転職137日目 次世代育成計画6
女房というモンスターよりも抗いがたい存在からの許諾を、どうにかこうにか手に入れた。
あとは実績を出すだけである。
ヒロノリ達としても自分達の実力と成果がどんなものなのかを知る機会にもなる。
無理はしない範囲でモンスター退治に精を出す事とした。
その為、効率を極力優先する。
モンスターの出没地域などをもとに可能な限り上手に成果をあげられるように考えていく。
戦闘だけがモンスター退治ではない。
モンスターの行動や活動範囲から最適化した動きを模索し、最も被害と労力を少なく、最も成果をあげられる方法を探していく。
その為の最適化が常に求められる。
モンスターとていつも同じように行動するとは限らない。
今までと同じ事を繰り返す場合が多いが、時にそこから逸脱した動きを見せる事もある。
それでも大雑把なやり方は変わらない。
ある程度定型化した手法というのを確立するのは最善の方法の一つである。
一度確立すれば次からの成果は格段に上がる。
成果そのものは変わらなくても、労力は少なくて済むようになる。
これまでの結果という情報と近辺の地図をもとにその方法を求めていく。
より多くの核を手に入れるために。
何度か派遣してる調査隊(兼遠征稼ぎ隊)によって判明した情報が大変役にたった。
それをもとにして近隣で稼げる場所を探していく。
遠出は出来ないが、出来るだけ近隣で稼げる所を探していく。
仲間の邪魔をしない範囲で。
幾ら稼ぎたいからと言って他の者達が頑張ってる地域で乱獲すると迷惑になる。
そうならないよう、出来るだけ活動範囲が重ならないよう注意もしていく。
こうなると色々と絞り込みがされてくる。
どこまで行けて、何が駄目なのかが分かってくる。
開拓地近くだとたいていの場所で冒険者が活動してるので、都合の良い場所がなかなかみつからなくなる。
そうなると、比較的強力なモンスターが出る地域くらいしか残らなくなる。
危険な事はしたくないが、こうなると選り好みをしていられなくなる。
「しょうがないか」
全員の高いレベルを頼りにするしかなくなった。
そこに至り、ヒロノリは自分の考えが固定化されていた事に気づく。
自ら作った壁にぶつかったとすら言えた。
レベルに関係なく出来る限りの知恵を絞り工夫をこらして活動してきた。
そのため、レベルに頼った戦い方や物事を進める方針などはとらないようにしてきた。
力押しではなく、ちょっとした工夫で成果が上げられないものかと考えていた。
それはそれで良い事であったとは思う。
しかし、ここにきて裏目に出ている気がしないでもなかった。
低レベルでもより高いレベルと同等の事が出来るようにしようとしているために、逆に高レベルのやり方がおざなりになっている。
低レベルによるそれなりの戦い方についてはあれこれ考えていたが、高レベルの場合については考えてなかった。
むしろ、高いレベルへの忌避すら抱く事にもなっていた。
高レベルがなんだ、という思いがどこかにあり、それが高レベル否定にすらなっていた。
自覚はなかったが、あらためて考えてみるとそんな自分に気づいていく。
(こりゃ、駄目だな)
考えをあらためる必要があった。
全てを変えるわけではないにしても。
高レベルなら高レベルで出来る事がある。
当たり前だが、高レベルなら少数で多数を圧倒できる。
ここが低レベルとの違いになる。
モンスターの強さそのものは地域による差はそれほど無い。
モンスターの領域に踏み込んでいけば、それなりに強力なものも出てくるが、遭遇する事はそれほど多くはない。
種類も増えるが、強さは概ね同じである。
だいたいレベル5にもなれば相手の違いもなく倒す事が出来るようになる。
なので、レベルが上がればより簡単により多くの敵を倒せるようになる。
そうなると、戦いかたが変わってくる。
低レベルの場合は、大勢で敵を囲むようにして戦っていた。
能力の低さを数で補っていた。
レベルが上がるとこれが逆転する。
一人で数体のモンスターを相手にして勝てる。
こうなるとやり方が全然違ってくる。
低レベルの基本は、モンスターをおびき出し、囲いの中に入れて有利な状況で攻撃をしかけていく事だ。
だが高レベルだと、モンスターの群れに突進し、一気に蹴散らしていくという事が出来る。
それが出来るだけの戦闘力があり、それでも楽に生還出来る。
生き残る事を優先していた低レベルとはここが違う。
短時間で数多くのモンスターを倒し、より多くの稼ぎを手に入れる事が出来る。
この当然の事を考える事もなかった。
(一気に蹴散らす方向でやってみるか)
とりあえず考えを変えてみる事にする。
今の仲間なら、それくらいは簡単にやってのける。
不安なのはヒロノリの戦闘技術くらいなものだ。
新人に比べれば圧倒的に高いが、レベル10がいる今の仲間に比べればとてつもなく弱い。
もう少しレベルをあげないと仲間についていく事も出来ない。
(でも、こいつらと一緒ならそれも何とかなるか)
一緒にいれば死ぬ危険は減る。
レベルもいずれは上がる。
だとすれば、この状態で何をどうやっていくかを考える事だけである。




