転職101日目 進出計画6
鉱山前の拠点建築と同時に人の入れ替えを行っていく。
一団はこの機会に一人でも多くの冒険者を開拓地に送り込もうとしていた。
拠点建築のある程度の長期化は望む所である。
実際、資金や資材の滞りで一時的に作業が停止する事もある。
それが一団にとっては好機になっていた。
ついでとばかりに鉱山への途中にある拠点の整備も進めていく。
往復する人が増えてそれぞれの拠点の規模の拡張が必要になっていた。
小規模拠点も広さを拡大し、人が少しでも入れるようにしていく。
宿舎のある拠点はそれこそ大幅な拡大をせねばならなくなっていった。
運送の為に馬車が行き交うようになり、それらを中にとめておかねばならない。
外に放置するわけにはいかないので、収容出来る場所を作らねばならなかった。
その為、拠点は一気に拡大していく。
冒険者以外の宿泊者を収容する場所も必要になっていく。
そういった者を迎え入れる商売も始まっていった。
馬車を引く馬の世話をする者も同様に必要になっていく。
やってくる者達を相手にする娯楽も始まっていく。
自然と拠点は宿場町のようなものに変化していった。
鉱山周辺のモンスター退治も始まっていく。
鉱山を取り戻す為の活動の一環としてはじめるつもりではあった。
しかし、モンスター退治そのものは鉱山の奪取と関係なく行える。
鉱山前拠点に集まった冒険者達は、まずはそちらのほうを中心に活動をしていった。
未だに拠点が未完成である事から鉱山探索はまだ始まってない。
いつ始まるのかも定かではない。
それを待って何もしないでいるわけにはいかなかった。
前哨戦のように始まっていく鉱山周辺のモンスター退治は、集められた多くの冒険者達の存在によって一気に拡大していった。
鉱山前拠点に至る沿道沿いでも同様の事が起こっていく。
他の方面を手薄にしてまで冒険者を集めただけに、道の周辺からはモンスターの姿が消えた。
これにより特に護衛が付かなくても行商人などが移動出来るようになっていった。
拠点における生活には継続的に運び込まれる物資が必要不可欠である。
モンスター退治によって、生命線となる輸送路の安全の確保も成し遂げる事になっていた。
新人募集も進められ、更にあちこちから多くの者達が流れ込んできている。
人手は常に足りず、新人の育成と成長が待たれていた。
拠点や活動地域が広大化したという表向きの理由と、秘密のうちに進められている開拓地における人員不足の解消を急がねばならなかった。
国境地帯に存在するこの地方のあちこちに人員を派遣し、人を集める。
既に冒険者として活動してる者達に声をかけもするし、都市部や農村の余ってる人手を集めもする。
とにかく一人でも多くの人間を集めるために手を尽くしていく。
国境地帯のこの地方だけでなく、隣接する地方にまで向かって。
もともとモンスターとの接点であるこの地方はそれほど人口が多いわけではない。
人手を集めるためには他の地方にも目を向けていくしかなかった。
周旋屋にも頼んで人を集めていく。
それでも当面の必要人数を集めるのも難しい状況である。
問題はそれだけではない。
拡大する拠点をまとめる組織作りもしていかねばならない。
施設を建築し、施設を運用し、施設を維持していく。
必要な材料を仕入れて足りない場所に補充をしていく。
その為に必要な費用を徴収して管理する。
冒険者を、一団という事業を進めていくために、部署を整理しなくてはならなかった。
とにかく大きくなっている。
宿泊可能な拠点には数十人がいる。
ヒロノリの直下には更に多くの人間が詰めている。
開拓地の方も同様で、事務作業に必要な人員だけでもかなりの数になている。
これらを不必要に拡大せず、可能な限り増大を抑えていくためには整理がどうしても必要だった。
一団として活動するために必要な措置はしていくが、他に任せられる仕事は別の業者に任せていきたかった。
そうなると何をどう絞っていくかを考えていかねばならない。
当初は一団で用意するしかなかった事であっても、今なら別にやる必要もない事もある。
そこを見定めて、廃止するべきは廃止する事を考えねばならなかった。
「で、何をどうしたもんだか」
一団運営の会議にてそれを議題にしていくが、解決策は見あたらない。
拡大も難しいが、事業や作業の統廃合も難しい。
切り捨てるとなれば、そこに従事してる者達をも解雇せねばならない。
別の仕事に振り分けるにしても、簡単にいくものでもない。
関連性のある仕事なら今までやった事を活かす事も出来る。
だが、そうそう都合良く今までの経歴を活かせるものでもない。
大多数が全く経験のない作業をする事になるだろう。
やむを得ないにしても、出来るだけそのための苦労を緩和してやりたいものだった。
こういう時にすぐに首を切れるブラックさがあれば良いのだろうが、そこまで非情になる事は出来なかった。
いずれやるにしてもだ。
「どうにか出来ないもんかな」
幹部に問いかけるも、答えが出てくるわけもない。
拡大と廃止の同時進行の中で、まだ見えない答えを誰もが探っていった。
遅刻してしまった。
ようやく最近書くペースを取り戻してきたというのに。




