表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/89

再生と反抗期

 『再生』を選択したと同時にスマホの画面に門が表示された。

 まるで魔法使いが出てきそうな雰囲気のある門だ。

 その門は扉のときと同じように目の前に現れ、僕を暗闇の中に飲み込むと……


 自分の部屋だ。


 「思った通りだったな……」


 やはり選択すると即決定だったか……


 門の演出に少し興奮しながらも、早速『再生』の効果を確かめる為に押しピンを用意した。


 「自分で刺すのはあまり良い気はしないけど……仕方ない」


 押しピンで親指の腹を刺した後、指を押さえたら血が出て……こない?

 正確には、極小量の赤い点が見える。

 しかし、いくら押しても赤い点が広がることはない。

 移動距離を確認すると0.1km減っていた。


 ため息を吐いた僕は、血を拭い今度はカッターで結構深めに傷をつけた。

 強い痛みを感じ、指に一本の赤い線が走る。

 そして血が溢れ……ない。

 移動距離を確認すると0.1km減っていた。


 「オート発動か……」


 冷静に言葉を発声したが、めっちゃ驚いている。

 驚き過ぎて逆に冷静なぐらいだ。


 ナニコレ?


 お医者さんどうすんの?


 一家に1台かかりつけスマホ?


 テレビ!

 スーパードクターやってる場合じゃないだろ!

 ここにいるよミラクルドクター!


 僕は混乱する頭を回復させようとするかのように、テレビや医学書に文句を並べた。


 少しして思考も回復してくると、とりあえず僕は『再生』の検証を進めることにする。



 『再生』の能力を確認していくと、いくつかのことがわかった。

 まず自分以外にも効果がある。

 生物はまだわからないが、鉛筆は触れて念じることで再生できた。

 しかし……時間制限がある。

 以前から削ってあった鉛筆は再生できないことに気が付き、調べてみると傷の再生が可能な制限時間は……30秒。

 紙に目盛りを書き、ゆっくり1秒ごとに切り込みを入れて再生。

 その結果、30秒経つとその状態が再生の基準になるようだった。

 ちなみに小さな傷の上から大きな傷をつけ再生しても、小さな傷は残る。


 「確定ではないけど……難しいか」


 二美が怪我をしたのは約11年前だ。

 『再生』は予想以上に有能な能力なんだけど、11年前の状態に再生するためには……


 そんな感じで僕が頭を悩ましていると、ドアをノックする音と母さんの声が聞こえてきた。


 「いっちゃん。起きてる?」


 「あっ起きてるよ。おはよう母さん」


 そう言って僕がドアを開けると、少し心配そうな母さんがいた。


 「体、大丈夫?いつもなら起きて走ってるでしょ?顔色は大丈夫そうだけど……」


 母さんが額に手を伸ばしてきたので、僕はひょいっと避けた。


 「ちょ、ちょっとスマホの使い方を確認してただけだよ。ってもうこんな時間!」


 時計は6時30分過ぎを指していた。

 こりゃ朝のランニングは無理だな。


 あちゃ~といった顔を見た母さんは、安心したのか少し笑って階段を下りていった。


 「おっ、おはよう!珍しいね。今日は走らなかったのかい?」 


 「おはよ、どうしたの?」


 リビングに着くと父さんと二美が朝食を食べていた。

 今日のごはんは卵焼きと味噌汁、おひたしと嬉しいラインナップだ。


 「おはよう。早めには起きたんだけど、スマホしてたらついついね」


 「おお!お兄ちゃん、やっとスマホの良さがわかってきたか」


 「へえ、いちがスマホをねぇ」


 父さんが珍しいものをみた顔で僕をみる。

 そんなに僕がスマホを使うのがおかしいのかな?

 機械オンチなのは認めるけど。


 「いや、恥ずかしい話あんなにいろんな事ができるなんて知らなかったよ。科学の進歩は凄いね」


 「でしょでしょ。科学の進歩は凄いんだよ」


 なぜお前がどや顔なんだよ、二美。


 「ああ。今回はぐうの音も出ないよ。二美が「スマホ、スマホ」言ってた理由がよくわかったよ」


 「一がそこまで言うか……こりゃ父さんもスマホにすることを考えてみようかな?」


 そんな話をしていると母さんが台所から朝食を持って来てくれた。


 「はい、用意できましたよ。ご飯は自分でつぎなさい」

 「わかった、ありがとう」


 美味しい朝食を食べて、学校に行く準備をすると玄関から声が聞こえてきた。


 「行ってきま~す!」


 「行ってらっしゃい」


 僕は急いで階段を下りて、お見送りで玄関にいた母さんに「行ってきます!」と声をかけるとすぐに外に出た。


 「おーい二美~!」


 「げっ、お兄ちゃん」


 二美がいたずらがばれた子供のような顔で振り向いた。


 「なんだよ、『げっ』って?」


 「なんでもないよ。たぶん妹離れできない兄を心配した妖精のため息だよ」


 ずいぶんと奇妙なため息をする妖精だな!


 「どんな妖精だよ……そこまで送るぞ」


 「いいよ。反対方向だし、すぐに友達と合流するから」


 最近、二美が一緒に登校しなくなってしまった。

 高校も違うところを受けたし……兄は少し寂しいぞ。



 「……最近はいつもそれだな」


 「科学と一緒で人も常に進化してるんだよ。お兄ちゃんと違って」


 なんだよそれ。まるで兄ちゃんが成長してないみたいじゃないか。


 「どういう「二美~!」


 「あっひとみ!お兄ちゃん、さっさと行って。しっしっ!」


 まるで人を聞き分けのない犬や猫のように手で追い払われた。


 「ああ……気をつけてな」


 二美はこちらを振り向きもせずに、友達のところへ行っている。

 二美の中学時代からの友達の近藤瞳こんどうひとみちゃんが僕に向かって会釈をしてくれたので、自分も片手を上げて答える。

 二美に良い友達ができてくれて良かった。


 それにしても……反抗期かな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ