転職148日目 次世代育成計画17
何はともあれ一団の方針が策定されはじめていく。
これがうまくいくかどうかは分からないが、今後の活動においては方向性を得た。
瞑想する事があっても目指すべき方向は示されている。
もちろん今後の運用の中で様々な迷走があるだろう。
実際に運用する上で現実との齟齬が発生する事もある。
だとしても、最終的に何をどうするべきかは分かっていれば軌道修正もしやすくなるだろう。
ただ、ヒロノリの出した方針案だけではあまりにもすくな過ぎる。
確かに方向性は出されてるが、これだけではどうしようもない。
具体的な部分も多少は必要なので、その肉付けがされていく。
各部署と部署の責任者はどうするのか?
活動計画の策定方法はどうするのか?
一団は冒険者のために何をどこまでやるのか?
これらを含め、基本方針としていくべきは何で、付随する細則やその都度の計画として扱うべきは何なのか?
それらが会議の中で出てくる。
さすがに一回だけで決められないものであるが、それでも集まった者達はあれこれと考えを出していった。
「まあ、俺らだけでやってても仕方ない事ではあるか」
白熱し、熱暴走の果てに思考停止に陥りそうになっていくところで区切りを入れる。
「とりあえず基本案だけでも掲示板に貼りだしておこうと思う。
周知だけでもしておきたいから」
「ですね」
「いきなり打ち出しても戸惑うだけですし」
「でも、もっと細かな草案などはどうするんですか?」
「そのうち出すよ。
ここである程度形になってから」
そう言ったところで少し考える。
確かにある程度固まってから出すべきであろう。
だが、完成形や試案を出すだけで良いのかとも思う。
ある程度の途中経過も含めて貼りだしておいても良いのではないかと思った。
追加されるにしろ削除されるにしろ、途中で何がどうなっていったのかを示すのも一つの方法のはずだ。
「……でも、今ここで出したものを提示しても良いかも」
「はい?」
「とりあえず、今出て来たものも書きだしてくれ。
それも掲示板に貼り付ける」
多少の驚きはあったものの、ヒロノリの提案はそのまま承諾された。
出て来た案もふくめて掲示板に張り出されていく。
開拓地内の各地でそれを多くの者が目にしていく。
気にとめるものはほとんどいなかったが、何かしら動きがあるのだと誰もが意識はしていった。
そして、多少なりとも慧眼の者は、それを興味深く見つめていった。
それが何を意味するのかまで理解した者は更に少ないが、これから先において一団が変わっていくのを感じていく。
どんな形になっていくのかまでははっきりしなくても、これがこれからを示す何かであると。
まずは、一団がどんな形で運営されてるのか、何を求め、何を提示しているのかは把握する。
これまでもそうであったように、書き出された事が一団の活動方式であると。
自由気ままな冒険者に、ある程度の規律を求めるものだと。
極端な束縛はないが、最低限の要求がなされたともとれる。
同時に、一団すらもこの規律に則って活動していくという宣言でもあった。
だからこそ気づいた者はそれをじっと見つめていった。
いずれ自分達にもそれが関わってくると分かったから。
(さて、どうなるやら)
今までの活動を縛り上げないよう、自分達の行動の助けになるようなものである事を願わずにはいられない。
(これを読む限りじゃ、そんなに心配なさそうだけど)
そこに安心をしつつ、今後の成り行きが気になった。
今はともかく、この先どうなるか分からないのだから。




