転職36日目 自分達の居場所を作らねばならないかもしれない
当分、孤児院の方は様子見という事に落ち着いた。
何せまだ子供だ。
成長するのを待たねばならない。
それまでは稽古やら教育やらが必要である。
何かするにしてもあと何年か待たねばならない。
ヒロノリが手を貸すとしたら、その何年か先になる。
それまでに受け入れ体制を作っておかねばならない。
(さーて、どうするか)
やる事は単純だ。
一団を大きくして、受け入れる余地を作る事。
それだけである。
手間と時間はかかるが、数年という猶予があればどうにかなりそうではあった。
金は着実に貯まってるし、レベルも上がっていっている。
必要な段階に達するまでの時間がどうしても必要だが、いずれはそこに到達出来る。
気持ちが急いてしまうが、焦る必要は無い。
まだ行動には出られないが、必要な情報を集める段階でもある。
(まずはそこからか)
定めておかねばならい事も考えねばならない。
一団が更に大きくなる前に、運営を円滑にするための組織作りを。
馬車の運用が始まった事で、戦闘以外の部署も必要になっている。
これに加えて、人員確保のための部署もこれから必要になる。
宿舎を建てるつもりなので、不動産と建築関係と接する必要もある。
最低でもこれらをこなしていかねばならない。
ヒロノリがいなくても仕事が進むようになれば良いのだが、まだまだそこには遠い。
それらは少しずつやっていくしかない。
まずは、女の子達を受け入れる準備を作っていくのが先になる。
そろそろ基本的な技術を身につけ、事務作業を行えるくらいにはなってる。
事務所の方に移ってもらって、作業を開始していってもらおうと思っていた。
(まあ、当分は暇だろうけど)
やるべき事は特にない。
もう少し忙しくなれば違ってくるのだろうけど、そうなる予定もない。
(何かしら動いていた方がいいかもなあ……)
仕事を作っても仕方がないのだが、暇をもてあます状態を無くして置いた方が良いとは思った。
幸い、女の子達が事務所に移動するのにあわせて、新人を入れる事になっている。
それらの募集作業に彼女らを従事させる事が出来る。
(それと、うちらの宿舎作りも進めておくか)
今使ってる事務所も手狭になっている。
それを解消するために、早めに土地の確保をなどを開始しておこうと思った。
情報の入手は少しずつだが進めている。
それらをもとにして、次の段階に移動しようと思った。
一団として大きな金を使う初めての出来事になるだろう。
(俺達の事務所と宿舎か)
小さなものになるだろうが、それでも心躍るものがあった。
土地の確保と建物の建築。
これに必要な事を調べさせていく事を仕事に加えて女の子達を迎えていく。
一気に十人が増えた事務所はかなり手狭となってしまった。
それでも文章や計算を主に任せる事が出来るようになり、作業速度は大幅に増大する。
ここでも数は力である事がはっきりと伝わってくる。
おかげで野郎共に外回りをさせる事が出来るようになった。
体力的な問題もあるし、既に造り上げた社外との関係というのもある。
下手に新人に任せるわけにもいかない。
書類のお届けくらいのお使い的な作業ならともかく。
さすがに新人に重要事項を任せるわけにはいかなかった。
しかし、投入された新戦力の働きは大きく、事務所内の書類が速やかに整理されていく。
必要な書類は整理され、束ねられて戸棚に入り、お願いした計算や清書は即座に行われる。
様々な雑務が彼女達によって片付けられていった。
使える事務員というのがどれほど頼りになる存在なのかをあらわしている。
(あいつらもこうだったらなあ……)
かつて席を並べていた連中を思い出し、人知れず涙を流しそうになった。
事務所内における作業が進んで行くのを見て、ヒロノリも安心する。
作業も大分進むようになったので、しばらくモンスター退治に出向く事にした。
経営に関わる技術レベルを上げておきたかった。
この先何をどうすれば良いのか考えるためにも必要である。
二ヶ月ほどモンスターを相手に修行をして、レベルを一つはあげておきたかった。
新人達も入ってくるので、その教育も兼ねて近場のモンスター退治に出ていく事にする。
事務所の方は、退治が終わった後に寄って、決済印を押していく事になる。
内容の精査も必要だが、基本的にスタンプマシーンとなるだろう。
それが出来るくらいに仕事のやり方を事務員達も理解してきている。
作業手順を説明書にまとめてあるので、基本的な流れは新人にも伝える事が出来る。
足りない分は、随時作成するよう指示も出してある。
これから更に増えていくであろう人手を教育するためにも、出来る事はしていかねばならなかった。
(この娘達が嫁に出て行くまで頑張らんと)
女子を入れた当初の目的に立ち返ってそんな事を思った。
なお、いまだに野郎共との交際に発展してる様子はない。
簡単にお付き合いにまでは至らないようだった。
(見合いも考えておくかな)
この世界にそういったやり方があるか分からなかったが、意図的に出会いの場を作る事も考えていく。
催しなどをして、そこで一緒に活動させる、接点を作る事を想定していく。
それの準備も、仕事のうちにしておこうかと考えてしまった。




