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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

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転職47日目 第一歩はこんな形に修正になった

「思った以上に面倒だな」

 調達部の上げてきた報告に目を通してため息が出た。

 大変な事になるとは思ったが、それが想定を超えている。

 村の近くに立ち寄れる場所を作り、そこを中心に活動していく────。

 たったそれだけの事のはずなのだが、想像以上にそれが難物だった。

「モンスターの存在は大きいんだな」

「はい。

 これが無ければもっと簡単にいくんですけど」

 だからこそ、復旧復興が全く出来ずにいたのだろう。

 ちょっと何かをしようとしただけでこれである。

「木材に作業員に食事に運搬に……とにかく色々必要か」

 モンスターを遮る防備を、それも簡単なものであっても良いのでそれを作ろうとしただけである。

 それでこの有様だ。

 楽に出来るとは思っていなかったが、こうも手間がかかるとも思っていなかった。

 とにかく作業量と作業人数が大きくなる。

 ヒロノリの一団でこなすには大きすぎるように思えた。

 資金的には何とかなるのだが、これをやったら蓄えがスッカラカンの空っぽになる。

 借金が出来ないのが幸いというくらいに金が減る。

 というより、必要な材料の買い付けで既に大分減っている。

 これで、いざ実際に作業となったら更に減るのが目に見えている。

 その見積もりが目の前にある。

 頭を抱えたくなるというものだった。



 それでも、使った分の金は、毎日の作業で回復してはいる。

 出た分ほど入ってくる訳ではないが、確実に稼ぎとして補充は為されている。

 なのですぐに金欠とはならない。

 ならないが、だからといって厳しい状況なのは変わらない。

 出て行く金と入ってくる金では圧倒的に前者の方が大きく、どこかで一度作業を止めなければ金は無くなる一方だ。

 作業の見直しや、ある程度進行した所で停止せねばならない程では無いが、冷や汗が止まらない。

 もしどこかで手違いが発生したり、想定外の損失が出てしまったら取り返しがつかない。

 だからと言ってやってる事の全てを止めるわけにもいかない。

(段階的にやっていくしかないかな)

 今までの考えを一旦退け、現状で出来る事を考えていく。

 まだ本格的に始まってないのが唯一の救いだったかもしれない。



 それでもヒロノリは作業を進める事を覆しはしなかった。

 今の状態では先が見えてるというか手詰まりになるのは変わらない。

 打開策はどうしても必要だった。

 とすれば、何をどこまで進めるか?

 全てを完成させる事は難しいと思えるので、ある程度の所で一旦停止は必要になる。

 無理して強行したらどんな事になるか分からない。

 まずは確実に必要なものを手に入れていく事にする。

 全部は無理でも、ある程度の所までならどうにかなる。

 それを考えて計画を見直していく。

 作業に関わる者達も交えて、計画を練り直す。



「とりあえず、どこまで出来る?」

 問題はそこに尽きた。

 村の中に入らず、その近くに拠点を作る。

 それは変わらない。

 だが、その為に何処まで出来るのか?

 建造というのは簡単にできる事では無い。

 だが、時間をかけすぎるわけにもいかない。

 まず、最初の段階で何がどこまで出来るのか?

 そこまで行くのに何がどれだけ必要になるのか。

 それを考えておかねばならなかった。

「せめて、事前段階あたりはこなしておきたいけど」

 全部は出来なくてもよい。

 その後の作業に差し障りがないところまで、その次の行動にすぐに取りかかれるところまで。

 そこまではやっておきたかった。

 だが、その事前の段階とはどこまでを指すのか?

 作業行程に区切りを入れるとしたら、それはどこにするのが適切なのか?

 それもまた考えねばならなかった。



「泊まり込みでの作業は出来ない。

 一日で出来るところまでで確実に進めていきたい。

 寝泊まり出来る所が出来るまでは日帰りで作業をしなくちゃならない。

 それで出来る範囲となると、どれくらいになる?」

「とりあえず、宿泊所予定地の周りに堀を。

 小型のモンスターだけでも食い止めないと作業どころじゃありません」

「荷物を持ち込むにしても、まずは場所を確保しないと」

 調達に奔走していた者達が口を開いていく。

「物を置く場所を含めて、とにかく安全地帯をまずは作らないと。

 でなければ何も出来ません」

「その堀を作るためにまずは人数を。

 一日で全部を作るのは難しいでしょうけど、それでもどうにかしてやり遂げたいですね」

 まず作業の安全性を確保しなくてはならない。

 その為に出来る第一歩がこれであった。

「穴掘りか」

 これはこれでコツのいる作業だが、特別な技術がなくても割と誰でも出来る。

 土台となる体力や、やはり経験による違いは出てくるが、それでも比較的簡単に構築できる防備の一つだった。

 また、掘って出て来た土を盛り上げて、簡単な防塁を作る事も出来る。

「そしたら、砂袋も用意しておくか」

 土をそのまま盛り上げるよりは、袋に入れて積み上げた方が効果は大きい。

 持ち運びもある程度楽になる。

 袋自体は丈夫であってもらいたいが、粗末で安いもので十分なので数を揃えるのも簡単だ。

「それじゃ、まずは堀作りから始めるか」

 その間、周囲のモンスターを倒しておく必要があるが、これは現地でのモンスター退治と兼ねる事が出来るのでそれほど心配は無い。

 むしろ、作業員を確保出来るかどうかが悩ましい。

 モンスターの出没地域である。

 怖じ気づく者達が出て来るだろうから簡単に人数を確保できるとは思えない。

「多少賃金を上乗せするしかないか」

 もともとそのつもりであったが、やはり痛い出費になりそうだった。

 ただ、何日もかけるわけにもいかない。

 採用人数を多くし、一日で一気に作業を進めてしまう事にする。



 堀と言っても、城の周りに張り巡らせるような立派なものである必要はない。

 それでも深さは一百五十センチくらい、幅は少し広めにとって二メートルほどは欲しい。

 これだけの大きさのものを掘るとなると簡単にはいかない。

 この世界、土木や建築作業用の重機や作業車両などは存在しない。

 堀を掘るとしたら、スコップやシャベルなどで地道に掘るしかない。

 そうなるとどうしても人数が必要になる。

 とりあえず一辺二十メートルほどの四角形の形に場所を確保したいので、その分の堀を作りたい。

 資材置き場も確保せねばならないので、広さはこれでは足りないのだが、まずはこれを目安にしていく。

 その為に必要な人数を考えるのだが、適当な人数がなかなか算出出来ない。

 多ければその分作業ははかどるが、その分金もかかる。

 出来れば妥当な人数にしておきたい。

 が、目安が分からないのでどのくらいにすれば良いのか見当がつかない。

(しょうがないか)

 やむなく、非常に大雑把に考える事にする。

 何人必要なのかではなく、幾らまで金を出せるかという所から計算をしていく。

 今、一度に無理なく出せるのは銀貨五十枚ほど。

 一人あたり八千銅貨(通常の作業の二倍ほどの値段)として、おおむね六十人。

 無理なく雇える範囲となるとこれくらいになるだろうか。

 この六十人を雇って、一気に作業をしていく。

 それで二十メートル四方、合計八十メートルになろうとする堀を作る。

 果たして出来るのかどうか不安ではある。

 だが、こればかりはやってみるしかない。

(まあ、出来なかったらもう一日頑張ってみるしかないか)

 それは覚悟でやっていくしかなかった。



 他の者達にも賛同し、とりあえず堀を作る事で意見が一致する。

 翌日には周旋屋に作業員の募集を発注した。

 募集受付まで二週間。

 すぐに人があらわれるとは思わなかったが、それまでは待つしかなかった。



 が、意外な事に参加希望者は続々とあらわれた。

 なんで、と思うもやはり値段は大きかったようで、一日でこれだけ稼げるならばと名乗りをあげてくる者が多かった。

 意外な誤算であったが、ありがたくその結果を受け取る事にする。

 おかげでこの日一日は他の所からの仕事に従事する者が減ってしまい、町はほんの少しだけ人手不足になったとか。



 その他、まかないで簡単な料理を出すべく、現地で料理などをする者達を孤児院や廃村の元住民達から人手を集めた。

 廃村の住人の方は周旋屋で作業員をしてる者達もいたので、こっちの方に集まる者はあまりいなかったが。

 なので、ほとんどは孤児院の者達になった。

 彼等の仕事として調理器具などを用意していく。

 必要な食材も調達し、当日を待つ事になる。



 とにもかくにも、進出の第一歩はこんな調子で進んでいく事となった。

 番外編を書いた事でいくらか頭が整理されたせいか、わりとすんなりと書けた。

 この調子でがんがん進んでもらいたい。

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