転職33日目 布石になって欲しいと思って打ち出す一手
馬車による移動が開始され、戦闘に出向いてる者達の負担がかなり軽減された。
移動にとられていた時間と体力を軽減出来たのは大きい。
行動範囲が拡がったのもありがたい。
今まで足を向ける事が出来なかったモンスター出没地域まで出向けるようになる。
稼げる場所が増えた事で、人数が増えてもまだ対処出来るようになった。
行動範囲が拡がるという事は大きな利点だった。
犬頭の出没地域にまでは到達してないが、それでも十分に金と経験値が稼げる。
まだ暫くは、町から行ける範囲で稼げそうだった。
(でも、もっと先まで展開したいな)
自分達の行動範囲を考えてそう思いもする。
確かに余裕は出て来たが、それでも限界はいずれ訪れる。
町の周囲にだけ拘っていたら先が見えなくなる。
更なる活動拠点の拡大を狙うなら、もっと先へと動いていかねばならない。
(販売経路拡大も楽じゃないな)
営業をかけるにしても、拠点となる場所が必要だった。
その場で寝泊まりが出来るような、常駐型の拠点が。
自動車も電車もないこの世界では、ある程度離れた場所で活動するにはそうしなければならない。
(営業所、出張所……支社でないにしても、それくらいのもんは必要だな)
宿泊施設だけでも良いのだが、それを用意しなくてはならない。
もっと人数が増えて、活動範囲が拡がった時にはそうするしかない。
その為にも、今から準備をしておかねばならない。
「────とまあ、そんな事を考えてんだ」
それを事務員達に話す。
聞いてた者達は目を見開いた。
「本気でやるんですか?」
「凄い無茶を聞いた」
「出鱈目にも程があるかと」
さんざんな事を事務員達は口にする。
それをヒロノリは苦笑しながら聞く。
「まあ、そう思うだろうな。
俺だってそう思う。
けど、やろうと思ってるのは確かだ」
「はあ……」
「そうですか……」
「いやいや……」
あきれかえる事務員達は、否定的な反応を続ける。
だが、ヒロノリはくじけない。
これで躓いているようでは、ブラック企業では生きていけなかった。
「何も今すぐに始めるつもりはない。
けど、この先どうあっても必要になる。
だから、一応試算を出しておいて欲しい」
「試算?」
「そうだ。
これをやるとしたらどれだけ金と時間がかかるか。
それを調べておきたい。
大工とか木材問屋とか大工道具なんかも必要になるだろう。
そういう所に見積もりを出してもらってくれ」
「はあ……」
「それと、村の住民だった人も探しておいてくれ。
村の方に俺らが出張ってもいいかどうかを確かめて欲しい」
「わざわざですか?」
「そうだよ。
わざわざやるんだよ、これからのために」
そういってヒロノリは目的を書いた紙を渡した。
それとは別に、調べて欲しい事を書き出した紙も渡す。
「とりあえずこの目標達成に必要なものを調べて欲しい。
思いつく事はこっちの紙に書いたけど、もっと出てくるはずだ。
気づいた事があったら、それも調べておいてくれ」
「はあ……」
どうにも納得しかねる様子だったが、事務員達は受け取った。
仕事とあれば断るわけにもいかない。
とにかく言われた通りにやっていこうとしていた。
そうこうしているうちに、事務仕事に入って二ヶ月目になろうとしていた。
作業手順や書式などのやり方も固定化されてきた。
当初の予定通りに事務員として女連中を事務所に入れる。
それらに仕事のやり方を教えていくために、今暫く事務所に籠もる事になった。
それと入れ替わるように、戦力として集めた者達が新人としてモンスター退治に加わっていく。
基本的にそっちは男が受け持ってるのだが、事務員候補の男と、嫁さん候補の女も同じように加わっていた。
いずれもレベルアップが必要な者達ばかりである。
それらを育てていかねばならない。
特に事務員の方は早急に育てる必要がある。
先々の事を考えると手が全然足りない。
使える人間をどんどん増やしていかないといけない。
戦闘の方は手が足りているが、それでもまだまだ人手不足だった。
無理やりだが一話を出してみる。
これにて本日の営業は終了。
続きは明日という事で。
しかし、主人公のハーレム願望がいまだに達成される見込みがないという。




