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転職155日目 次世代育成計画24

「そんじゃ、こっちに来るのはまだ先って事ですか?」

「残念だけどね」

 モンスター退治のためにやってきた拠点でそんな話を仲間としていく。

「家もまだ建ててないし、暫く時間は必要なのは確かだしね」

「大変なんですね、団長でも」

「団長だからって何でも思うようにはいかないよ」

 ままならないものである。

「でも、そのうちこっちに移ってくる事になるだろうから、準備はすすめていかないとね」

 それがいつになるかは分からないが、確実にそうなると考えている。

 子供の手が本当にかからなくなってからになるだろうが。

「こっちも賑やかになってるし、呼び寄せても問題なくなってきてるしね」

 開拓地の発展と共に、ヒロノリ達が作った拠点周辺も人が集まるようになっている。

 大半が、そこを起点とした活動の為であるが、その為の設備も作られてきている。

 宿舎などは独自の商売として始めた者もいる。

 一団が動くより早く、冒険者達の動きにあわせてやっているようだった。

 上手くいくかどうかは分からないが、その心意気はすばらしいと思う。

 そういった所を見ても発展は少しずつ始まっていってるようだった。

「我が家も、早くこっちに来れればいいけど」

 それについてはあと数年は待たねばならないだろう。

 商売人達ほどの素早さは期待出来ない。



 開拓地の発展も続いている。

 水路建設が終わった地域は田畑がひろがり、今や収穫を得られる程になっている。

 ヒロノリ達の拠点はいまだに北部への最前線のようなものになってるが、その近隣近くまで田畑が迫ってきてもいる。

 それらを守る為の防備の建設も止まる事なく続いていた。

 前線は北に向けて大きく前進し、活動拠点の進出も進んでいる。

 やがてヒロノリ達の拠点も安全地帯の中におさまる事になるだろう。



 小鬼達の駆逐も進み、大分奥地にいる集落すらも壊滅させている。

 それに伴い、小鬼達の動きにも変化が見られるようになった。

 今まで以上に団結して行動するようになっており、集団の規模も拡大している。

 純然たる戦闘部隊の姿も見られるようになった。

 今まではいくつかの世帯を中心とした生活集団と言うべきものだったのだが、今はそれはない。

 進出してくる者達は戦闘仕様になっており、その中に子供や老人の姿は見えない。

 開拓地方面が彼等にとっての国境であると小鬼も考えてるのかもしれない。

 今までにない事が起こりそうになっている。

 急ぎ小鬼のいる方面への対策をたてていかねばならなくなっている。

 現在の人口と動かせる戦力では出来る事が限られているが。

 それでも、小鬼との衝突は断続的に発生している。

 いつしか本格的な戦争になる予感をはらみながら。



 その為に必要な物資である鉄などの金属の採取も始まりつつある。

 鉱山へと伸びた拠点は、目的地についに到達し、必要な施設を建造する事が出来た。

 これにより採掘を始める事が出来るようになり、鉱山方面も活気づいている。

 採掘結果はまだ小さなものだが、やがてはそれなりの産出量を見せてくれるだろうと期待されている。

 順調にいけば、武装なども充実する事になるだろう。

 その前に生活用品などが先であるが、それらもまた開拓地の繁栄を促していく。

 外部からの輸入に頼るしかなかった状況が確実に変わった。

 また一つ、一団と開拓地は自分達で調達出来る物を手に入れた。

 ただ、あてがう事が出来る人数が少ないので大がかりなものにはなっていない。

 鉱石から鉄などを取り出すための設備と人数も足りてない。

 人を連れてくるのが難しくなっているのは変わる事はなく、こればかりは早急に解決する事が出来ないでいる。

 必要な技術を持った人間を育てるのも大変なので、当分は慢性的な人手不足が続くだろう。

 モンスター退治を利用した技術者養成はしているが、それでも需要に供給が追いついてない。

 冒険者からの転職も待ってはいるが、大幅な増加は期待できそうもなかった。

 小鬼との衝突もあるので、おいそれと冒険者を引退されるわけにはいかないという事情もある。

 様々な分野で人員の不足が目立っていた。



 それでも人口そのものは順調に増加していっている。

 外部からの流入もあるが、開拓地で生まれた子供達が増加していっている。

 彼等が働きに出る事になれば人手不足も幾らか落ち着くだろう。

 ある程度緩和されるだけで、問題解決にはほど遠いだろうが。

 過不足無く人が行き渡る事の方が希であろうが、許容範囲に問題がおさまるのはまだまだ先だ。

 冒険者に鉱山だけではない。

 農耕に牧畜、土木作業に建築、大小様々な道具の作成、物資の運搬などなど。

 必要最低限の仕事や職を満たしてるとは言い難い状態である。

 人口があと数千人、いや数万人だろうか。

 それくらい増加すれば社会としての体裁もととのうかもしれない。

 今の人口からだと夢物語のような規模だ。

 だが、成し遂げなければこの開拓地の自立はない。



(まだまだ国とくっついてないとやってけないしなあ……)

 独立自立を求めて活動してきたが、まだまだ遠い。

 成し遂げた事もあるが、足りないところばかりが目に付く。

 思い描く理想にはまだ遠い。

 それでも、やり遂げた成果に満足するべきなのだろう。

 普通なら決して為しえないほどの大きな偉業なのだから。



 モンスターを押しのけて作った町────



 それだけで十分大きな成果である。

 また、国のほうの拠点もモンスターを遮る防波堤として立派に機能している。

 そちらもまた、なかなか為しえない偉業である。

 それを両方為しえたのだから、功績としてみとめられてもおかしくはない。

 あとはこれらが今後も長く続くよう願うばかりだ。

 こればかりはヒロノリでもどうしようもない。

 生きてる間はともかく、死んでしまったらどうしようもないのだから。

 この世界に来て二十年が経とうとしている。

 もうお迎えを考える時期になってきた。

 だからであろうか、死んだ後にここがどうなるのかを考える事が多くなってきた。

 それまでに何が出来るのかも含めて。

 細かな事は色々あるだろうが、大きな仕事はさすがに出来そうもない。

 ある程度布石をうっておくにしても、実施するのは埋葬された後になるかもしれない。

 少なくとも、実行した何かが結果を出すまで生きていられるとは思えない。

 あと少しだけがんばりたいとは思うが、もう引退や隠居を考える頃合いなのだ。

「俺の代じゃここまでかな」

 少し寂しく思いながら呟く。

 だが、決して後悔は無い。

本日より新しい話を始めました。


「捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった」

http://ncode.syosetu.com/n7019ee/


興味があったらよろしく。

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