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転職151日目 次世代育成計画20

 人がいないから規模の拡大はこれ以上は難しい。

 その現実にぶつかった一団であるが、それなら設備だけでも先に作っておこう、という事になった。

 人がいないから出来ない事もあるが、人が来るようになってから準備をしていったら間に合わない。

 今の人数で出来る所までものを作っておいて、あとは人がきたらそこに割り当てられるようにしていく。

 施設も設備も充実してるにこしたことはない。

 開拓地も人口が増えてる事だし、就労年齢になった子供達が活動する場所も必要だ。

 今すぐの拡大は諦めるしかないが、再び拡大が始まったときに円滑に物事が進むようにしておく事にした。

 そうでなくてもまだまだ色々足りない状態である。

 生活水準は確かに向上してるが、国の方に比べれば色々と不足している。

 生活出来る場所を作るという事の難しさを思い知る毎日である。



 見た目の豪華さは二の次、まずはちゃんと住める事。

 それを念頭に拠点を、集落を作っている。

 しかしやってみると、それだけの事が難しい。

 低所得層、いわゆる貧民街よりはマシであるが、どうしても何かが足りない状態になってしまう。

 そこを改善していくだけでも十分に意義がある。

 人が住める所を、それも快適に過ごせる場所を作るというのは無駄ではない。

 将来への布石も含めて、やっていく価値はある。



「とはいえ、さすがにこれは予想外だった」

 人手不足はしょうがないとは思うが、それがこうも早くやってくるとは思わなかった。

 まだまだ人は集められると思っていたのだが、世の中ままならない。

 鉱山がなければ、その目論見は間違ってもいなかっただろうが。

 それは一団の会議に出て来ている面々も同じである。

「鉱山から資源が流れてきてるから、それはそれで良い事ですけどね」

 おかげで必要な物資が手に入っている。

 確かに悪い事ではない。

 出費もそれ相応であるが。

 それでも原料入手に苦労するよりは良い。

「手に入れた鉄をすぐに職人が加工するし、物資調達についてはさほど問題はないですからね」

「鉱山に人手が取られるのは仕方ないですよ」

「あちらの方も集落とかが出来てるっていうし。

 当分は人がそっちに流れるんじゃないですかね」

 鉱山夫や資源を買い付ける商人などを相手にする商売が拡大し、それが更に人を呼び、今や町が一つ出来上がる程になっている。

 冒険者も当然ながら相手にしており、国の拠点周辺はかなりの活気を示している。

 それこそ拠点拡大のように集落が増えていっている。

 拡大した集落が合流していく事すらあるらしい。

 それだけ人が流れこみ、住処を作っているのだろう。



 国も新しく出来た居住可能地域を無駄にしておくつもりはないらしい。

 冒険者が更なる獲物を求めて最前線に出向いた後に残った場所を再開発していっている。

 雑草生い茂る平野が田畑に変わり、かつての拠点が当面の住処になっている。

 そういった場所を一団はそれなりに適切な値段で売却し、活動資金にあてていた。

 居場所は減っていったが、最前線が移動していくにつれて、不要な施設の出てくる。

 それらを多少は値段がついた状態で売れるのだから、これほどありがたい事は無い。

 最前線の方にも拠点を作らねばならないし、その資金も必要になる。

 不要になったものがその為の資金源になるなら、ありがたく譲り渡しもする。

 横取りされるよりはずっとマシだった。



 ただ、冒険者の数そのものはそれほど増加もしていない。

 その為、最前線が移動する事もなくなっていた。

 これ以上は人が増えない限りは無理である。

 下手に拡大すれば、前線に穴が空く。

 そうなれば、背後にある集落や町にモンスターが接近する事になる。

 冒険者が防衛などを考える必要はないのだが、彼等も人間としての善意を失ってるわけではない。

 無碍に人が危機にさらされるのを放置する事は出来なかった。

 たとて善意でなくても、人が集まってる場所を守る理由はある。

 集落や町が壊滅すれば、そこを利用してる冒険者も不便を強いられる。

 そんな打算的、利害関係的な事が理由である場合もある。

 いずれにせよ、前線でモンスターを食い止める事に変わりはない。

 これ以上拡大出来ないながらも、彼等は今の場所でモンスターを食い止める努力を怠りはしない。

 何よりも生活のためである。

 モンスターを倒して核を手に入れ金に換える。

 そうやって生きてる以上、モンスターとの戦いを疎かには出来なかった。



 ただ、何にしても人である。

 これがいないと話にならない。

 レベルが上がって一人当たりの作業効率が上がっても、やはり人数は必要になる。

 様々な物資もそうだが、人材という資源もやはり必要になる。

 それが手に入らない以上、活動は現在の規模を保つしかなかった。



(もう次の世代が出るのを待つしかないのかねえ)

 そんな事を、ふと考えた。

 遅かれ早かれやってくる世代交代の兆しなのかもしれないと。

(まだもうちょっと現役で頑張らないといかんけど)

 次の世代が出て来るまでの期間は踏ん張らねばならなかった。

 ヒロノリの場合、子供がまだ本当に子供の年齢なのでなおさらである。

(こいつらが成長するまで、頑張っていければいいけど)

 年齢的に厳しいが、一家の大黒柱として踏ん張らねばならなかった。

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