転職132日目 次世代育成計画
創業者一族がいつまでも実権を握り続ける、という事に拘るつもりはなかった。
最適な人材が一団を率い、まとめていくならそれはそれで良いと思ってはいる。
だが、はたしてそんな人材が都合良くあらわれるのか。
あらわれたとして、そういった人材が問題なく頂点に立つ事が出来るだろうか。
組織の中の出世競争で余計な労力を使う事にならないだろうか。
そういう心配があった。
そんな事で内部抗争をしてたら、一団が崩壊する。
何らかの形で一団の首脳部は安定させておかねばならなかった。
必要な人材を登用出来るようにはするべきだが、流動的すぎて崩壊しては元も子もないのだから。
もちろん、自分の子供に功績を継がせたいという欲求もある。
赤の他人よりは血を分けた子供を優先したくなるのは人情だ。
それが悪いという事も無い。
親子に渡る相続継承は悪ではない。
親が培ったものを子供が受け取る事は当然過ぎるほど当然で当たり前である。
知識や経験は手渡せないが、それによって培った人生訓みたいなものは語って聞かせる事が出来るだろう。
親が蓄えた財産を子供が受け取ることを阻害する理由は無い。
どんな形であれ、たとえそれが法律として合法であったとしても、それらを横取りする事の方が悪事と呼ばれるべきであろう。
どうにかよりよい形で自分のやってきた事を子供に受け継いでもらいたい。
切なる願いとしてそう思うようになっている。
結婚し、子供が出来た事で変わったのかもしれない。
とはいえ、そう簡単にやっていけるものでもない。
相応の能力がなければ後継者としてどうしようもない。
ある程度の年齢から訓練をしてくにしても、それなりの時間が必要になる。
万全の能力を持ってるわけでないにしても、最低限の力を養っておかねばならない。
その時間がないのである。
少なくとも、ヒロノリだけでどうにか出来るわけがない。
(周りを固めるしかないか)
行き着いた必然の結果だ。
ヒロノリとその家族を支える一団が必要だった。
家臣と言っても良いだろう。
一族郎党の郎党でもある。
一団の中で、一団ではなくヒロノリについていく者達、ヒロノリの一族の配下となる者達。
そういった者達がどうしても必要になる。
年若い時には補佐を、それなりの能力や年齢に至れば配下として。
一つに固まってやっていってくれる者達で子供の周囲を固めておきたかった。
一団の私物化と言えばそれまでかもしれないが、もともと一団は公共的な団体ではない。
そもそも、どこかの誰かの意図に左右されない機関や団体などどこにも存在しない。
その団体内における実力者によって左右されるのが普通である。
法律や団体内における規律・規約など形だけと言った方がよいだろう。
概ねそういったものに沿って動くであろうが、本来の持ち主というか機関や団体の実力者が求めるならば、それらを平気で踏みにじる。
世の為、人の為、あたう限り多くの、しかし害を為す者達は除いた全てに大して公平なものなど存在しない。
所属してる者達をある程度納得させる必要はあるにしても、組織や団体など、結局はそんなものである。
ヒロノリが特別というわけではない。
強いて言うなら、主導権を握ってる者達が公平性を重んじるか私利私欲だけに走るかの違いである。
比較的にヒロノリは公平を重んじてはいる。
それが一団にとっては少しは幸いではあったかもしれない。
どのみち誰かの意志や欲で左右されるなら、少しはまともな人物がそうしていく方が幾らか良いであろう。
決して最善ではないにしても。
最悪などにはならないだけ良いというものである。
また、最悪の場合一団から追放される事もありうる。
権力闘争などが発生し、一団の主導権を乗っ取られる事もあるのだ。
子供の時代、孫の世代あたりはまだどうにかなるかもしれないが、この先も続いていくならその可能性は常になる。
出世欲はまだしも権力欲や地位に拘る輩は一定の確率で発生する。
それらを排除していければ良いが、それが出来なかった場合も考えねばならない。
(まあ、何十年も何百年も先まで責任はもてないけど)
ある程度対応や対策は考えてはおきたい。
だが全てに対応できるわけもない。
そうなったらその時の子孫にある程度がんばってもらうしかないだろう。
全ては当事者達の才覚次第である。
加えて、才覚だけではどうにもならない部分をどうするかである。
(やれるだけやっておくか)
一団の方についてはそれほど手がかからなくなっている。
新しい事態が発生したらどうなるか分からないが、今までの延長でいけるならそれほど問題は無い。
ほとんどがルーチンワークとなっている。
それよりは自分の家族と子供達の事について考えていきたかった。
引いては、一団や開拓地の今後についても。
この先の布石については手つかずの部分が多い。
こんなのもこさえてみました。
ついでに立ち寄ってもらえればありがたい。
VRMMOが発端となって現実でも戦う羽目になっていく話/試作品
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