異世界?
な、何が起きたんだっ!?
気が付けば、変な木の前にいる、光輝く幽霊になっていた。
振り向けば、女性の着替えを覗く、光る変態お化けになっている。
わ、訳がわからないっ!
と、とにかく、謝るんだ。
状況を判断しようと頭をフル回転させながらも、僕は全身全霊で平謝りした。
僕が女性を背に、頭を抱えて低い姿勢で謝り続けていると、次第に物を投げるペースが落ちてくる。
背中の方から聞こえてきた、「お化け」や「変態」といった心をえぐる言葉も少しずつ収まり、少し息切れした女性の息づかいが微かに聞こえてくる。
『すみません、、すみません、本当にすみません。……できれば服を着ていただいて、お話しをしたいのですが……』
「……? あっ!? もしかして……お化けじゃなくて、聖霊様っ!?」
『えっ? いや、僕は……あっ、気を付けて――』
僕は事情を説明しようすると、こちらに慌てて駆け寄る女性の足音が聞こえ――
「きゃぁぁ!」
何か物を蹴飛ばしたような音と共に、女性の驚いた声。
『……やっぱり』
僕が慌てて振り向くと、お尻を押さえながら「いたた……」と言ってる女性がいた。
僕は目をそらしながら、女性の頭だけが出るように光の繭を編み上げる。
その女性は夢でみた、よく転ぶ歌姫、アリシャさんだった。
『――――だから、僕は聖霊様ではなく。たぶん、この糸を辿ってやって来た異世界人? だと思います』
僕はアリシャさんと僕を繋ぐ、光の糸を見せながら、ここに来た理由を説明した。
「そうだったんだ。お姉さん、恥ずかしいとこ見せちゃったね……」
自分のことをお姉さんと呼ぶアリシャさん。
だが、実は結構小柄だ。
夢でも、その事をからかわれて怒っている場面があった。
逆にお姉さん扱いされると、すぐに調子に乗ってしまう。
夢の情報が確かなら……試してみるか。
『いえ……いきなり知らない所にやってきて心細かったけど、お姉さんのようにしっかりした人に出会えて安心しました』
効果はすぐに出た。
「そ、そうかい。いやぁ~、うん! それは心細かったね。お姉さんが何でもしてあげるから安心しなさい!」
……予想以上の効果だが、なんかズルしてる気がして心が痛むな。
でも、今はこの状況を知るための協力者が必要だ。
すみません、このお礼はいつか返します。
『ありがとうございます。アリシャお姉さん』
「いいって、いいって。このお姉さんに任せなさい。なんか君、初めて会った気がしないんだよね~」
……とりあえず、悪い人に騙されないように、今度教えてあげた方が良さそうだ。
まてよ、『限界突破』の好?度や友?度が高いのも、影響してるのかもしれないぞ。
でないと、さすがに不用心すぎる。
『夢か何かで会ったかもしれませんね。ところでアリシャお姉さん。スマフロって聞いたことありますか?』
「ん? スマフロねぇ……ごめん、知らないや。でも、夢かぁ。お姉さんを口説いているのかな? 君は?」
『い、いえ、そんなことしてません! ス、スマフロ、そうスマフロと呼ばれる魔法の道具を手に入れたときに、右からウサギが体当たりしてくるので、注意してください!』
「あ、ああ…… そんなに否定しなくてもいいじゃないか…… それに、なんか見てきたような詳しい予言だね。もしかして、予知夢の魔法持ちなのかな?」
『そうです! 似たようなものを持っている可能性があるので、その夢で会ったのかなって思ったんです!』
「おお、そりゃ凄い。私もそんな才能欲しかったよ。それなら、あんな恥ずかしい思いも……」
アリシャさんが、ぶつぶつ言い始めたとき、テントもどきの幕の向こうから声が聞こえてきた。
「アリシャ? そろそろ出番だぞ。先に行っているから用意して来るんだぞ」
「えっ? もう、そんな時間!? わかったー。すぐ行くから待ってて、お姉ちゃん! ……こほん。イチ君はここで待っていたまえ」
『……はい』
アリシャさんが照れくさそうに、テントもどきから出ていく。
……すいません。
アリシャさんが極度のお姉ちゃんっ子なのは夢で知ってます。
ドジで恥ずかしがりやで、仕事も上手くいってないことも……
でも、とても優しくて、歌が凄く上手で、踊り子のお姉さんが大好きで……
内心憧れているお姉さんの真似をして、お姉さんぶってることも知っています。
そして……
お姉さんがアップデートの戦いで、アリシャさんを庇い大怪我をして……
踊れなくなってしまうことも……
知っている。
できれば、未来を変えてあげたいが……
お姉さんの件はスマフロも知らない頃なら、まだまだ時間に余裕があるはずだ。
スマフロに出会ったときの、ウサギの突撃も教えたし、それが未来が変えられるかのテストにもなるだろう。
いや、僕に会ったこと自体が、夢とは違っているのか?
これも、おいおい考えよう。
それよりも、まずは現状確認が先決だ。
どうにか『夢所』にもどらないと……
『おーい、相棒!!』
僕は相棒を球体にして、撫でながら何度も話しかけるが返事はない。
……無理か。
次に他の特殊能力を使おうとするが、使えないようだ。
魔力は……動かせない。
どうなっているんだ?
光の糸は動かせるのに、なぜ魔力が動かせない?
まさか、ここの魔力は全て支配されているのか!?
……仮に、光の糸に乗って僕の霊体? だけがアリシャさんの所に来たとする。
……時間軸が合わない。
システムの壁にあった光の糸からは『限界突破』の気配、すなわちアリシャさんの気配がしていた。
スマフロも知らないアリシャさんが、『限界突破』の特殊能力に組み込まれるのだろうか?
もし、組み込めないとしたら……
現在、この世界が過去の出来事だったなら、タイムスリップしたのか!?
いや、もともと僕はアリシャさんを夢で見たんだ。
なら、この世界は……
考え事をする僕の目に写る景色が、草原に変わった。
「あれっ? イチ君じゃないか? あの時は急にいなくなるから、ビックリしちゃったよ」
『……あの時は、すいません。アリシャさん』
ここは、アリシャさん達がスマフロに出会う草原。
そして、この草原の魔力も支配されているようだ。
僕はたぶん、アリシャさんの夢の中に来たんだ……




