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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第七決算期

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転職136日目 次世代育成計画5

 それなりに冒険者をやり、団長としての給料もある。

 家を建てた事でそれなりに使ったが、貯金の全てが無くなったわけではない。

 それから時間も経ち、幾らか回復した分もある。

 家族を養う出費も大きいが、それでも給料の全てを使うほどではない。

 幾らか頭金として出す事は出来る。

「そうなりゃ、外側についてはあと二百で済む。

 一ヶ月でどうにか形に出来る」

 実際には必要な物資や人員を目的地にまで運ぶ費用がかかるが、最低限の費用はそれで賄う事が出来る。

 半年も待たずに行動を開始する事も出来る。

 他の者達が協力してくれればだが。

「まあ、半年で俺達の場所を作って、それから人を入れるってのが現実的かもしれないけど」

「やるなら、ですね」

「そうだ、やるならだ」

 あくまで今の段階では計画以前の話である。

 夢や希望を語ってるにすぎない。

 だが、実現不可能な事でない。

 時間はかかるが、確実に成し遂げられる事である。



「面白そうだな」

「ああ」

「やってみるか」

「小遣いが減るけど」

 賛成の声があがっていく。

 誰もが今のままで良いと思ってるわけではないようだった。

「やるなら、出すものを出さないとな」

「命以外はな」

 冒険者としてやってきた経験がそれを理解させている。

 危険を承知で突っ込まない事には収益はあがらない。

 無理をしない範囲であっても、やるべき事はやらねばならない。

 自分達でやっていこうとなればなおさらだ。

「でも、とりあえず半年か」

「それくらいで様子を見ておくか」

「妥当な範囲だな」

 かなりいい加減であるが、当面の目標が決まった。

 その前に片付けねばならない問題もあるが。



「というわけで、金が必要になった」

「はあ……」

「はあ?」

「ついては、それなりに貯金を使う事になるので、やりくりを頑張ってもらいたい」

「それはまあ、構いませんけど、というかいつもやってる事ですし」

「って、認めるんじゃない!」

 女房二人のそれぞれ違った反応を前に、やっぱりなあと思ってしまう。

 二人の反応が想像通りであった事と、反対はどうしてもされるだろうなと言う事で。

 費用負担は家庭にも影響を及ぼす。

 それを二人が簡単に許諾するわけがないとは思っていた。

 片方はそれでも承諾してくれるだろうとは思っていた。

 しかし、もう片方はさすがにつっかかってきた。

 そりゃ貯金をいきなり使うなんて言われたら反対もするだろう。

 立場が逆なら、ヒロノリだってそうしていただろう。

 これが片方からだけ反対が出るだけマシというものだ。

 両方から否定と却下されることを覚悟していたのだから。

 とはいえ、割と穏便に済ませてる方も素直に認めてるというわけではない。

「でも、やるのは仕方ないでしょうけど、まずはどれくらい負担になるかを見極めないとどうしようもありませんよね」

「はあ、まあ、それはそうか……な?」

「いきなり銀貨三百枚を出せと言われても、補填の宛がないとさすがに承諾できません」

「ごもっともで」

「なので、とりあえず一ヶ月ほどがんばってみてください」

「……というと?」

「一ヶ月でどれくらいお金が貯まるのかを見てみないと判断出来ません。

 皆さんと新たにモンスター退治に出かけたわけでもありますし。

 その皆さんとどれくらい稼げるのかを示してもらわないとなんとも」

「なるほど」

 言われてみればごもっともである。

 出て行く分を補うくらいの収入はあるのか、そもそも新たな仲間(郎党候補の皆さん)とだと実際にどれだけ稼げるのか。

 まだそれは分かって無い。

 分からないうちに金を出すというのも納得出来るわけがない。

「お話しの結論はそれからでも良くはないですか?」

「そうだな……」

 否定も反対もする理由がない。

 一ヶ月の様子見期間があっても問題は無い。

 新人とてすぐに入れる事が出来るわけではないのだから。

「それじゃ、そういう事でとりあえずは良いですね」

 ヒロノリは黙って頷いた。

 頷くしかなかった。

 日頃穏和な元女将の女房であるが、こういう重い決断を下す時は静かな迫力を醸し出す。

 今も、笑顔を浮かべているが反論を言い出せない圧力を感じる。

 隣にいる元家政婦の妻が若干後ずさるくらいに。

(おっかねえ……)

 なまじ怒らない人ほど怖い時がある。

 その事をいやというほど実感した。



「……という女房のありがたいお言葉を賜ったので、この一ヶ月で試しに色々やってみようと思う」

「お、おう」

「そうだな……」

「うん、分かった」

「了解」

 翌日、女房からの提案を伝えたところ、仲間も素直に応じてくれた。

「まあ、確かにそうだな」

「うちも文句言われたし」

「実績出さなきゃ何も言えないわな」

 他所も似たような状況だったらしい。

 いかなる家族会議が開かれたのか分からないが、だいたいの予想はつく。

(みんな、大変なんだな)

 自分だけでない事に妙な安心感をおぼえ、どこも一緒なのだと思うとそこはかとない落胆をおぼえる。

「まあ、かみさんを納得させるだけの努力をしてみよう」

 そう言って意見をまとめる。

 力のない応答があがってきた。

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