表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第五決算期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/159

転職109日目 進出計画13

「そんな事が……」

「まあ、団長の事だからそんなに厳しい事をするとは思えないけど」

「いや、俺も今まで世話になってきた。

 その恩に仇を返すつもりはないよ」

「そう言ってくれると助かる。

 今後も上手く付き合っていければ助かるし」

「もちろんだ。

 俺らもここでは稼がせてもらってる。

 それ以外でもいい思いをさせてもらってきた。

 出来ればこのままこの調子でいきたいと思ってるさ」

「じゃあその方向で。

 今後もよろしくな」

「ああ、分かってる。

 鉱山の方にも何とか食い込んでみるよ」



 そんな会話が一団の取引先にて行われていた。

 一軒二軒ではない。

 ありとあらゆる所でだ。

 数年にわたる活動の中で一団の取引相手はかなりの拡がりを見せている。

 拠点に出入りする行商人だけでも十人は下らない。

 大手の商会の下請けで運搬を受け持ってる者もいれば、独立した営業主もいる。

 それらの全てを合わせれば結構な数の人数となる。

 加えて、零細の規模ではあるが店を構えてる商店などとの取引もある。

 それら全てを合わせれば、町における有数の商会とも同等の経済規模の集団となる。

 これらの全てに影響を与えるくらいに一団の影響力は高まっていた。



 やはり拠点の存在が大きかった。

 冒険者の数も然り。

 これらが中心となって、消費市場を形成している。

 その数は、既に一千人近くまで膨れあがっている。

 一割から二割は開拓地に出向いてるので直接の商売相手にはならないが、それでも町一つ分くらいの消費者がいる。

 加えて、この冒険者相手の商売をしてる者達がいる。

 食堂に装備品の製作・販売がこれにあたる。

 こういった者達の人数も多く、これらに必要な品を提供するだけでもそれなりの金額になっていた。

 ここに参入出来るだけでも商人としては利益を得ることが出来る。

 しかも多くの町と違い、参入は自由に出来る。

 大体の町では、既に存在してる商人達による取り決めが作られており、新規参入出来ないようになっている。

 それが一団の拠点にはない。

 大手だろうが個人事業主だろうが、誰であっても参入出来る。

 時に何かしらの排除に動き出す者達もいるが、そういった動きがあればヒロノリがすぐに動き出す。

 たいていの場合、そういった事をした者達や業者を拠点からはじき出す。

 これにより、独占的に事業を行う事は出来なくなっていた。

 それだけに厳しい競争にもなるが、成り上がる機会も得られる。

 小規模な商人達にとって、一団の勢力圏は儲けの可能性の転がる場所だった。

 そこからはじき出される事を望む者はまずいない。

 ヒロノリの言葉(と言われている、周囲の者達の勘違い)に商人達が恐れをなすのも無理はない。

 例えヒロノリが商人達を意のままに操ろうとして無くても、「こっちからも手切れにすればいいだけ」という言葉だけでも十分に威力がある。

 少なくとも一団が今のようにそれなりの勢力を保ってる間は、機嫌を損ねるつもりにはなれなかった。

 それに、商売をやる上で信用を切り捨てるわけにもいかない。

 機会があればそれに飛びつく機敏さも必要だが、取引相手を騙したり裏切ったりしない事も求められる。

 代わりになる程の新たな取引相手が出来ない限りは、今の取引相手を切り捨てるわけにはいかないのだ。

 それは打算と妥協の結果ではあるだろうが、信用が大事という結論に変わりはない。

 万が一鉱山での取引や商売活動に関与出来るとしても、これは変わる事がない。

 何せ鉱山から町などに至る途中はヒロノリの一団が根を張ってる地域である。

 そこを通過するのだから、ヒロノリを敵に回すことは出来ない。

 冒険者が周辺で活動してるという、ある意味常時護衛が付いてるような状態を無視は出来ない。

 モンスターに襲われる可能性が極限まで低下してる地域である。

 かなり安全に行き来が出来る場所というのは、商売人にとって貴重な市場だった。

 折角そこで商売が出来るのだから、そこから追放されるような事は控えていかねばならなかった。



 商人達は渡された情報をもとにどうにかして鉱山に食い込もうとしていく。

 その利権に食い込むのは無理だろうと誰もが思っていたが、努力は惜しまなかった。

 取引に直接食い込めれば儲けもの、そうでなくても何らかのおこぼれにありつけるかもしれないのだ。

 少なくとも、採掘したものの運搬などには関わりたいと願っていた。

 鉱山夫達相手の商売にも関われるかも知れない。

 とにかく何でも良いから、少しでも多く利益を確保しようと行動していく。



 当然のこととして、直接鉱山に関わるような仕事にはありつけなかった。

 やはりそこは貴族と繋がりのある商人達が受注していく。

 だが、行動の成果としてそれらの下請け的な仕事には関わる事が出来た。

 一つ一つは小さなもので利益もほとんどない。

 赤字になるほどではないが、経費と差し引けば利益が相殺されるくらいのものでしかない。

 それでも今後の可能性を考えれば大きな機会にはなり得る。

 関わりをもっているからこそ食い込めるものもある。

 あるいはこれが大きな足かせになるかもしれないが、やってみなければそれすらも分からない。

 一団とは関係なく、商人達も将来の可能性に賭けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ