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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第五決算期

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転職102日目 進出計画7

「切り離すならこのあたりになるかと」

 呈示された部署は、確かに一団が直接運営する必要がない所だった。

「切り離しても独立してやっていけるかと。

 むしろその方が上手くいくかもしれません」

「運営に直接関わってるわけでもないですしね」

 確かにその通りである。

 発足当初は必要であったが、今はそうでもない。

 独立してやっていけるだろう。

「やっぱりここか」

 ヒロノリも納得するしかない。

 確かにそこは、今なら自力でやっていけるだけの状態になっているのだから。

「食堂と宿舎はなあ……」

 今の状態なら、そこはもう独立してやっていけるようになっていた。



 当初は一団の人数も少なかったし、訪れる商人などもいなかった。

 だから食料や寝床の確保のために一団がこれらを運営せねばならなかった。

 だが、一団の規模も増大し、訪れる者も増えた。

 食堂や宿舎は一団が運営しなくても独自に活動していけるほどの客を得ている。

 一般的な店としてやっていっても経営していけるほどに。

 手放す事で一団はそれだけの収益を失う事にもなる。

 それを懸念する声もあがった。

 なのだが、そういった事業を抱えておくための負担を考えると、利益と相殺される。

 運営管理するための人員も必要になり、それを支えるための負担で利益が圧迫される。

 だったら必要な物品の手配も一団でやっている。

 それを考えると、利益が出てると言っても決して安泰とは言えなかった。



「仕入れに関わってる部分もあわせて独立させた方が良いかもしれません」

 いわゆる卸業者や問屋と呼ばれるような役目をしてる所である。

 一団のそういった部分も独立させ、独自に活動をさせてしまう事も考えられていく。

「でも、そうなると一団の活動はどうなる?」

 懸念するべきはそこだった。

 負担を排除する為に部署を切り離していくのも考えものだった。

 全ての部署を切り離してしまったら、必要な行動がとれなくなってしまう。

 そこで残すべきは何かを考える事になる。

 すると、切り離そうとしていたものを全て抱えていく事にもなる。

 必要というなら、全てが必要なのだ。

 切り捨てる事が難しい。

「どうしたもんかな」

 悩みは深い。



「まずは一団の仕事を整理しよう。

 何が必要で、何がいらないのか。

 そもそも何をしなくちゃならないのかが分かってないと」

 そう言ってヒロノリは原点に立ち返る。

 まず必要な物をと色々とやってきたが、そろそろ見直していくべき時期に来ていたのかもしれない。

 一団がしなければならない事は、今や昔と違ってきているかもしれない。

 だとすれば、抱えてる仕事を変える必要もある。

 そこを見極めていかねばならなかった。

「今、どうなってんだ俺達は」

 一団の頂点にいながらも把握出来ない全体像を少しは掴んでおきたかった。



 まず、食堂や宿舎は一団がいなくてもどうにでもなる。

 拠点の中で営業するなら客は確保出来る。

 冒険者がいるし、冒険者以外にも商売人や職人がいる。

 それらを相手にする事で利益をあげられる。

 職人や作業員も同様で、何らかの仕事は各拠点の中で発生する。

 同じような所では、冒険者が利用する馬車もそうだった。

 利用する冒険者が増えた事で独自に活動する事も出来る。

 翻ってみると、一団が運営費を徴収してこれらを維持する必要は無くなっている活動が幾つかあった。



 逆に、独自に採算を取れない部分もある。

 荷物を置いておく為の倉庫や、便所などはさすがに独自に運営出来るようなものではなかった。

 倉庫は保管料として利用者から金を取る事も出来るが、なかなかそういった利用者もいない。

 一団としても必要になるので手放すのが難しい。

 その他、拠点の堀や柵などを維持するのも直接金にはならない。

 このあたりは、これまで通りに一団員から費用を徴収して賄うしかない。



「となると、壁を作って守ればいいって事になるのかな」

 目に見える所ではそのあたりが一団の仕事になりそうだった。

 食堂も宿舎も職人も商人も、安全に過ごせる場所があって活動出来る。

 そういった場所を保つ事が第一に思えた。

 これを保っておけば一団としての活動も出来る。

 特に国境の先、モンスターの制圧地域に出向くには安全地帯の確保を最優先しなくてはならない。

 それがあればこそモンスター退治に専念する事が出来る。



「それと、新人の教育と人事管理。

 これもやっておかないとまずいか」

 冒険者が活動するには人が必要になる。

 最低限の技術や心得を知ってる者を育てておけば、既に活動してる者達も受け入れやすい。

 そうしておけば活動に支障をきたす事無くモンスターと戦いにいける。

 巡り巡って一団が徴収する費用となって返ってくる。

 何は無くても、人を育てる部分だけは確保しておかねばならない。

 また、勧誘や人事管理も外す事は出来ない。

 今のところ、これらがなければ新人を獲得する事が出来ない。

 集めた人間を把握しなければ、費用の徴収先も分からなくなる。

 どうしてもこのあたりは削れそうもなかった。

 そして費用や予算を管理する部署。

 算盤を弾く者はどうしても確保せねばならない。

 活動するにしても、先立つものが必要になる。

 今現在、どれほどの金が手元になるのか分かって無いとどうにもならない。

「こいつら用の宿舎は必要か……」

 独自に確保しなければならない以上、他所の宿舎に入れとは言いにくい。

 自分で家を買ったというならともかく、可能な限り一団で居場所を確保しておかねばならない。

「宿舎とかは縮小して、そういうのを抱えられるだけにするか」

 そのあたりが最低線になりそうだった。

「あと、全部を切り捨てるのもなんだから、幾らかは残そう。

 一団で動かせる分が無いと、本当に何も出来なくなる」

 大半は独立させるが、全部ではない。

 ではどのくらい残すのかという事になる。

「一割。

 それくらいでいいんじゃね?」

 独立してやっていける部分のほとんど全てを切り離す。

 そう宣言してるに等しかった。

 一団として提供せねばならない部分がおおよそ分かったので、それ以外は無くても良い。

「拠点の維持に必要な部分だけを抜き出してくれ。

 それ以外は自力でやっていけるよう促していこう」

 それで十分だった。

「必要ならその都度注文すりゃいいんだし。

 暫くは俺らからの注文が必要だろうけどさ。

 ある程度続けば、他でも仕事がとれるようになるだろ。

 そのための営業努力は欠かさないようにしてもらいたいけど」

 いずれは一団から本当に独立してもらいたいものだった。

 その為の準備期間を設ける必要はあるかもしれない。

 だが、それもこれも独立させる、一団の内部を整理する事が出来てからである。

 今はその第一歩の前段階である。

「あと、何を決めればいいんんだろうな?」

 そういって集まった者達と向かいあう。

 会議室にいる者達は頭を使い始めていった。

 まだまだ会議は終わらない。

 筋道は見つけたような気はするが、結論には今少し時間が求められた。

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