転職106日目 進出計画11
(けど、そうならそうで……)
考え方を少し変えてみる。
何かをするにしても、実行するのに半年から一年はかかる。
ならば、それだけの時間がかかるものとして活動をしていけば良い。
ある意味あきらめてるようなものだが、それを受け入れてみれば違った側面も見えてくる……気がした。
(どうせ一年かかるなら、一年ごとにやる事を決めていくか)
一団として、組織だった活動としてだとそうするしかない。
だが、そう思ってみると以外と余裕をもって考える事が出来る。
なるべく様々な作業を手っ取り早く片付けていきたいとは思う。
しかし、それが出来ないなら手が届く範囲で色々やればよいと開き直れた。
また、それだけの時間があればこそ出来る事もある。
(今後の拠点展開と運営の見直しに、開拓地の方の整備に……)
一年あればそれなりに進める事が出来るものもある。
何より、
(必要レベルに到達した者の確保だな)
その為の時間を手に入れる事が出来た。
早ければであるが、半年でレベル3。
一年でレベル5は簡単に突破できる。
一団における活動で冒険者のレベル上昇はそれくらいになっていた。
もちろん一つの技術だけを上げ続けるわけにはいかない。
戦闘関係は優先して一定値まで上昇させる必要があるが、それ以外の事も身につけていかねばならない。
細かく言えば、戦闘技術についても、必要な技術をそれなりのレベルに上げるまで、最短で二年くらいはかかる。
刀剣や槍に弓といった攻撃系の技術、回避や盾などの防御系の技術。
これらはそれぞれレベル5にあげるべきと考えられている。
加えて、戦闘時の行動を考える戦術、周囲に潜んでる敵の発見に関わる察知系の技術なども求められる。
モンスターの痕跡を発見し、場合によっては追跡する事もある。
その為の技術も求められるし、痕跡から行動範囲を特定して罠を仕掛ける技術を身につける事もある。
潜伏して気づかれないように奥地に潜入して偵察する事もある。
それら全部を身につけようと思ったら、経験値がいくらあっても足りない。
なので方向性を絞って技術を身につける事になる。
戦闘に加えて、こういった補助的(場合によっては主役になる事もある)な技術を身につけてはじめて一人前の冒険者と言える。
こういった技術を身につける事も含めての二年である。
そういった者達を増やすためにはどうしても時間が必要だった。
だが、一年単位で考えていくなら、ある程度柔軟に対応する事も出来る。
(開拓地の方の探索は二年三年先になるかな)
必要な技術を持つ人間を揃えるとなるとそれくらいの時間がかかる。
ならば、その間に出来る事をやっていけば良い。
五十人のレベルの高い冒険者と、それらを運搬する馬車などなど。
二年三年あれば揃える事は出来るだろう。
それに必要な費用などをあらかじめ考えておけば、他の方面に回せる資本がどれだけになるかも見極め安くなる。
一度にあれもこれもと出来るわけがない。
何かしらに絞って活動をしていかねば、全てが中途半端になる。
(まずは鉱山の方を確実にしていかないと)
町と鉱山を結ぶ道の確保は絶対である。
今後はここの移動の安全確保が必要になる。
鉱物の入手は様々な物品作成に必要不可欠である。
その為、貴族達もここには力を入れていくようだった。
少なくともそういった情報や気配は感じる。
巡り巡ってヒロノリ達にも恩恵があるかもしれない。
資源が充実すれば、必要な原材料の入手の手間も下がるはずである。
貴族や商人がそのあたりを独占してしまえばどうなるか分からないが、それほど悪い事にはならないとは思った。
少なくとも、原材料の値段が上がるような事は無いはずだった。
物資が流通してるのだから、値上げする理由がない。
需要が増大すればこの限りではないが。
それでも、鉱山までの道を確保する事には意義がある。
この道に沿って展開すれば、自然とモンスターを倒す事になる。
そこから得られる核は今後も収入源となるだろう。
既にそういう方向で動いてるが、この動きをもっと加速させていく事になる。
他の方面が手薄になるが、それはそれで好都合である。
人員募集の名目を作れる。
人手が薄くなった方面を充実させるために、新人を必要としていると言えるのは大きい。
そうやって人間を集めれば、何人かを開拓地に送り込む場合の目くらましになる。
探索だけでも五十人と見積もっているので、とにかく人を引き抜きやすくしておきたかった。
そうでなくても開拓地はモンスターに囲まれている。
戦闘が出来る冒険者は何人いても良い。
そして、必要なレベルに到達してる者を確保するとなると、二年三年は確実にかかる。
既に到達してる者を引き抜くだけでは足りない。
新人を育てねばならない。
今から頑張っても二年や三年はかかる。
人集めの時期と考えて、これは納得するしかなかった。
その間に道沿いの拠点を整備していかねばならない。
必要な施設はまだまだ足りない。
それらを確保していくために二年や三年という時間は必要になる。
今後も増やさねばならない宿舎や倉庫などなどを追加せねばならない。
拠点の拡大もせねばならない。
可能な限り資本を集中しても、時間と手間がかかる。
(他の部分は放置するしかないな)
派生的にあちこちに作られた小拠点は無視するしかない。
そちらにまで手を出していたら、鉱山方面に全く手が出せなくなる。
いつまで経っても整備が終わらなくなる。
同時に開拓地の方の整備も進めねばならない。
田畑の拡大を進め、食料の確保を安定させねばならない。
大量に買い付ける資材を一部こちらに流し、様々な施設を再建せねばならなかった。
やってきた貧民達が懸命に作業をこなしているが、まだまだ満足のいく規模には達してない。
求める耕作地の広さや収穫量に到達するまで、やはり二年三年の時間は当たり前のように必要だった。
はっきり言えば、それだけでは到底足りない。
また、耕作地を広げるために、周辺事情を調査する必要がどうしても出て来る。
とりあえず、それほど離れてない辺りまでは調査をしてるので、すぐに支障が出るような事は無い。
多少の猶予はあるので、その間に準備をととのえていく事にしている。
ただ、それもやはり二年か三年が限度だった。
出来るだけ長距離・広範囲にわたる調査が求められている。
(なんだかんだで先の話か)
今すぐ手をつけねばならない事ではあるが、形になるのはずっと先。
その事が少しだけ余裕を感じさせる。
(そんな事ないんだろうけど)
二年になるのか三年になるのか、あるいはもっと先になるのか。
いつになれば動き出すか分からないが、それも今すぐ行動して出て来る結果である。
悠長な事をしてるわけにはいかない。
なのだが、実際にある長い時間が気をゆるませる。
(まあ、今くらいはいいか)
このままずっとと言うわけにはいかないが、今この瞬間くらいは何もしなくても問題は無い。
明日から本気を出さねばならないが、それまでだらけていても罰は当たらない。
それでも頭を働かせてしまう。
(まずは何からやりゃあいいんだか)
考えるとはなしに考えていく。
結局、将来の事を考えてるのが一番楽しかった。
仕事と関わりのある事でも。
自主的に残業をしてるのと大して変わらないのではないかと思うが、ヒロノリ本人はその事に気づいてない。
自分で書いててなんだが、人が動かねえ。
組織は動いてるのだが。
もうちょっと個人の顔が見えたほうが良いとは思うが、それもなかなかできず。
困ったもんです。
そして、続きよりもこんなものを優先して書いてしまう。
「どこともしれぬ場所にいきなり転生した/試作品」
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