転職134日目 次世代育成計画3
今でも時折新人教育でモンスター退治に出る事はある。
だが、純然たる稼ぎ目的のモンスター退治は久しぶりであった。
仲間と共にモンスターの所に出向き、それらを倒して核をとる。
安全に確実により多くの成果を。
それだけを求めて行動していく。
全員熟練者だけに、手際の良さは半端なものではない。
戦闘技術でレベル10にすら到達してる者もいる一行は、危なげなくモンスターを倒していく。
十人が協力し、モンスターを追い立て、モンスターに立ち向かい、モンスターをたおしていく。
ほどほどにやっていこうと言っていたのだが、結果はとんでもない事になっていた。
「すげえな」
積み上がった核を前に驚くしかなかった。
それほど強いモンスター相手ではないが、それにしてもかなりの数が集まっていた。
「全部で三百って」
「まあ、こんなもんでしょ」
「雑魚ばっかだったし」
「上手く追い込むことも出来たしね」
当たり前のように言う仲間の言葉に呆然とする。
熟練した冒険者の手際がこれほど良いとは思わなかった。
「でもまあ、大した事ないでしょ」
「全部処分しても、銀貨三十枚ってとこですしね。
一人当たり三枚くらいですから」
「税金と運営費を引いたら半分にしかならんですよ」
このレベルの冒険者にしてみれば小さな成果である。
だが、初心者冒険者ではがんばって到達するあたりでもある。
それを半日かそこらで積み上げたのだから大したものである。
「やっぱり、レベルの高い冒険者ってのは凄いんだな」
「今更ですか?」
仲間が苦笑を浮かべる。
「最近机に向かってる事が多かったからな。
高レベルの冒険者がどれくらいやれるのかなんて目にした事もなかったし」
自身が高レベルになる前に一団の運営に携わっていたというのもある。
なので、レベル5以上の冒険者がどれくらいやるのかなんて全くわからなかった。
ましてレベル10に到達してる者など想像の外である。
「……大したもんだ」
それ以外に言葉がなかった。
まだ時間はあったが、モンスター退治は切り上げて帰る事にした。
成果は(このレベルにしては)それほどでもなかったが、落胆するほど少ないわけでもない。
初日はどれだけ出来るのかを見るのが目的だったし、そちらの成果も十分にあげている。
彼等の実力ならたいていの事は切り抜けれる事も。
味方についてくれるなら頼もしい存在である。
それについてはこれから時間をかけて関係を深めていくしかない。
だが、彼等だけでは足りない事もある。
(新人をどうにかして入れていかないと)
世代交代を考えるとどうしても必要な事だった。
引き込んだ冒険者達のレベルは高い。
同様に年齢も高い。
若い者でも二十代後半。
三十代に突入してる者もいる。
五年辺りは現役でがんばれるが、十年したらあやしくなる。
その時に備えて、今のうちに新人を入れて鍛えておかねばならない。
将来への布石である。
五年後十年後の主戦力を今のうちに確保し、子飼いの冒険者としておきたかった。
子供達と共に活動してくれる者達としても期待したい。
(入れてみるか)
次なる段階として考えていく。
その前にここにいる者達と話をつけておく必要があるが。
これについては意外と素直に賛同された。
「まあ、確かにそうだな」
「俺達だけならともかくなあ」
誰もがこのままやっていけるとは思ってなかった。
何らかのてこ入れは必要と感じてはいる。
若いのを入れて、集団としての新陳代謝をはからねばならない。
レベルの低い者は手早く成長させ、成長したものが主戦力としてモンスターを倒して行く。
その流れを作る事には賛成のようだった。
「で、新人を引っ張ってくるわけか、ここに?」
「俺らが向こうに戻るわけにもいかないし」
問題はそこだった。
今までは、ある程度レベルの上がった者を引き込んでいた。
新たな場所でのモンスター退治を、より多くの成果を求める者達を。
また、開拓地という事で土地も余ってる。
それを求めてやってくる者もいる。
しかし、全くの新人となると少しばかり勝手が違ってくるだろう。
それらをどうやってひっぱり込むのか。
「それに、誰が教えるんだ?」
それも問題になる。
教官役などやった事がない者も多い。
やるにしてもレベルの差がありすぎる。
収入も下がるし、それを受容するのは気が引ける。
これについてはヒロノリも理解しており、
「とりあえず、俺がやるよ」
と答えた。
団長としての給料もあるので、成果が減ってもそれほど困りはしない。
「ある程度レベルがあがったら皆に引率してもらいたいけど」
「まあ、それくらいは」
「新人を相手にしてくれるなら構わんよ」
こちらの方の同意は簡単に取り付ける事が出来た。
あとは新人を引き込んでくるだけである。




