転職37日目 いない間に色々と変わってる
新人募集と土地の確保の作業を事務所に任せて、一旦ヒロノリはモンスター退治に向かう。
時間のかかる事であり、地道な作業が必要になる。
既に確定された内容を繰り返すだけなので、特にヒロノリがあれこれ口を出す必要もない。
一日の終わりに作業報告を受け取るだけで良いので、ある程度の結果が出るまで経験値稼ぎに邁進する事にした。
久しぶりに出て来てみると、その間に起こった変化を肌で感じる事が出来る。
全員のレベルが上がってるのは当然として、活動場所や組の編成にも違いが出ていた。
馬車が使える事で今まで行けなかった所まで移動出来るようになり、それに合わせて人の分布が変わっている。
どのあたりにどれくらいのモンスターがいるかで分布が変わっている。
当たり前の事だが、それらが自動的に為されてるのに驚いた。
モンスターの状況を見て各自で考えたようだった。
報告書として上がってきてない事だったので驚く。
状況に合わせて最適化されてる。
それは良い事だし、非難はしない。
むしろこれを為した皆を褒めた程だ。
しかし、何がどうなってるのかの報告が無かったのは痛い。
(今後は何をしたのかを報告してもらうか)
全体の動きが把握出来てないと困ってしまう。
それがどんな小さな事であっても、何かが変われば違いが出て来る。
また、重なっていけば一つ一つは小さなものでも、全体で大きな違いになる。
その違いがどんな結果をもたらすか分からない。
良い方向に変わっていってるにしても、知るべきは知っておきたかった。
それをもとにして、よりよい方策を思いつくかもしれないのだ。
(定期報告をさせた方がいいな)
どこで何をしたのかだけでも分かっていれば、そこから何かを掴めるかもしれない。
事細かに説明しろとはさすがに言わないが、その程度の情報は確保しておきたかった。
そんなこんなで変わった部分を視察していき、変化を目の当たりにしていく。
驚いた事に、退治する予定だった犬頭が既に戦闘の相手になっていた。
そろそろやろうと思っていたのだが、先んじて行動を開始していたらしい。
行ける範囲に出没するので当然の結果と言えるが、これは嬉しい誤算だった。
おかげで指示を出す手間が省ける。
一方で、自分の知らないうちに物事が進んでいく事に若干の危惧をおぼえた。
このままでは先々で面倒や問題が起こるかもしれないと。
独断で行動するにしても、ある程度の方針は決めておかねばならなかった。
ただ、独自に行動していた者達も、最も基本的な部分はしっかり守っている。
『無理をして死んでは元も子もない』
教訓として伝えられてる出来事のおかげで、行動には慎重さが備わっていたようだ。
だからこそ、損害もなく活動範囲をひろげ、新たなモンスターにも対処していったのだろう。
(現場での工夫は皆に任せて、こっちは大まかな指示だけ出した方が良いのかもなあ)
今の一団員を見ているとそう思えてくる。
考え無しだった頃であれば、細かな指示を出し続ける必要があったが、今はそうではない。
実際にモンスターとやりあってきた経験と、技術として身につけた一般教養などで考える土台が出来てる。
細かな工夫はその都度していかねばならないが、それを重ねる事が出来るようになっている。
大きな事は出来ないが、現地における対応や対処は自分達で考えていけるようだった。
そのあたりの現場の努力と智慧があるなら、あれこれと指示を出す必要は無い。
むしろそんな事をすれば邪魔になりかねない。
運営の仕方に修正が必要になりそうだった。
モンスターを倒し続けながら、そんな事を考えていく。
小さな変化かもしれないが、これらが当たり前のように出来るなら先々の展望も明るい。
組織が適切に行動していくには、上層部のような一握りの人間だけの素質が高ければ良いわけ出はない。
所属する一人一人の素質や素養が高くなければどこかで停滞する。
衆愚に陥らないように注意はしなければならないが。
それでも不毛な暴走や混乱は発生するだろう。
人が寄り集まってるという事は、良い事だけではない。
だが、どうしようもない流れは切り捨てるしかないにしても、事前に把握出来た兆候はどうにかして解消したかった。
ここまで積み上げたものを喪失したくはない。
週末に一週間の行動を報告するよう指示を出し、とりあえずの対応とする。
それで全部が終わりではなく、この先改善や改良も必要になるだろう。
やる事は確実に増えていく。
(組織作りをしっかりしないと……)
一人ではもう対処しきれない。
そうなりつつあるのを感じていた。
先の事を考えて色々と悩んだりしてる。
おかげで筆が止まってしまう。
そんなこんなでちょっと足踏み状態。
とりあえず明日の続きを書いくる。




