転職149日目 次世代育成計画18
方針が策定されていく中で、一団がどうあるべきかも浮き彫りになっていく。
今まで何となく感じていた事が、話し合いの中で形になっていく。
それが会議ではっきりしていき、日々の仕事にも影響を与えていく。
全員、仕事で優先順位をつけねばならない事や、作業の承認や否決を比較的短時間で出せるようになっていった。
何をすべきかが、方針策定の会議で見えてきた為だろう。
開拓地全体でその違いがはっきりと分かる事はないが、細かい所で、そして仕事の集大成が出た時にその違いがはっきりしていく。
少なくとも幹部がはっきりとするべき事や進む方向を理解した事で、全体の効率は変わっていった。
おかげでヒロノリも仲間との行動や建設してる拠点の方に集中出来る。
やる事は変わらないが、一団のほうを気にかけずに済むのはありがたい。
敷地の拡大も終わり、宿舎の建設にも入っている。
早ければ三ヶ月ほどである程度の人数が寝泊まり出来るようになる。
更に何ヶ月かすれば、新人を増やす事も出来る。
そうなれば稼ぎも更に拡大する。
拠点も更に巨大化出来る。
ついでに、拠点をこれからの出発点に出来るようにもはかっていきたかった。
通常のモンスター退治にしても、周辺地域の探索にしても、小鬼との戦争にしても、今はヒロノリ達の拠点が最前線である。
一団や開拓地全体に関わってくる事でもあるので、仲間の了承をとりつけておきたかった。
更に拠点が拡大してからになるにしても。
「まあ、それは構わないですけど」
「他の冒険者がいた方が安全にもなるし」
「寝床を早く増やさないといけないですけどね」
意外とすんなりと話は通っていく。
「でも、俺らが引っ越してからって事にしてもらいたいですね」
「他の奴らが我が物顔……とかになるのも嫌なんで」
「俺らが身銭を切ってるんだしな」
譲れない一線もしっかりと引かれる。
却下する理由は無い。
「もちろんそうするよ。
それに、なんだかんだでもっと先の事になるだろうし。
本格的に話が進むのは、水路とかが出来上がってからになるだろうし」
「それからこっちの方に出て来るって事ですか」
「でないと余裕がないからな」
概ね順調に進んでるとはいえ、時間のかかる事である。
それが片付かねば他の事に手を回せない。
「そんだけ時間があるって考えてもいんですかねえ」
「そう思っておいた方がいいかもな。
その間に俺らの居場所を作っちまおう」
居場所、その言葉に皆が様々な反応を示していく。
「居場所か」
「俺らのね」
「そうだよな、俺らのだよな」
「やってるんだな、俺達」
家を建てて田畑を手に入れるのとは違った高揚をおぼえていく。
自分だけの居場所ではない。
自分達の居場所である。
興奮せずにはいられない。
「早く作り上げたいね」
「慌てて怪我したら元も子もねえがな」
「なに、モンスターを倒しまくりゃいいだけだ。
俺らならどうとでもなる」
「新人も腕を上げてきたことだし」
言われた新人達が驚きつつも胸を張る。
彼等もすでにレベル5程度まで腕をあげている。
ここでもう一踏ん張りして更なる高見にのぼれば、より一層モンスターを簡単に倒せるようになる。
あと数ヶ月もすればその段階に到達するだろう。
その頃には拠点も大分整備されてるはずだ。
いよいよもって、拠点を中心とした活動が始まる。
(それでも、なんだかんだで一年はかかるかな)
何が起こるか分からないので、それくらいの余裕はみておく。
想定もしてない出来事によって進行が頓挫する事など当たり前に発生する。
なんだかんだでそれくらいの幅はもたせた方が無難である。
とりあえず、その辺りを目処にして新人を入れられるように考えていく。
今の新人もレベルが上がり、その頃には十分戦力となってくれてるだろう。
元からいるベテラン連中と美味く組み合わせて新人と混ぜればかなり良い所までいきそうだった。
(組も四つ五つに分けられそうだし。
稼ぎの幅もかなり増やせるな)
それぞれの組を交代させる事で休息も取りやすくなる。
一人一人の負担も減少させていく事が出来る。
それまでは負担も大きいが、今の面子で活動を続けていく事になる。
(まあ、そろそろ組を更に分けてもいいかもしれないけど)
新人のレベルが上がってきたので、二組に分けてるのを三組にしても良い頃かもしれなかった。
安全性を考えれば、人数を多めにしておきたいものだが。
危険は極力減らしたいが、技量があがればそれだけで危険は減る。
稼ぎを求めていっても良い時期にはなってきてるかもしれなかった。
まだもうちょっとこのままで行くべきかもしれなかったが。
(どうすっかな)
こういった時にどうすべきか。
方針が欲しいところである。
残念ながら、適切な分配などは自分で見つけねばならない。
命がけになる作業なので迂闊な事は出来ないが。
(攻略サイトでもありゃいいんだけど)
ここには無い、かつてあったものが懐かしい。




