転職20日目 経営運営を考える 1
モンスター退治を続ける事で金と経験値が手に入る。
それは喜ばしい事だった。
新規で入ってくる者も増えてきており、一団の規模も拡大している。
おかげでモンスター退治の勢いも増しており、町はちょっとしたバブルが到来していた。
採取してくる核の数がこれまで以上なので、その分潤う事になっていた。
核の需要は大きい。
魔力を用いる様々な道具の燃料になる。
なので、あればあるだけ売れる。
基本的に消耗品なので、使えば無くなる。
無くなれば補充しなくてはならない。
供給が途絶えれば、それだけで魔力を用いていた道具や機具が止まる。
そうなったら産業の一部が止まる。
前の世界における石油や電気のようなものが、モンスターの核だった。
安定した数の確保は文明を維持する為にも必要だった。
だからこそ冒険者の仕事は無くならないと言える。
その為にも人員の確保は急務だった。
一定の数は絶対に必要になる。
それなりの数のモンスターを倒すにはそれなりの数の冒険者が必要だ。
その数はとりあえず集まった。
現在三十人ほどの人数になっている。
だが、人数が増えれば今度は格差が問題になる。
当たり前だが、全員のレベルは一定ではない。
先にモンスター退治を始めた者の方がレベルは高くなる。
その為、どうしても差が出て来る。
それが問題だった。
別に収入差や実力差を問題にしてるわけではない。
そんなもの出て来て当たり前だし、問題にする方がおかしい。
実力によって出て来た差ならば、それは当然のものとして認めていくしかない。
ヒロノリが問題にしてるのはそういう事ではなかった。
(レベルをもっと上げないとなあ……)
先の事を考えてるとどうしてもそれが出てくる。
新人達のレベルを上げないと先に進めない。
今でもそれなりに稼げてるので無理する必要は無いのだが、いずれは更に手をひろげていきたかった。
単純な稼ぎという問題だけではない。
流通の安定のためにもそれは必要になる。
モンスターの存在によって流通網は結構痛手を被っている。
モンスターがほとんど出ない国の内側ならともかく、モンスター出没地域に近い地域は常に被害に遭う。
その為、どうしても護衛を雇う必要があり、それが物価を上昇させてしまっている。
もっと酷い場合には、町や村の壊滅という事もある。
そうなった場合、復活する事はほとんどない。
モンスターが侵攻してきた場所を取り戻す事もあるが、その地域に人が戻ってかつての状態を取り戻すまでには時間がかかる。
逃げ延びた者達が村に戻っても、壊れた家屋や荒れた田畑がすぐに戻るわけではない。
また、襲撃の段階で死亡した者もいる。
逃げる途中で亡くなる者もいる。
人数だけを見ても、かつての規模に戻るには時間がかかる。
そういった地域には、比較的安全な地域で冷や飯食いの立場にいる者達が送り込まれるが、それでも簡単に回復するわけではない。
概ね十年ほどの時間がかかる。
失地回復は人類の悲願であるが、おいそれと出来るものではない。
そうならない為にもモンスターの脅威を退けていかねばならない。
冒険者の需要はこういう所にもある。
町や村の周辺でモンスターを倒す事で、こういった被害が減っていく。
その事で現状の維持が出来る。
また、行商人などの被害が減る事で、物資の損失もなくなる。
護衛の必要性が減れば、その分物価も下がる。
モンスターを倒す事でこういったものが間接的に手に入る。
他の誰のためでもない、自分達の為にもモンスターを倒していく必要があった。
その為にも人数の確保と同時にレベルの上昇も目指していかねばならない。
少ない人数でも難なくモンスターを倒せるように。
より強力なモンスターをも倒せるようになるために。
ただ、このレベル上げが簡単にいかない。
現状ではレベルを一つあげるのにだいたい三ヶ月かかる。
この世界ではかなり驚異的な早さらしいのだが、先の事を考えるとかかりすぎと言える。
それにこの調子だと、後から入ってきた者との差があまりにもつき過ぎる。
そんな者達をまとめて動かす事は出来ない。
強いが稼げるモンスターの所に低レベルの者達を放り込むわけいにはいかない。
かといって、楽に倒せるが稼ぎもそこそこのモンスターに高レベルの者をあてるわけにもいかない。
適材適所を考えれば、レベルに合わせたモンスターを相手にするのが妥当だ。
なので、ある程度のレベルごとに組み合わせを考えていかねばならない。
そうなると、どうしても高レベルの人間が少なくなる。
どうにかしてこれを解消したかった。
なるべく早く高レベルの人間を確保するために。
やはり能力の高い人間が揃っているとやれる事が増える。
人数は当然必要だが、それだけではどうにもならない場面もあるのだ。
(レベル上げをしていかなくちゃならんか)
かつてのやってたゲームを思い出す。
先に進む為にキャラクターを強化していた事を。
RPGなどでは、高いレベルの職業に転職するためにひたすら経験値を稼いでいたものだ。
それと同じ事をこの世界でもしていく事になる。
(教育だな、これは)
かなりスパルタ方式になるが、それでもレベル上げに尽力する必要がある。、
全ては人材確保のためだ。
その為の手段も考えていく。
(こうすると、こうなるか?
でも、これだとこうなるし……)
考えを紙に書き出し、あれこれと考える。
なかなか良い結果が出ないが、辛抱強く答えを求めていった。
21:00に続きを出す予定。
それと、思いつきをまた短編で出すつもりでいます。
いつになるか分からんけど。




