表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第二決算期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/159

転職21日目 経営運営を考える 2

「──という事をやっていきたい」

 全員を集めての会議、というか申し伝えを締め括る。

 決定事項が有る場合、だいたい人を集めるのが常になっていた。

 その為に周旋屋の広間の一角を借り切って。

 数多くの作業員を抱える周旋屋には、食堂をかねる広間がある。

 基本的に食事の為に用いる場所であるが、座席に腰をかけていても文句を言われる事がない。

 ちょっとした打ち合わせやお喋りを楽しむのに使われている。

 場合によってはヒロノリ達がやってるように作戦会議などにも使われる。

 他に筒抜けなので重要な事は話せないが、そうでなければ割と何でも話して周囲に伝えられていく。

 それが場合によっては宣伝などになる事もあった。

 今回の場合、他の者達の耳に伝える必要があるものはないが、とりたてて隠しておく程の事でもない。

 なので広間で申し伝えをしていた。

 他に広い場所がないというのもある。

 三十人にふくらんだヒロノリの一団を収容出来る空間はなかなか存在しない。



「全員のレベルアップがどうしても必要だ。

 だから、これでやっていきたい」

 そう言ってヒロノリは全員を見渡した。

 諸手をあげての賛成というのもないが、盛大な反対もない。

 どちらかというと戸惑ってるといった調子である。

 ────言いたい事は分かるけど。

 ────上手くいくのか、それ。

 彼等の表情にはそんな感情が浮かんでいる。

 初めての事なのでこれまでの実績がない。

 だからこそ不安なのだろう。

 最初の一歩というのはそういうものだ。

「とりあえず、全員でやるってわけじゃない。

 俺達のところでやってみる。

 その結果を見てからまた考えよう」

 そういってヒロノリは一座を解散させる。

 残った者達は新しく提案されたやり方についてあれこれと語り始めていった。



 伝えた内容は主に二つだった。

 一つは、レベルの上がった者達は人数を減らして再編成する。

 今まで五人でやってきた事を四人でやる、といった調子だ。

 それほど人数が必要無い事から考えた措置である。

 負担は多少上がるが、レベルアップによって相殺される範囲であるので安全性はそれほど変わらない。

 それでいて、一人当たりの報酬が増える。

 全体的な効率を考えても、この方が有効だと考えられた。

 実際にやってる者達も、確かにレベルが上がってから随分と楽になったと感じていたので特に反発はない。



 二つ目は、新人達の教育についてである。

 今までは先に入った者だろうが、後からやってきた者だろうが関係なく組ませていた。

 レベルはほぼ横並び、というか誰も戦闘技術を持ってなかったからだ。

 しかし、既にそうでなくなっている。

 一つか二つの違いであってもレベルの差が出てきている。

 だからこそ組の編成を変えていこうとしている。

 当然ながら余剰の人員が出てくる。

 それらに新人と一緒に行動してもらいたかった。

 稼ぎは減るが、新人の安全が確保出来る。

 可能なら、レベルの高い者二人か三人に新人一人という編成で活動してもらいたいとも思った。

 そうすれば一回の戦闘における経験値が上がる。

 報酬の方は多少であるがレベルの高い者の分け前を増やす事を考えていた。

 レベルが違うのに、負担が違うのに同じ報酬というのは納得がいかないものだ。

 それもまた不公平であり平等に反する。

 人間、こういった事は結構気にするので、そこは相応の配慮をしておきたかった。



 おおまかに言えばこの二つである。

 いずれも今後の事を考えてのものだった。

 成長によって生じる成果と負担の管理。

 一人一人の差をどのように埋めていくか。

 何より、新しく入ってきた者達をどれだけ早く戦力に出来るか。

 特に新人の戦力化は重要である。

 より強力なモンスターを相手にしていく事を見据えて、確実に使える人間を増やしていきたかった。

 その為、可能な限り即席で育成していきたかった。

 新人育成の話をした所で、大半のものは顔をしかめた。

 何で自分達がそんな負担をしなくちゃならんのだ、という気持ちがありありと出ていた。

 しかし、レベルが上がってモンスターを倒しやすくなった事を基本にして説明をしていった。

 今後も楽にモンスターを倒せる体勢を作っておきたくないのかと問いかけた。

 言われて誰もが「あっ」という顔をした。

 確かにその通りである。

 使える人間がいればその分自分も楽が出来る。

 その為にも少しでも早く成長させる必要がある。

 疑問を抱いていた者達もそれで納得したようだった。



 それに、新人育成に付き合う事の利点もある。

 この先より多くの、より強力なモンスターを倒しにいく事になれば、当然死ぬ危険が高まる。

 しかし、新人と手頃なモンスターを相手にしてるなら、命の危険は限り無く低い。

 その安全性が新人と共に手頃なモンスターを倒す利点である。

 レベルアップに付き合ってるのは面倒ではあるが、安全安心と引き替えであるとすればそれほど悪いものでもない。

 何より、例え稼ぎが悪くなると言っても、余裕のある賃金にはなる。

 新人を入れて三人くらいでモンスターを倒していけば、一日あたりの収入は結構なものになる。

 仮に一日六十体くらいを倒すとして、一人当たり一銀貨四千銅貨になる。

 安全に稼げる範囲としては十分な金額だろう。

 世の中には儲けよりも安全安心を優先する者もいるし、そういう者にはうってつけと思えた。



 これらが思い通りにいくとは思わない。

 必ず問題が出るだろうから、それに対処していかねばならない。

 なのだが、それはこれからの事である。

 何もしないでこのまま何となく一緒にやってる、というだけで終わらすわけにはいかない。

 着実に確実に、今後の事を考えていかねばならない。

 勢いと惰性だけでやっていくのは前の世界だけで十分だった。

(絶対にブラックなんてさせねえ)

 ヒロノリ、固い決意を胸に未来へと向かっていく。

続きは明日に。

何時になるか分からんですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ