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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第三決算期

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転職38日目 利があると思えば接触しようとするもの

(あと、お付き合いもか……)

 組織作りと並んで面倒となりつつあるものが増えていっている。

 他の商会や工房からの接触が増えてきてるのだ。

 組織だってモンスター退治をしてるせいであろう。

 彼等からすれば、燃料となるモンスターの核を大量に採取してくる存在だ。

 接点を保っておきたいと願うのは当然のこと。

 割安価格で、とは言わないまでも安定して、そして優先的に核を卸してくれればと思うのだろう。

 商会や行商人などは、運送の護衛としてもあてにしてる節がある。

 町や村の間の移送にどうしても護衛は必要になる。

 その為の人員確保は結構難しい。

 特に大きな商会ともなると、運送馬車が列をなす。

 それを守ろうとしたらある程度の人数が必要になる。

 大手の冒険者集団でもなければ、それを賄う事は難しい。

 少数の冒険者集団を幾つか雇うにしても、それだと一々あちこちに声をかけねばならない。

 手間が格段に跳ね上がってしまう。

 ヒロノリの所のように数十人以上の冒険者が固まってるなら、そこに声をかけた方が手間が省ける。

 そういった思惑もあって、ヒロノリ達に声をかけてくる所は多い。

 今の所はそれほど大がかりな接触はないが、いずれもっと大きくなる可能性はある。

 それらとどう接していくかも考えるところだった。



 確かに彼等との接点は大事ではある。

 工房がなければ使ってる装備や道具の調達も出来なくなる。

 商会がなければ、核の売買にも影響を出しかねない。

 いずれ彼等との付き合いも必要になる場面も出てくるとは思う。

 だからこそ接し方をどうしようか考えてしまう。

 ただ、今すぐに大がかりな接点が必要というわけでもない。

 相手からしても、まずは打診をしてみるという程度なのが伺える。

 急いでとりまとめる必要があるわけではない。

 だが、このまま一団が巨大になり、大規模な取引が必要になると彼等の存在は大きくなる。

 大量に手に入れた核を売りさばくには商人の力が絶対に必要になる。

 だからこそ接点を疎かにするわけにはいかない。

 しかし付き合いが深く成りすぎると、余計なしがらみも発生する。

 さじ加減というか塩梅が難しいところである。



(振り回されないように、こっちが土台を固める必要があるかな)

 自己完結出来るならば、外部の影響を受ける必要は無い。

 極端な話、ヒロノリ達の所だけで、核の採取から販売などを全部賄えるなら他の商人も必要無くなる。

 物品の生産も自分でどうにか出来るなら工房との付き合いもいらない。

(そうなると、総合商社になるしかないか)

 トイレットペーパーから核兵器まで何でも取り扱う……というのはさすがに大げさだが、それくらいになれば確かに他の所は不要になる。

 というより、それはもう総合商社を超えた財閥というべきものであろう。

 様々な業種を内に抱える巨大経済複合体である。

 それだけで一国と言って良いほどの存在となる。

 意識していたわけではないが、ヒロノリが思いついたのはそういったものだった。

(やってみるか?)

 他からの介入を阻むにはそうするしかない。

 実際に目指すかどうはともかくとして、それも目指すべき道かと思い始める。



 そんな事を考えつつも、いつもの日常に大きな変化はない。

 モンスターを倒し、経験値と核を手に入れて帰還する。

 帰ってきたら事務報告に目を通す。

 必要なら指示を出し、問題がなければ良くやったと言う。

 そんな事の繰り返しを続けて翌日を迎えていく。

 変化と言えるような変化も特にないまま、しかし微々たる違いが毎日積み重なっていく。



 事務所用の土地の確保がそれに繋がった。

 交渉窓口を探していった果てに、領主との会談に至ってしまった。

 町の近隣の土地が基本的に領主のものである事を考えれば当然の帰結ではある。

 だが、不動産屋に話を通すくらいに考えていたヒロノリは驚くしかない。

(どうしてこうなった?)

 そんな疑問が頭の中を周回していく。

 そう思う間に領主との会談の時がやってきて、慣れぬ礼儀作法を駆使して接見をしていく。

 四十代とおぼしき壮年の領主は、剣呑でないにしても一定の距離を保ってヒロノリと接してきた。

 結果だけ言えば、交渉は失敗。

 領主は町の周囲の土地を売却するつもりはないと明言した。

 これは、ヒロノリ達だけが対象というわけではない。

 町の住人でない者達に分け与えるわけにはいかないのだ。

 宿泊などで一時的に逗留してるならともかく、土地の売買は恒久的な定住に繋がる。

 安易に外部の人間に提供するわけにはいかない。

(そりゃそうだよな)

 ヒロノリとしても納得するしかない。

 ようは、外国人に土地を始めとした重要な施設などを売却するか、という事である。

 諸々の権利もそうだが、外部の人間に安易に売り払うわけにはいかないのだ。

 当然のことだと納得したヒロノリは、特にそれに異を唱える事もなく領主のもとを退出した。

 簡単にはいかないと思っていたが、こうもはっきりと断られるとは思ってもいなかった。

 だが、だからと言って諦めたままというつもりも無かった。

(他の場所を探すか)

 無理に食い下がるような事はしない。

 駄目ならもっと有望な所を探す。

 営業では常にそうやってきた。

 今回もそうしていくだけであった。

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