転職130日目 開拓日記18
決まってしまえばあとは割と簡単に進む。
既に様々な作業はルーチンワークとなっており、ある程度は簡単に進める事が出来る。
開拓地の方は当面は今までやってきた事の繰り返しである。
開拓地を囲むように拠点を造り、その間に堀や柵を張り巡らせる。
小鬼がいた北の方角から重点的に進める事になったが、それ以外の部分も順次作っていく予定である。
ほぼ同時に北への調査・偵察も行われていく。
モンスター退治の遠征と兼ねており、どちらかというとこちらが主目的とも言える。
数十人くらいの大所帯で北の方角へと向かい、モンスターを倒しながら移動をしていく。
核の回収のついでに、何がどうなってるのかを調べていく形になっている。
調査に専念させたいとは思うのだが、そうするには相応の支払いをしないといけない。
今の所、そこまで財政的に余裕が無いので断念している。
冒険者にしても、モンスターへの危機感はあるのだが、だとしても収入を無視して活動するわけにはいかない。
まずは食い扶持を確保しない事にはどうにもならない。
人間、生活がまず第一である。
なので、調査はどうしても遅れがちになっていく。
だが、開拓地周辺におけるモンスターの発生は減り、安全性は確実に増していく。
遠出した調査隊が持ち帰る核も財政を潤し、発展の底上げになっていく。
決して最良ではないだろうが、これが一団にとって最も無理のないものであるのだろう。
今のところは。
それでももたらされる情報が周囲の状況を明らかにしていく。
モンスターが密集してる場所、それ程でもない場所。
丘陵地帯に平原、森林や藪の場所も分かってくる。
それらをもとに、新たな拠点建設の候補地も考えられていく。
より遠くまで調査をするためには、どうしても出城が必要になる。
その役目を果たす場所が必要だった。
出来上がれば行動範囲が拡がるし、その方面から来るモンスターを食い止める事も出来る。
間接的ながら、開拓地の安全性を上げる事にもつながる。
まずは開拓地の外周を作り上げる事が先だが、こちらも早急に進めたい事業であった。
活動範囲が拡がればそれだけ様々な情報を収拾しやすくなる。
何より、冒険者を収容する場所を増やせる。
現在の開拓地だけでは、既に限界がきていた。
住居の問題は結構深刻で、現状ではこれ以上人を入れるのが困難になってきている。
今後の開拓予定地などにはまだまだ余地があるが、それらを含めて守る外周設備が完成するまでは手をつけられない。
モンスターの脅威から身を守れない場所に人を入れるわけにはいかなかった。
そんな事が出来るのはモンスター退治で生きていく冒険者だけである。
いずれ入植も出来るようになるだろうが、それまでにはまだまだ時間がかかる。
それまでは現状を維持するのが精一杯だろう。
打開策としては、冒険者を増やしてモンスターを倒していく事だが、それも活動拠点あっての話である。
その活動拠点を作るとなると、他の場所の作業を滞らせる事にもなる。
これもどちらを優先するかという事に繋がっていく。
「まずは外周を作ろう」
散々考えたが、出した結論はこれだった。
「人を入れて耕作地を増やすのが先だ。
そうすりゃもっと多くの人間を養える」
冒険者を増やす事でも似たような効果をあげる事が出来るが、それでも耕作地の拡大を優先した。
時間をかけねばならない開拓を滞らせるわけにはいかない。
それに、防備となる外周設備は必要不可欠である。
これを遅らせる事も出来なかった。
「拠点の方も大事だけど、それは後からでも作れる。
まずは時間のかかる方を優先する」
後回しにするには時間がかかりすぎる事業を進めねば、完成は遠のくばかりである。
冒険者を養うためにも、田畑の増大は大いに役立つ。
一年二年では結果が出ないが、ずっと先においてこれが大きな基盤になりうる。
その為に、少しばかり歩みが遅くなる事は許容範囲だった。




