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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

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転職54日目 入ってきた金をすぐに使うしかないこの状況

 拠点の拡張が開始されていく。

 三ヶ月の間に作られた堀の中に新たな柱が立てられる。

 今までの拠点と隣合わせになるように作られ、接する柵は撤去されて両方を行き来できるようにする。

 堀も既に改修され、両者の間は土嚢で埋められていた。

 柵は両者をつなぐように新たに設けられる。

 作業員も材料も大量に送り込まれ、拠点は慌ただしい雰囲気に包まれていった。



 送り込まれてくる木材が、職人の指揮のもとで形をともなっていく。

 事前に加工が施されたそれらは、組み上げるだけで建築が出来るようになっている。

 細かな修正が必要だったりするし、職人にしか扱えない特殊な組み方をするものもあるので、誰でも出来るわけではない。

 それでも、作業時間は大幅に短縮されている。

 素人でも出来る部分などは周旋屋の作業員が進め、細かな所は職人が手を加えていく。

 もともとそれ程大がかりな建物でもないので、大まかな形は一ヶ月もしないうちに出来上がる。

 周旋屋の作業員で建築関係の技術持ちも居るので作業の進みは早い。

 内装の方は細かな作業も必要だが、それも大雑把なもので済ませてしまう。

 生活に必要な部分はともかく、見た目に拘る必要はない。

 基本的に、寝起きが出来ればそれで良いのだ。

 二段ベッドを持ち込み、タンスなどを入れればそれで終わる。

 そして一件目が終わる前に二軒目の建築が始まる。

 着工時期はずれるが、二軒を建てるという目的は達成出来そうだった。

 また、倉庫というか納屋の方もほぼ同時に作っていく。

 値段が安くつくのと、どうしても必要なのでこちらの方は急いだ。



 その間の資金繰りはかなり大変なものになった。

 一応ある程度の資金はあったが、それでも自転車操業的に発注を出す事になってしまっていた。

 皆から徴収する運営費用が、入ってきたそばから材料費などに消えていく。

 入っては出ていき、出ては入ってくる。

 その流れの中で、どうにか黒字を確保しつつ作業は進められていった。

 とにかく冷や汗ものである。

 おまけに、新人の募集と教育、人の割り振りなども同時進行で進めていたのだからたまらない。

 事務員達の悲鳴も止まることなく上がっていった。

 それらを解消する為の新人達は、現在ほとんどが修行中である。

 一人二人と仕上がった者から事務室に投入されるのだが、とてもそれで追いつくようなものではなかった。

 ブラック業務状態を自らが作り出した事に、ヒロノリは軽く自己嫌悪に陥った。

 その甲斐あってか、作業現場における作業の滞りはない。

 少なくとも物資などの行き来で停滞が発生する事はなかった。

 建築作業が始まってから一ヶ月二ヶ月と過ぎ去る中で、拠点の中に宿泊所となる小屋が次々と出来上がっていく。



 最初に出来た小屋は戦闘員の宿泊施設となった。

 まずは実際に作業に出ている者達を収容出来る場所が必要だった。

 八メートル四方ほどの平屋のそこに二段ベッドを入れて、十人が寝泊まり出来るようにしている。

 やってくる者達を全員収容する程の大きさはないが、これで多少は不満が改善出来た。

 その次に、常駐する事務員達の宿泊施設が作られた。

 同じような造りで、やはり十人ほどを受け入れる事が出来る。

 ここに常駐してる事務員が入る事になった。

 作業場所はまだテントでするしかないが、それでも寝泊まりする場所が出来た事は事務員達に喜ばれた。

 それらが出来た次は、物品を入れるための倉庫だった。

 すぐに宿泊施設となる小屋を建てるほどの資金的な余裕が無かった為である。

 金銭的には負担が少ないこれを、とりあえず連続で一軒ずつ建てる。

 一軒は事務作業や様々な備品を入れておくために。

 もう一軒は馬車や馬をつないでおくための場所として。

 それが終わってからようやく宿舎をもう一つ増加させる事が出来た。

 ここまで、だいたい一ヶ月で一軒が建てられている。

 そこから更に厨房と食堂となる場所をそれぞれ一軒ずつ作る事になる。

 それらが出来上がる頃に一年が終わる事になる。

 堀をつくる所から始まった一年は、概ねこんな調子で終わっていきそうだった。



「事務所は来年だな」

 資金繰りの都合でそれ以上はどうしようもなかった。

「料理とか清掃とかしてくれてる人達の宿舎も欲しいけど、これもすぐには無理だな」

「やっぱり来年ですよね」

「もうちょっと稼げれば良いんだけどな」

 その範囲でやりくりしなくてはならないから、そう簡単に事を進める事も出来ない。

 新人を受け入れ続けてはいるが、ここ最近は主に事務作業員に振り分ける者達を雇っている。

 もちろん本人が希望するならモンスターとの戦闘の方にまわってもらうつもりではある。

 当然ながら、そんな危険な方を志願する者は少なく、たいていが事務員志望であった。

 また、事務作業の方の増強を図っていたので、どうしてもそちらに人数が偏る。

 とは言っても、今までがあまりにも事務員が少なかったのではあるが。

 よくもまあ上手く動かしていたものだとヒロノリは驚くしかない。

 そのため、稼ぎが増えてるという事は無い。

 なお、事務作業として募集するのはほとんどが女子である。

 体力的な面から見てそうするより他ないのだが、そのために事務員志望者をモンスター退治に振り分けるという事も出来ない。

 戦闘員を増強するには、男をどうにかして確保するしかない。

「人を入れる事が出来ればいいんだけど……」

 今までも年間を通して人は募集していたが、それも含めて、大々的に人を集めようかとも考える。

 もっとも、収容場所がないので、それも簡単にはできない。

 拠点の宿舎を更に増やし、もう少し人数を増やす必要があった。

 それでも全然足りないが。

「あとは時間をかけてやってくしかないか」

 そうなってしまう。

 出来るだけ急いで拡張したいが、先立つものがない。

 今は金が貯まるのを待つしかなかった。

 それまでは現状維持を続けるしかない。



 それでも場所はあるので、今まで通りにテントを使うなら人を収容する事は出来る。

 今の状態で、最大四十人ほどの戦闘員を拠点に入れる事は出来る。

 あくまで入れるだけであるが。

 長期間の滞在には不向きである。

 やはりしっかりとした家の方が快適だ。

 短期的な避難としてならともかく、長期間の居住を考えればしっかりとした建築物が欲しい。

 それを今後も作っていくしかない。

 場所の更なる拡張も含め、一団の大半を収容出来るようにしておきたかった。

 ヒロノリにとって、本番はそこからなのだから。



(村の方も、さすがにそろそろ手をつけないとな)

 そちらも考えていた。

 相変わらず廃村の方はまだ回復していない。

 モンスターを退ける設備が修理されてないのだから当然である。

 だが、いい加減、そろそろ片付けておきたい事であった。

 ヒロノリの所で作業員として雇ってる廃村出身者からもせっつかれている。

 もちろん何もしてなかったわけでもない。

 村を覆う堀は、建築作業の合間に手の空いた作業員達に回復させていた。

 長い年月で堀も風雨によって埋まったりしている。

 どうしても土砂がたまって底が浅くなるのがこれらの問題だ。

 それらをあらためて堀直し、妥当な深さと幅を回復している。

 再び崩れないよう、土嚢で壁を作って崩れにくくしながら。

 あとは材木を運び込んで柵を作ればモンスターの侵入は大幅に防ぐ事が出来る。

 田畑の方はまだこれからになるが、それらも時間をかければどうにかなる。

(来年はそっちにも手を入れていくか)

 拠点のすぐ近くで食料を生産してくれればありがたい。

 手間はかかるが、利点の大きさも考えて村の復興について考えていく。


 本日はここまででございます。

 さすがにこれ以上は無理。

 明日もどうなることやら。

 うまく新しい話が出てれば良いが。

 主人公並みに、書いてるこっちも自転車操業である。

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