転職12日目 順調にモンスターを倒していってます
「良いぞ!」
その声にあわせて左右から四人が飛びかかる。
山刀を手にした少年達が、ヒロノリが引きつけてるモンスターに飛びかかる。
そのうち二人がモンスターの前脚に、残り二人が後ろ脚を狙っていく。
腕を狙った方は、ほぼ狙い通りに両腕を叩く。
後ろ脚を狙った方も刃を当てはした。
しかし、腕の方はそれなりに勢いと力ののったものであるのに対して、脚の方はそこまで威力はない。
武器の振り回し方にほんの少しであるが熟練の差が出ている。
町の外に出て平原でモンスターを倒すようになって三ヶ月。
それ以前の期間も含めれば、技術レベルを上げるのに十分な経験値を得ている。
それを用いて、ヒロノリと最初にモンスター退治に出た少年二人はレベルを上げている。
ヒロノリは盾を。
少年達は刀剣を。
それにより、ヒロノリは以前よりモンスターの攻撃を簡単に受け止めるようになっていた。
少年達は攻撃を的確に行えるようになっている。
もちろんモンスターの一撃を受ければ体に衝撃が走る。
上手く当てられるようになったとはいえ、攻撃は一撃必殺とまでいかない。
だが、戦闘を格段に上手くこなせるようになっている。
新たに加わった二人に比べれば、差は際だっていた。
そんな五人が一体のモンスター相手に集中攻撃を繰り返していく。
結果がどうなるかははっきりしている。
余程の異変が起こらない限り覆る事は無い。
「よーし、核を切り取ってくれ」
倒したモンスターを省みる事無く指示を出す。
新人である孤児達が、武器を鞘におさめてナイフを取り出す。
モンスターから核を切り取るために作業を開始していく。
その間にヒロノリともう二人は近寄ってくるモンスターの方に目を向けている。
「どうする?」
「右の方から来てる奴が近いと思うけど」
「たぶん、両方ともほとんど同じくらいにこっちに来ると思う」
「じゃあ、一旦引くか」
そう決断をすると、盾を構えて少年達の前に立つ。
モンスターが接近してきた時に、一番前でそれらを止めるために。
作業が終われば皆と共に後退するが、そちらが長引いたらモンスターとの戦闘になる。
そんな事にはまずならないが、もしもを考えてそういう配置についている。
幸いにして今まで作業がそこまで遅れた事は無い。
モンスターが新たに縄張りと認識した範囲に入る前に退く事が出来ている。
今回も作業は時間もかからず終わり、皆と共に退いていける。
前進してきたモンスターが新たな縄張りが確定するのを見届ける事が出来る位置まで。
それからヒロノリ達は次の標的を定めていく。
どれを倒していくかを。
最も効率的に核を手に入れられる順番を。
人数が増えた事でモンスターを倒す効率は格段に上がっていた。
一度に与える事が出来る損傷が大きくなり、さほど時間をかけずに戦闘を終わらせる事が出来る。
レベルの上昇の恩恵も合わせると、今までの半分以下の時間で事を終える事が出来た。
数もこなせるようになり、一日に六十体ほどを倒していく事が出来る。
一日の稼ぎも当然上がり、今は税抜き後の手取りが銀貨四枚を超えるのが当たり前になっている。
一人当たりの手取りのも銅貨八千枚を超えている。
おかげで孤児院の食事事情はかなり改善されていた。
モンスター退治に来ている四人が稼ぎの半分を食費にあてているのだ。
一日の食費としては十分過ぎる。
そのおかげで孤児院の子供達の栄養事情は完全に解決されていた。
今まで滞りがちだった体の成長も著しくなってきている。
まだ成長期の年代だけに、見た目の変化が早いように感じられた。
翻ってヒロノリなどは己が何歳なのかを再確認させられてしまう。
自分と対比すると子供達の若さが羨ましくなってしまう。
そのあたりの泣くに泣けない現実をとりあえず放り投げ、今の状況を振り返っていく。
取り戻せないものを求めてもどうにもならないと痛感しながら。
まず、食事の改善の効果が著しい。
骨と皮だけと言った状態からの脱却は果たせてきている。
個人差はあるが、概ね順調に成長をしはじめているのは幸いだった。
新たに子供が二人加わったのもこれが関係している。
今までだと外を動き回れるくらいに体が頑丈だったのが二人しかいなかった。
町の外周にある堀を巡ってモンスターを倒していたのも、この二人だけである。
他の者達がモンスター退治を忌避したからではない。
外に出るくらいに体が動き、モンスターを探して倒すだけの体力があったのが二人しかいなかったのだ。
それが今は更に二人が加わる程になっている。
このままいけば、あと何人かの加入を見込める。
そうなれば、稼ぎは更に跳ね上がるだろう。
もちろん年齢的にさすがに無理な者もいる。
いくら何でも十歳にもならない子供を連れて行くわけにはいかない。
幼いから危険、というような人道的理由をさて置いても、体格がまだ小さい。
あと二年三年ほどしてからでないと、モンスターを相手にするのは危険だった。
言い方を変えれば、あと二年三年すれば容赦なく参加してもらおうと思ってはいた。
何せ人手が欲しい。
五人いることでかなり戦闘は楽にこなす事が出来ている。
だが、余裕が無い。
交代要員がいないから、一人でも行動不能になったら大きな損失になってしまう。
風邪を引いて寝込まれるだけでも痛手になるくらいに。
また、モンスター相手だから負傷は何かしら受ける可能性がある。
それを考えるともっと人数が欲しかった。
それに人数が多ければ稼ぎも増える。
参加人数が増えれば、それだけレベルを上げられる者も増える。
今後もモンスター退治を継続的に続けていけば、高レベルの冒険者になる。
そうなればもっとやれる事の幅が拡がる。
将来を見込んでも、参加人数の増加はしなくてはならない事だった。
とはいえ、今の状況では人数を増やす事も出来ない。
働きに出られる年齢の子供は今の所これで全員だ。
それでもほとんどが十二歳とか十三歳である。
労働基準法があったらとっくにお縄になってしまっている。
かつてはそれが機能するよう切に願っていたが、今はそれがない事に感謝をしてしまう。
若年労働があたりまえの世界であるからこそだろう。
農家なら親の手伝いで物心ついたころから田畑に出ている。
丁稚奉公で町に出て来る者達も、十歳以下だったりするのが普通だ。
担うのは雑用がほとんどとはいえ、子供が仕事をしてるのが当たり前である。
その善し悪しを決める事は出来ないが、この世界ではそれが当たり前なのだという事は理解しておかねばならなかった。
それでも、さすがにモンスター退治に連れて行くならある程度年齢が上がってからにしたかった。
体の成長の事もある。
体力が一定水準を超えていないと戦闘をこなす事など出来ない。
その為にも成長を待つしかない。
年少の子供達を連れて回すほどヒロノリも鬼畜にはなれなかった。
だとしても何もしないでいさせるつもりもなかった。
戦闘はしなくてもやってもらいたい事、やるべき事はある。
食事の支度に始まる日常的な雑務はこなしてもらわないといけない。
戦闘に出てる者達が負担出来ない部分を、待ってる子供達にはやってもらっていた。
特に女の子は成長しても戦闘に連れ回すのは躊躇われるので、家事全般を頑張ってもらいたかった。
将来への布石という意味もある。
女の子なら嫁入りが普通の世界だ。
社会に出て、などというのはほとんどあり得ない。
仕事をするにしても、給仕や使用人などが普通なので家事や掃除などは避けられない。
家の中の仕事を優先的にこなし、それらに備えてもらいたかった。
(ハーレム作っても、そういう事が出来たら便利だろうし)
などというヒロノリの意向もある。
もちろん口には出さないが。
いまだ諦める事無くヒロノリはそれが出来ないか考えていた。
当初のガリガリの骨皮状態を脱してきたから余計にそう考えてしまってもいる。
いい加減諦めて別方向に舵を切り直すべきだろうが、淡い期待を大事に大事にしていた。
それが叶うより先に、良い嫁ぎ先が見つかるよう祈らずにはいられない。
続きは18:00の予定




