転職31日目 今まで任せっきりだったのだから、こういう風にもなる
「それじゃ、今日からよろしく。
今までバラバラだった事をまとめていこう」
そう言って事務員達に声をかける。
先に作業に従事していた者達は「はい」と短く返事をしてくれた。
「それと、連れてきた新人達だが、一応ある程度レベルは上げてある。
事務経験はないが、多少はどうにかなるとは思う。
それでも実務との違いもあるだろうから、そこはしっかり教えていってくれ」
ヒロノリも実務としてこちらの世界で事務作業をしていたわけではない。
なので実務面については、どうしても先に仕事に従事していた者達に任せる事になってしまう。
とりあえず、一人を教育係に指名して、新人をその下につける。
やり方についてはそいつに任せる事にして、ヒロノリはその都度出てくる問題に指示を出す事にした。
しかしこれがとんでもなく大変な事になった。
何せ事務所としての仕事においてはまだ決まってない事が多い。
その為、どうしても質問が多くなる。
以前に比べればかなり問題は減ったと聞いているが、それでもひっきりなしに質問が飛んでくる。
また、今までやっていたであろうやり方にも幾つか問題があった。
そういう程大きなものではないが、ヒロノリの思い描いていたものとの相違がみられる。
気にするほど細かなものでは無いかもしれないが、後々大きな齟齬になるかもしれないと思うと無視も出来ない。
なので、そういった部分について聞いていく必要もあった。
事務員達も今までの経験などによって作業を進めていた部分もあり、それが細かな相違としてあらわれてるようだった。
彼等も悪気があったりしたわけではないので責めるつもりもない。
しかし、今後のやり方として多少の変更はしていく。
それがヒロノリ達の一団内部だけの事ならそこまでやる必要は無い。
しかし、周旋屋を始めとした外部とのやりとりが絡むならそうはいかない。
ちょっとした違いが大きな摩擦になりかねない。
こういった部分は外部の関係者に確認していかねばならない。
営業の時、こういう部分で苦労したので、決して疎かにするつもりはなかった。
その上で、必要がないなら今のままでいく。
変更しなければならないなら変える。
場合によっては、相手にやり方の変更を求めていく事にもなる。
さすがに相手が変更してくれるとは思わないが、一応言うだけ言う事にする。
駄目でもともと、上手くいけば儲けものなのだから。
なんだかんだで初日から色々と忙しくなってしまった。
新人達にやり方を教える必要もあったし、変更事項も結構ある。
外部への確認はまだやってないが、これから必要になってくる。
なおさなくてはならない所が色々と見つかってきた。
それが分かった事が収穫の一つではあるのだろう。
知らなければ、それがいずれ大きな問題になっていたかもしれないのだから。
そして、新人達。
基礎的な能力というか、技術はある。
一般教養に、事務、管理、会計といったものは幾つか身につけている。
まだレベル1であるが、それでも何も無いよりは良い。
一から全部教える必要がないのは大きい。
なのだが、やはり実務に入るとそれだけでは済まないのが分かってくる。
これもまた細かな部分であるのだが、新人が身につけてる基本的な部分と違う所が多い。
そこを埋めるのに時間がかかる。
また、そうしていく間にも変更されていく項目が増えるだろう。
ヒロノリがこれから訂正しようとしてる部分がそれだ。
下手に変更すれば、憶えた事をすぐに変更せねばならない事になる。
新人の負担は一気に跳ね上がるだろう。
(でも、やるしかないな)
間違ってる部分をそのままにしておくわけにはいかない。
確かに新人には大変だろうが、それを乗り越えてもらわないとどうしようもない。
まだ人数が少ないうちしか、大々的な変更は出来ないのだから。
これがより多くの人員を抱えるようになったら、一つの変更が全体に影響する大事になってしまう。
そうなる前に全てを変えていかねばならなかった。
(上手く出来るかな?
不安ではある。
だが、やっていくしかない。
今後、更に新人が入ってくる前に。
その前にある程度道筋をつけておきたかった。
(それだけの能力があればいいけど)
一番の不安要因は自分自身。
登録証に能力を表示させて現状を確かめながら考える。
【能力表示】
一般教養 レベル3
事務 レベル3
会計 レベル3
管理 レベル2
交渉 レベル3
心理 レベル3
【新規】経営 レベル1
運動 レベル2
肉体作業 レベル2
長距離移動 レベル3
刀剣 レベル1 → 2
盾 レベル2 → 4
【能力表示】
この能力で、本当に上手くやっていけるのか?
そんな疑問がどうしてもつきまとう。
せめて、経営の技術をもっと上げておきたい。
そうすればより効果的な運営が出来ると思えた。
その為にも、レベルを上げるためにモンスター退治に出かけたい。
(それだけの時間を捻出出来るようにしておかないと……)
そんな体制を作っていきたいものだった。
さて、どうにかして今日中にもう少し話を出していきたいところ。
うまく形にできればよいが。
そしてこんなのも書いてしまった。
俺って疲れてるんだなあ、と思った。
「転生トラック激走記」
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