転職145日目 次世代育成計画14
引っ越しについて懸念は他にもある。
周囲に蔓延るモンスターが問題だった。
小鬼の集団については特に危惧を抱いている。
なんだかんだで集団で行動している連中なので不注意な接触は避けたい。
なのだが、現在の状況では最前線になってしまうヒロノリ達の拠点である。
いつ襲撃を受けてもおかしくない。
そんな懸念を排除するためにも、規模の拡大と防備の堅牢化は必須である。
そこまでしなくてはならない場所に家族をつれていく事にも抵抗がある。
これもあって家族の引っ越しには踏ん切りがつかなかった。
いずれ最前線を更に北に押していき、安全地帯を確保していけば解決はする。
しかしそれもまた時間のかかる事である。
まだまだ先の話であり、現実となるのがいつになるのか予想がしがたいものがあった。
それでも拠点を開拓地の中心にしていく……その考えに変わりはない。
今すぐではなく、いずれそのうちという気の長い話だが、覆すつもりはない。
それまでには安全圏を確保し、気兼ねなく引っ越しが出来るようにしておきたかった。
(そうなるとなあ……)
小鬼の駆逐は絶対に必要になる。
少なくとも、あちらが手を出してこないようにしておかねばならない。
(こっちから仕掛けるか)
相手がやってくるのを待つのでは主導権をとれない。
安全圏を確保するには、常にこちらが手綱を握ってる必要がある。
それに、こちらの領域に入ってくるのを待っていたら、安全圏の確保にならない。
出向ける限界はあるが、出来るならこちらの領域の外で対処をしておきたい。
その為にも、遠征が必要になる。
未踏地の調査は現在も続行され、モンスターの分布などの把握はなされている。
同時に小鬼など脅威となる文明的モンスターなどの発見にも尽力している。
実際に発見した集落や集団なども存在している。
今のところ直接接触するほどの距離ではないので問題視はされてない。
兵力の都合もつかないので放置するしかない状態になっている。
だが、このままというわけにもいかない。
もし更なる増援がやってきてしまったら、小鬼達の勢力拡大を許す事になる。
(早め早めに潰しておかないと)
拡大する以上の早さで集落を壊滅させていく。
そうやって小鬼の活動範囲を縮小させていく。
そうやって空いた場所に一団が踏み込み、場所を取る。
生存競争としてこれをやるしかなかった。
もうそれをやるかやらないかなどと悩んでるわけにはいかない。
やらねばいずれ滅亡する。
考えねばならないのは、いつやるのか、という事だけである。
やり方を考えねばならなくなる。
現状では多くの人員を割く事は出来ない。
嫌でも少数精鋭で事を解決するしかなくなる。
そうなると、高レベルの冒険者を繰り出すしかなくなる。
強力な戦闘力を誇る彼等が五十人も集まれば、十倍くらいの規模の集団を壊滅させる事も難しくはない。
小鬼の集団も全員が戦闘員ではないから出来る事である。
もちろん人数というのはちょっとした戦闘力の差を埋める事は出来るが、隔絶した能力を覆す事は難しい。
発見された小鬼の集団への対策として、高レベルの冒険者集団の派遣は絶対の条件だった。
地域の防衛も考えねばならない。
小鬼が入ってこれないよう、入ってきてもすぐに対処が出来るようにしておきたい。
そうなると、出城としての活動拠点が必要になる。
何の事はない、いつもやってるモンスター退治と同じだ。
最前線に出向くための活動拠点が必要になる。
遠出のための拠点であり、モンスターの侵入を防ぐ防備でもある。
それもまたすぐに設置出来るものではない。
時間をかけて少しずつ開拓地から遠くに向けて展開していかねばならない。
(なら、いっそ)
開拓地を拡大するにはより多くの時間がかかる。
だが、拠点展開だけならそうでもない。
どのみち必要なら、それだけでも作っていく事を考える。
小鬼退治が主な目的になるだろうが、今後の事も考えて配置していけないかとも思う。
いずれ開拓していく事になる場所を守るように配置し、今後の発展の助けになるように。
また、拠点を中継地点にした街道になるようにしていけないかとも。
目指すはかつての鉱山。
いまだに手に入れる事が出来ないそれに至れるように。
(また金がかかるな)
そういった事業は一団のほうで行う事になる。
資金的な余裕はヒロノリ達よりはあるが、それでも大きな出費である。
開拓地の整備もあるので、すぐにどうにか出来るものでもない。
(長期計画でねじこむしかないかな)
大規模な展開はそうしていくしかない。
何年かすればそれだけの事も出来るようになる。
(それまでは、俺らの場所を使ってくかね)
現時点で北に食い込んでる場所はそこだけである。
活動拠点として使うならそこが最適ではあった。
仲間の承諾を得ないといけないが。




