転職16日目 手応えはあったようで、入社希望者が出てきた
事前の説明会をやるというのは結構驚かれた。
どうもこの世界にはそういったものが無かったようだ。
一緒に組む事が決まってから仕事の説明をしていく事は当然だが、入る前に仕事の説明というのは前代未聞なようだった。
広い世界のどこかでは既に行われているかもしれないが、この近隣では初めてらしい。
記念すべき第一歩と言えるかもしれなかった。
また、効果も結構あったように思えた。
────どのあたりでモンスター退治をやるのか。
────どんなモンスターと戦う事になるのか。
────求められる技術とレベルはどれくらいなのか。
こういった事が事前に分かるという事で、意外と顔を出す者が多い。
普通、一団に入らなくては教えてくれないような事である。
入れば知る事は出来るが、そのために判断材料が少なくなってしまう。
特に秘密にしなければならないようなものでもないのだが、長年の習慣なのか最低限の情報すら外に出してない事が多い。
ヒロノリがやったのは、それらを開示する事だけだった。
一団に入っていれば当たり前のように受け取れる情報を提示する。
これがどこにも所属してない者達にとっては大きかった。
何よりも、入ろうが入るまいが、とにかく説明をするというのが斬新だったようである。
普通は、教えたからには絶対に入るという事になるようだ。
強制力はないが、雰囲気としてそうなってしまうらしい。
説明会においてはそんな事全く取り合わないようにしていた。
最終的に判断をするのは当事者なので、ヒロノリの方から強制は出来ない。
それに、強制して来た連中などおそらく戦力にならない。
やる気の違いというのが出て来る。
なので、説明を聞いて、それで入ってくる者が出るのを期待する事にした。
説明会に参加したのは三十人ほどだった。
いずれも周旋屋に登録している者達である。
周旋屋の呼びかけで集まった者達なので、自然と周旋屋の中にいる者達に限定される。
その大半がモンスター退治に出た事がない作業員達だった。
やる気がある者もいるが、大半は様子見のつもりでの参加のようだった。
モンスター退治の内容や実際がどんなものかを知りたい、という好奇心が理由の大半である。
意外と興味を持ってる者は多いようだった。
ひやかしもいるだろうが、それでも結構な人数である。
モンスター退治の実際がどういうものかを知りたいと思ってのことらしかった。
自分に出来るかどうかを確かめに来てる者もいる。
そんな彼等の気持ちも分かる。
一般的な作業の賃金はせいぜい銅貨四千枚くらいである。
まともにモンスター退治に出ればその二倍くらいはいく。
危険なのは分かってるが一攫千金を狙う手段なのがモンスター退治だった。
だからこそ、機会があれば挑戦しようという気持ちは誰にもあったようだ。
しかしモンスターとの戦闘がどれほど危険なのか分からないので二の足を踏んでる者が多い。
何より、技術レベルが足りなくて既存の一団に入れないという理由がやはり大きい。
それを踏まえてヒロノリは参加資格をかなり緩和していた。
全くの無条件という事は無いが、技術レベルの制限は無くしている。
それを見て興味を持った者が多いようだった。
説明はそれほど長くはかからなかった。
作業内容は分かりきってるし、やってる事を説明するにもそれほど手間はかからない。
モンスターとの戦闘も、必要な人数とレベルについて説明はするが、微に入り細を穿って説明するほどでもない。
何せ、一人が引きつけてる間に、周囲を取り囲んでひたすらに叩き切るだけなのだから。
そこに技巧や戦術といった要素が入る余地はほとんどない。
引きつけてる間に囲むというのが戦術や戦法と言えるかもしれないが、あまりにも大雑把過ぎてそういう気にはなれない。
しかしこんな事でもモンスター退治について詳しく知らない者達には新鮮だったようだ。
やり方は聞いていても、実際にやってる者の発言だというのも大きいかも知れない。
何事も経験者や熟練者の発言というのは大きい。
参加者達はヒロノリから視線を逸らす事なく話を聞き続けていた。
加えて参加条件と一団に入ってからの流れを説明していった。
まず、必要な装備は自分で揃える事。
武器と防具について、最低限自分で用意する事を求めた。
その為に金を稼いで貯金して、という計画性が求められる。
どうしても一ヶ月や二ヶ月かかってしまうが、それが出来ない者を参加させるつもりはなかった。
ブラック企業の周囲の人間にも言えた事がだが、たいてい貯金が出来てない。
欲望に負けて使っていく者がほとんどだった。
酒にタバコに博打とはまってるものに際限無く金を使おうとする。
それらが悪くないにしても、使う限度を考えない者が多かった。
悪い意味で宵越しの銭を持たないでいる。
それが出来るのは、スッカラカンになっても翌日の仕事で確実に金が入るからであると聞く。
入ってくる宛があるからこその行動で、そうでないのならばそれなりに考えていかねばなるまい。
そういう状況では無いのならば、それに合わせて金は使わねばならない。
それが出来ないでいるから、給料日前に悲惨な事になる。
ましてブラック企業である。
給料が上がる事などありえないのだから、手持ちを如何に使うか考えるべきであろう。
最低限の自制心と計画性すらもってないから誰もが悲惨な事になっていた。
それと同じで、自分で装備を揃える事も出来ないほどの人間なら話にならない。
入ってきてもかならず迷惑の原因となるだろうと思えた。
なので、採用条件として装備の自力での購入をつけていた。
稼ぎが少ない中で貯金をするのは大変だが、それでもやってもらうしかない。
一日の手取りが四千から五千銅貨なら一日一千銅貨くらいは確保出来る。
一ヶ月あれば銀貨の一枚二枚くらい蓄える事が出来る。
それだけあれば山刀を手に入れる事が出来るから、一応条件を満たすことが出来る。
まずはこれを目標にしてもらう事にした。
それをこなしてからモンスター退治に入るにあたってだが、これはまずは町の周囲の堀を巡る事から始める。
しっかりとした装備を揃えなくても、堀の小型モンスターくらいなら倒せる。
それらを倒してモンスターに慣れてもらうつもりだった。
難しくはないが、それでも度胸は求められる。
それをまずは確かめねばならない。
また、こちらの言う通りにどれだけ動くかを見極めねばならなかった。
他にも、一緒に行動する事でいくらか人間性を見極めようとも思っていた。
それを一週間から二週間ほどやって人間を見極めてから、町の外に出て本格的なモンスター退治に入る。
その流れでやっていく事を説明し、説明会は終わった。
ヒロノリからの説明が終わると、今度は何人かが質問をしに来た。
内容は他愛のないものがほとんどだったが、参加に前向きなのは伝わってきた。
それでも来ない者は今後も絶対に来ないだろうが、意欲がある者がいるというのはありがたい。
また、それらの発言から、既に武器や防具を持ってる者がいるのも分かった。
モンスター退治に向かおうと何とか用意したは良いが、仲間が見つからずに埃をかぶってるという。
そんな者が三人ほどいて、それらは即座に参加が可能だという。
ならば翌日から堀を回っていこうという話になった。
最低でも欲しかった五人という人数は割り込んでるが、こればかりは仕方ない。
今後参加してくれる者達が出てくれる事を願うのみである。
だが、即戦力になりそうな者を確保出来た。
人員の拡張は割と順調に進みそうである。
さーて、続きが今日中に出せるかどうか。
出せたらいいな、出したいなー。
上手く言ったら、18:00に続きが出るかと。
出なかったらごめん。




