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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第六決算期

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転職127日目 開拓日記15

 発展してるのは開拓地だけではない。

 国にある一団の拠点も拡大を続けている。

 鉱山との連絡路を中心にしていた一団の活動であるが、更に増加した冒険者によりそれだけに留まらなくなっていた。

 開拓地で小鬼と戦闘を繰り広げてる間にもそれは続いていた。

 おかげで、一度は鉱山の方面に集め、手薄になっていた他の方面にも冒険者が再度進出していった。

 開拓地にとられた以上に増大した冒険者は、それこそ既存の拠点だけではまかない切れなくなっている。

 増加したのは柵と堀による防備と、簡素な倉庫に炊事場だけを設置したキャンプ場のようなものがほとんどである。

 だが、こういったものがそれこそ乱立するほど設置され、様々な冒険者の活動拠点になっている。

 中にはそこから発展して大規模な活動拠点に拡大したものもある。

 これらが北からやってくるモンスターへの防波堤になり、開拓地に送り込む冒険者の供給源になっていた。



 最初に造った拠点も、鉱山との中継地点にあるものも、両者とも人口数百人を超えて、一千人に近づこうとしていた。

 もはや町と言ってよい規模である。

 一団員以外の者達も多く、むしろそういった者達が町の中心になってる感があった。

 そういった町では冒険者が中心になる事も少ない。

 流れ込んで来るモンスターの核は、いまだに大きな金を生んでるが、それ以外の要素も出てきている。

 また、モンスターの出現地域から遠くなった(というより、モンスターが出没する場所が遠くに押しやられた)のも理由である。

 開拓地でもそうだが、安全圏に冒険者は必要ない。

 モンスターを倒す事で生計を立ててる冒険者は、どうしてもより危険な場所へと居を移さねばならない。

 そこから抜け出すためには、別の仕事を始めるしかない。

 幸いにして、町になるまで発展した拠点は様々な需要がある。

 それらに必要なものを提供する事で商売になる事もある。

 冒険者を引退する者達は、そういった仕事に従事していく事になった。

 多くの冒険者が夢見る未来の一つがそこにあった。



 ここでもだんだんと棲み分けが生まれていった。

 冒険者とそうでない者達とで、居場所が変わっていっている。

 安全圏が増えれば増えるほどその傾向は大きくなっていった。

 かつては最前線近くだった最初の拠点近くの村も、今や安全圏でありモンスターの脅威はほとんどない。

 採掘物の輸送路も、まだ完全に安全とは言い切れないが、モンスターとの遭遇はほとんどなくなった。

 鉱山付近も、冒険者が大量に出入りする事でかなり安全になってきている。

 山地の中であるにも関わらず拠点が造られたためであろう。

 なお、こういった拠点は場所が場所だけに移動や輸送がしづらい。

 なので長期間の滞在が可能になるよう造られている。

 可能な限り大勢の冒険者が滞在出来るようになっており、それらが近隣の安全性確保に繋がっていた。

 また、一度行ったら出て来るのが面倒なので金を使うことがほとんどない。

 その為、金が貯まりやすいという事にもなっている。

 無駄遣いが多い者が、一念発起して出向く場所として知られるようになっていた。



 一団以外の冒険者も増加していた。

 同業者が多数いるので競合状態だが、逆に言えば協力して事にあたれる者も多い。

 分け前が多少減っても、安全性を確保したいと思う者達が集まってきて、大きめの集団となっていく。

 また、個人や少数の一群の者達が同行者を求めにもやってくる。

 それもあって、十数人くらいの規模の一群も珍しくなくなっていた。

 そして、一度安全性の確保とモンスター退治の効率性を知った者達は、なるべく多人数を維持しようとする。

 弱小の糾合を呼んで、ある程度の規模の一群を大量に作るようになっていった。

 ただ、それなりの規模の集団が出来上がる過程で問題も発生している。

 場所の占有である。



 一定以上の規模の集団が利益をあげるには、場所の確保が必要になる。

 そのため、割の良い場所は特定の集団が居座るようになった。

 場所が占有され他の一群が入れなくなる。

 不満が発生しやすくなる。

 だが、だからといって占有してる一群を排除したら別の問題が発生する。

 割が良いというか、稼ぎが良い場所はモンスターの出没が多い。

 それらに対処するには一定以上の人数と力量が必要になる。

 他の一群でそれを補う事が出来るのかというと、疑問が出てくる。

 安全圏の確保を考えれば、占有してる一群にそのまま任すのが妥当であった。

 しかし弱小・少数集団への配慮を考えるとどうにかせねばならない問題でもある。

 手っ取り早いのは別の場所をすすめる事になるのだが、そう簡単に適した場所が見つかるわけもない。

 あったとしても、その方面に進出するまでに時間がかかる。

 拠点を新たに造っていかねばならないのだから。

 解決しづらい問題が生まれ、対策に頭を悩ます事になる。

 だが、こういった事は規模や実力の差から来るものでもあるので、覆すのは難しい。

 自然と生まれてしまった縄張り争いは、おそらく今後様々な問題を生んでいく。

 しかし、そう簡単に決着をつける事も出来ない。

「もう放っておくしかねえな」

 ヒロノリもさじを投げていた。

 実際、人が手を出して解決するという事も無い。

 こういう事は流れに任せてなるようになるのを見守るしかない事もある。

 全ては自然な流れのうちによりよい着地点を見つけるのを願って。

 人の智慧でどうにかなる事ばかりではない。

 それが人の手によるものであったとしてもだ。



 意外な結果として、その地域に特化した特色を持つ集団にもなっていった。

 場所を占有する事でその地域にあわせた技術を成長させるからだろう。

 鉱山付近の山地ならば、山での活動に適した能力を。

 森林地帯ならば、その中で動きやすい技術を。

 平野であっても、やはりそれ相応な能力を持った者達が増えていっている。

 そういった特化は別の地域や全く異なる環境に赴くと特性を失う。

 むしろ、特化した部分が邪魔になる事もある。

 汎用性を捨てた結果が特化であるから当然であるが、それがまた一部地域への固執を強めていく。

 とはいえ、モンスター退治の観点からすると、そうした特徴を備える事は効率化をもたらす。

 意外な余録として、そういった集団は他の地域への進出を控えるようにもなる。

 一部地域の占有が、逆に他の地域への進出を控えさせるようにもなっていた。

 おかげで縄張り争いが変に拡大するような事もなくなっている。

 不幸中の幸いと言うべきであろうか。

 ただ、場所の占有は続くし、今後も諍いが止まる事は無いだろう。

 規模の拡大が内部における衝突を招いてしまっている。

 大所帯であるだけにやむを得ない事であった。

 もっとも、例え少人数でも諍いが起こるときは起こる。

 というか、大なり小なり衝突や摩擦は生まれる。

 そこに規模の大小は関係ないのかもしれない。

 人が人で有る限り無くならない宿痾であろうか。



 だが、全体として人類の領域は拡大している。

 おされ気味だったモンスターとの衝突は、この地域については人類の逆転で進んでいっている。

 いつまでこれが続くか分からないが、今暫くはこの調子で人類の進出は続くだろう。

 いずれ限界を迎える時まで。

 その起点となったヒロノリと彼の一団は、既にこの地域(というか国)をある意味見放しているのだが。

 だが、ヒロノリの思いや思惑とは別に国の方の拠点は拡大を続けている。

 それ自体が一つの意志を持ってるかのように。

 ある意味制御不可能になってるのかもしれない。



「まあ、金が入ってくるなら別にいいけどね。

 あと、冒険者の確保や育成が出来るなら」

 ヒロノリはそう割り切っていた。

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