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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

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転職41日目 世間からすれば小さな規模の、一団としては大きな事業

「じゃあ、これで全部だな」

 検討会議の席で、集まった者達の顔を見渡して聞く。

 全員、頷いて返事をして。

 ヒロノリの言葉を肯定していく。

「それじゃ、やるか」

 遡上にのせていた議題に最終決定を下していく。

 一団の今後の方針がこれで決まった。

 廃村への進出が。



 言ってしまえばそれだけの事であるが、冒険者の一団としては大きなものである。

 単純に野営場所として勝手に使うというならともかく、恒久的な拠点にしようというのだから。

 それにかかる費用もヒロノリ達で賄おうという事なので、かなりの手間と金がかかる。

 必要に迫られての事ではあるのだが、やはり決めるまでに色々と悩みはした。

 一団内の者達からも考えを聞き取り、是非を問うていった。

 そうした果ての決定である。

 一団全員がそれに向かって動いていく。



 既に廃村の元住人達からも了承を得ている。

 彼等も今のまま貧民街にいるよりは、という事で大半が村に戻る事を決めた。

 一団の人間ではないが、これから付き合いをしていく事になる。

 モンスター退治には参加しないが、村の機能を回復してもらえば後々便利になる。

 基本的に戦闘が主要業務のヒロノリ達に、日常的な部分の切り盛りは出来ない。

 やるとしたら、新たに人を集め、資材や機材を揃えねばならない。

 そんな手間をかけるよりは、村人にそれらを揃えてもらった方が早い。

 初期の費用などはヒロノリ達が出す事になるが、ある程度まで進んだら彼等自身にやってもらう事になる。

 外部委託に形は近いものがあった。



 当面の住居としてのテントや、防壁のための木材。

 堀を作る為の土木作業道具。

 それに、作業員。

 集めねばならないものは多い。

 今までため込んできた資金を一気に放出していく。

 村の方に出していた偵察と、それによって作られた見取り図。

 それをもとにして建造計画が練られている。

 資金の限界もあるので、最大でも二週間で作業に目処をつけねばならない。

 塀の建設くらいならそれでどうにかなるはずだった。

 必要な資材を一気に持ち込めればだが。

 その為にも、木材を一気に集めて運び出さねばならない。

 もちろん村全体を取り囲むほどの資材を用意は出来ない。

 その外に、まずは一時的な拠点を作る事になる。

 村のモンスターを一掃し、安全を確保して塀をたてて場所を確保。

 そこを中心にして村を少しずつ回復させていく事になる。

 長い時間がかかる作業になる。



(一年で目処がつけばいいけど)

 どう計算してもやはり時間がかかっていく。

 それを解消するためには、人を集めて稼ぎを増やすしかない。

 同時にレベルアップもしながら。

(町に残す新人研修係にも頑張ってもらわないと)

 全員が廃村へと向かうわけではない。

 町に残ってやってくる新人を教育する者達もいる。

 それらには新人をレベル3の戦闘技術が身につくまで育ててもらう事になる。

 廃村でモンスターを相手にしていてはそこまでの余裕がないと考えられたからだ。

 それに、町の周囲のモンスターも倒していかねばならない。

 毎日のモンスター退治のせいか、周辺における被害が減っている。

 教育も兼ねてある程度の規模のモンスター退治は続けていきたいところだった。



 同様の理由で、町と廃村の間の村にも一団の人間をある程度派遣しておきたかった。

 物資運送途中での襲撃を減らす為だ。

 モンスターによる被害を減らすためにも、予防は必要になる。

 馬車に護衛を付けるにしても、それだけで完全に被害を減らせるわけではない。

 村に留まって活動する者達が必要だった。

 そこはまだ交渉中であるが、反応は悪くない。

 村からしても周囲のモンスターを少しでも減らせるのは大きな利点だ。

 それが手を取り合うきっかけになればと願う。



 その為の人選と配置が悩ましいものだった。

 どこにどんな人間をどれだけ送り込めば良いのか?

 一度決めたら変える事が難しいだけに慎重になる。

 とりあえず新人教育のために二十人は町に残す事になる。

 それとは別に、廃村との連絡をとるために事務作業員も十人ほど残す事になる。

 責任者も置いておかねばならない。

 ヒロノリも廃村に向かうので、町の方は誰かに任せるしかない。

 あわせて三十人ほどが町に残る事になる。

 ここに、今後入ってくる予定の新人が加わる。

 残り一百二十人も全員が廃村に向かうわけではない。

 物資の護衛やらで何人か引き抜かれる事になる。

 村に駐屯するなら、その分も引き抜かれる。

 現地における事務作業もあるので、全員が戦闘員というわけではない。

 純粋にモンスターを相手にする者は、おそらく七十人から九十人になるのではないかと考えられる。

 一団の収益を考えれば、人員の拡大が求められていく。



(やっぱり大がかりになるか)

 言ってはなんだが、たかだか村一つである。

 それを回復するだけでもかなりの人員と資材が必要になる。

 軽く考えていたつもりはなかったが、それでも想像以上に大変なものになった。

 廃棄された村や集落がなかなか復活しない理由がよく分かる。

 それを冒険者の一団がやろうというのだ。

 驚天動地と言えるだろう。

 単にモンスターを追い払うだけならどうにかなるのだろうが。

 しかし、本当に大変なのはそこから先である。

 ただ単にモンスターを追い出すだけではなく、そこを継続的に維持していかねばならない。

 終わる事のない作業がこれから待っている。

(でも、やるしかねえか)

 今後の発展と更なる収益増加を考えるとそうするしかない。

 モンスターの跳梁跋扈してる地域に進出し、稼ぎを拡大していかねばならない。

 レベルも上げて、強力なモンスターを倒せるようにする事も視野に入れる。

 その為にも、より大勢を展開し、より多くの人間のレベルアップが必要になる。

 今の数倍の人数を抱え、それを土台としてより強力なモンスターを倒せる人員を育成していかねばならなかった。



 この世界にやってきて三年目。

 思いもがけないほど大きな物事に取り組む事になった。

 ちょっと話の展開が変わっていくかもしれない。

 そんな事を考えている。

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