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【完結】29歳ブラック企業の社員は別会社や異業種への転職ではなく異世界に転移した  作者: よぎそーと
第五決算期

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転職100日目 進出計画5

 鉱山方面への進出が形となってあらわれて来たのを見て、冒険者達も緊張と興奮をおぼえていった。

 流れ込んで来る資材と、それらが向かう先。

 次に建設される拠点の位置が示され、そちらでの活動を求める告知がなされる。

「いよいよか」といった声がそこかしこで囁かれていった。

 気の早い者は鉱山近くに建設された小拠点に向かうほどである。

 実際、多くの資材と作業員が移動をはじめ、拠点建設が始まっていく。

 堀や柵を作り、施設が設置されていく。

 それだけに留まらず、宿舎や炊事場、倉庫なども同時に建設されていく。

 まだ設備や施設が十分でない拠点もあるにも関わらず、鉱山の目の前の拠点を建設していった。

 そこに多くの者が一団の熱意を感じていた。

「こっちを優先か」

「こりゃ、本気で取りにいくつもりだな」

 誰もがそう思った。

 資金を惜しげもなく投入しての拠点建設だ。

 そう思うのも当然だろう。

 実際、最初に建設した拠点はすぐに拡張工事が始まり、収容人数を増大させていく。

 本腰を入れて鉱山奪取に動くのだろうと予想をさせるに十分だった。

 自然とそちらに人が移動し、モンスター退治の中心地が移動していく。

 他の場所が当然ながら手薄になるので、新人の募集と教育に拍車がかかっていく。

 一気に様々な場所で人の入れ替わりが起こっていった。

 それがどれくらいの勢いで行われたのかを把握してる者はいない。

 一気に一カ所に集中した事と、それを補うために一気に増えた人数。

 意外と広範囲にわたって行われたその動きの中で、人知れず姿を消した者がいる。

 それに気づく者はほとんどいなかった。



 冒険者に比べて作業員は比較的簡単に移動させられる。

 元が貧民だった者達が多く、消えてもさして問題にならない者ばかりなのが大きかった。

 それも家族毎移住するので、身内の消失を気にする事もない。

 気にするのは隣近所に住んでいた者達くらいだろう。

 それでも不審に思う者はほとんどいない。

 何らかの理由で姿をくらます者は少なくない。

 借金取りから、巻き込まれた犯罪から逃れるという事もある。

 気ままに今の場所から消えるという事もある。

 冒険者になって一攫千金を狙う、という場合もある。

 はたまた何らかの形で命を落とす事だってある。

 何が起こってもおかしくないのが貧民街である。

 そんな所で誰かがいきなり消えたとしても、問題視するような者はいない。

 何かあったんだろう、と思ってそれで終わりである。

 一家全員が失踪する事すら珍しいものではないのだ。

 むしろ夜逃げする者が後を絶たないのが貧民街である。

 今までいた者達が消える事など日常茶飯事である。



 統治者達も貧民が消えた事を気にするわけではない。

 招かれざる客というか、厄介者でしかないのが貧民である。

 そのため、治安を担当する者達も見向きもしない。

 そもそも統治者が預かるのは町の中である。

 町の外に作られる貧民街の事など気にかける対象ではない。

 問題が発生しても、それが周囲に拡大しなければ放置する。

 誰がそこに居着いても、そこから誰が立ち退いていこうと関知する事は無い。

 消えてくれればありがたいというのが本音だった。

 


 そんな者達の中で、やる気のある者を募って開拓地へと送り込んでいく。

 人の目につかないように気をつけはするが、それ以外は楽なものだった。

 いてもいなくても良いというのは、こういう時にありがたい。

 おかげで開拓地における作業員の確保はそれほど難しくはなかった。

 モンスターの跋扈する地域を抜ける際に多少は騒ぐ事もあるが、概ね問題なく移動する事が出来る。

 そして開拓地にまで移動出来たらもう問題は無い。

 あとは現地で作業に従事するだけである。

 逃げ出される危険もほとんどない。

 周囲はモンスターだらけで抜け出す事は出来ない。

 外部に情報が漏れる可能性は極めて小さかった。

 それにやってきた貧民もそのうち作業に邁進するようになる。

 何せ耕した分だけ田畑が手に入るのだ。

 食うや食わずだった身が、である。

 やる気にならないわけがない。

 農作業は楽なものではないが、日当数千銅貨の作業など比べものにならない充実感がある。

 土の状態を改善するまで時間はかかるが、それでも鍬や鋤を手に毎日田畑へと向かっていく。

 新規で到着した作業員は、田畑ではなく、新しく拡大される拠点と、その周囲の田畑の整備、それらを取り巻く堀や柵の建築に回される。

 しかし、それもやがて回ってくる田畑の分譲の前段階と思えば十分に堪えられた。

 自分達の居場所を手に入れるためでもあるので、むしろ率先してがんばっていく。

 開拓地の整備は、そういった者達によって進められていった。



 ほぼ同時に移動してくる冒険者達が、周辺モンスターの駆除に乗り出していく。

 安全圏と収入が確保され、開拓地の整備が進められていく。

 決して早くはないが着実に形になっていっている。

 田畑の拡大に伴い新たな居住拠点も作られ、そちらへの移住も進んでいく。

 一気に拡大した冒険者により安全圏の確保も進み、開墾できる土地も増えた。

 広大な田畑を守るための防備も同時進行で作られていく。

 堀と柵が出来上がり、モンスターが入ってこれなくなった所が開墾されていく。

 雑草や雑木が茂った区域に人が入っていき、姿を変えていく。

 連れてきた家畜とする動物が草を食べていく。

 荒れ果てたかつての田畑が元々の姿を取り戻していこうとしていた。


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