述べた通りだった。

 他の者の不満や考えに気持ちを考えれば独裁的に行動するわけにはいかなかった。

 それで不満が出てくれば、立ち去る者も出てくるし、指示に従わない者も出てくる。

 仮に言う通りに動いたとしても、嫌々やる事の作業効率は極端に落ちる。

 最悪、一団を他の者に乗っ取られる事もありえる。

 それだけは避けねばならなかった。

 なので、提案や意見の全てを退けるわけにはいかない。

 同様に、運営費も私利私欲だけで使うわけにはいかない。

 要望の全てをかなえる事も無理なのは当然だが、妥当な、そして理にかなってるものは可能な限り取り上げていっていた。

 それらにしても、一団の資金状況や技術的な問題などでどうしてもかなえられないものもある。

 だが、それならそれで説明をして納得してもらうしかないし、納得しないまでも理由として呈示せねばならない。

 頂点に立てば思い通りになると思っていた……というわけではないが、思った以上に縛りが多くて驚く。

 そんなもんなので、ヒロノリは時折(むしろ頻繁に)思うのだ。

(俺、この一団の社長だよな……)

 ブラック企業の社長は割と我が儘に振る舞っていたものだが。

 何故自分は出来ないのか、と疑問を抱くことしきりである。



 そうは思いつつも一団としての活動は続く。

 この世界に来てから四年目の一ヶ月目、まずは拠点の中に事務所を設置する。

 これで事務作業も風雨にさらされずに進める事が出来るようになる。

 同時に倉庫以外の建物にストーブを設置した。

 寒い時期には必需品である。

 これで作業するにしても居住するにしても寒さに震える事は無い。

 細かな事だが、こういった追加や改修も折を見て行っていく事にしていく。



 村の方の防備も宣言通りに始まっていく。

 二ヶ月目に柵の設置に着工していき、村の周囲を守る防備が完成した。

 これでとりあえず村に戻る準備はととのっていく。

 貧民街に居た者達は、順次村へと戻る準備をしていく。

 とはいえ、荒れた田畑を元に戻すまでは、一団を相手の商売をしていくしかない。

 このあたりは村人にとっても手探り状態である。

 何をしていくのかは彼等自身も考えていかねばならない。

 ただ、何の手がかりもないのでは話にならない。

 そこでヒロノリは、

「とりあえず今まで通りに料理を作ってくれ」

と厨房と食堂を開放していく。

 拠点内における食事については彼等に一任する事にした。

 それらを運営していく維持費だけでも結構な負担になっていたのだ。

 ならばいっその事、村の者達に全てを任せてしまう事にした。

 食材の調達から品目、値段まで村の者達に全てを丸投げしていく。

 ヒロノリからすれば、手間を全部押しつける事にはなっている。

 しかし、村からすれば仕事を丸ごと与えられたようなものである。

 手間は大きいのは確かだが、収入源を手に入れたのも間違いない。

 まずは彼等もそこから始める事にした。



 もちろんそれだけではない。

 必要な作業は他にもある。

「なんなら、修理や修繕もやってくれないか?」

 そう言って武器防具の調整も頼んでいく。

 技術が無ければ出来ない事だが、それについてはモンスター退治によるレベルアップで賄う事が出来る。

 最低限の作業が出来る目安のレベル3まで三ヶ月から半年かかるが、その間はモンスター退治で収入が得られる。

「どうだ?」

 提案するヒロノリに村の者達の何人かが頷いていった。

 武器や防具の手入れだけが目的ではない。

 日用品の修理も必要になるのだ。

 なので、どのみち鍛冶職人は必要になる。

 建物の修繕も同様である。

 村の建物はどれも傷んでおり、いつか修繕になる。

 解体して新築せねばならないものもある。

 その為の職人育成の為と思えば、危険を覚悟で乗り出すしかなかった。

 何より、収入が他にない。

 レベル上げついでにモンスター退治で稼げる渡りに船である。



 もちろん、モンスター退治に出向く者もいる。

 こちらは以前から何人かが参加していた。

 一団に所属してる村の者達が、今は村の収入を支える土台となっている。

 既にレベル3を突破してる者もいるので、安定した収入源になっていた。

 丁度良いので、育成する村人を彼等につけていく。

 同じ村の者同士、こういう時に協力しあってもらいたかった。

 もちろん、そりの合わない者はなるべく一緒にさせないようにしていったが。



 その間にも拠点には新たな宿舎の建築が進められていく。

 新たに二軒を造り、収容出来る人数を拡大していく。

 これでテント暮らしが完全に消える予定であった。

 なお、この建築の作業員には村の者達を出来るだけ用いていった。

 町から作業員を連れてくるのは手間がかかるし、なるべく村の方に金を落としていきたかった。

 村が復興してくれないと、一団の今後の行動が滞ってしまう。

 ある程度の作業を外部に流す事で、一団そのものが抱える作業を減らしておきたかった。

 独自に行動するなら、全てを自己完結出来るべきなのだが、そんな余裕は無い。

 このあたりは金銭的な負担とにらめっこしなかがら考えていくしかなかった。

 ただ、村の者達が一団の必要としている雑務を肩代わりしてくれるなら、それは決して損失にはならない。

 使える手段が増える事は、選択肢の増大になる────そう信じていたかった。



 そうこうするうちに半年が過ぎ去り、拠点の宿舎が完成する。

 これで今の拠点に設置できるものはほぼ全て作る事が出来た。

 出来れば更に拡張したいが、その為には拠点をもっと大きくしなくてはならない。

 増大する一団員を収容するためにはそうしていくしかない。

 それに、まだまだ先に進んでいきたかった。

 廃村は、今の時点における最前線であるが、ここが終着地というわけではない。

 この先にもまだ潰えた村や町がある。

 それに、廃棄せざるえなかった鉱山もまだ先にある。

 そこまで進むためには、より多くの人員が必要だった。

 まだまだ拡大をしていかねばならない。

 稼ぎを増やす為にも。



 そんな中で、ヒロノリは自分の趣味でとある施設を拠点内に作っていく。

 話を聞いた者達は、「何を酔狂な」と思ったが反対する者はいなかった。

 公衆浴場はあるが、風呂に入るという事がそれほど一般的ではないのでそう思うのだろう。

 それでもヒロノリは建設を強行した。

 通常の小屋と勝手が違うので時間も金もかかるのにも関わらず。

 それについては、事務方から「本当にいいんですか?」と苦情混じりに言われたものだ。

 しかし、出来上がると利用者が一気に拡大していった。

 毎日入浴する習慣がある世界ではないが、あれば利用したくなるようだった。

 そして、一度風呂に入るとその快適さにはまるようである。

 さすがに毎日利用する者はそれほど多くはないが、二日三日に一度は入りに来る。

 最初は疑問視していた者達も、そんな事は忘れて利用していく程だった。

 そんな者達に苦笑しつつも、ヒロノリはほぼ毎日風呂に入り浸っていた。

 拠点にいる間は。

 この後書きを使って何か楽しい事でも書こうと思うのだが、なかなかネタも浮かばず。

 そんなもの考えるより続きを書けという事になりそうな気もする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ