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質問と慈悲

 「お伺いしても、よろしいでしょうか?」


 胸が締め付けられるのを感じる。

 体が勝手に震えだしそうだ。

 何でもない質問だが、僕にとってそれは、とても勇気が必要な質問だった。


 「本当ならルール違反なんだがね。一文路君には特別に質問を許そう」


 何気ない一言。

 だが、それはとても重要な一言だ。


 とりあえず、第一関門は突破したか……


 「何か失礼があれば、教えてくだされば嬉しく思います。……スマフロの目的は何でしょうか?」


 「……いきなり目的について聞くかい? ……まあ、いい。ここだけの話にすると、約束するなら話してあげよう」


 「すいません。ありがとうございます」


 ふーっ、ちょっと危なかったようだ。

 カリヤさんは僕の心を読むことができる。

 失礼がない程度に、素直に質問させてもらおう。

 無理そうなら、すぐに撤回てっかいするけどね。


 「その考え方は悪くないね。おっと、失礼。君が約束を守るつもりか、少し調べさせてもらったよ。つまらないことで、君を失いたくはなかったからね」


 どうやらカリヤさんは僕の思考を読み取ったようだ。


 「……大丈夫です。お気遣い頂いて、ありがとうございます」


 質問の価値に比べたら、僕の心を見られることぐらいは何のことはない。

 この蜘蛛の糸には、僕の家族や大切な人達もぶら下がっているんだから……


 「いいね。その対応は気に入ったよ。他の下位世界の馬鹿共は、何かにつけて騒ぎ出すからね。たまに会話になる馬鹿も、『対等な条件での話し合い』を望むものが多いから、困ったもんだよ。おっと、愚痴になってしまったかね?」


 「いえ。後で、お聞かせ願えたらと思います」


 その人達の結末に興味津きょうみしんしん々です。

 怖いけど……


 「君は特殊能力を含めて本当に好感が持てる。 いや、本当に助かるよ。 これで私も……」


 理由は知らないが、カリヤさんはとてもご機嫌そうである。

 それに、この特殊能力『光の糸』をとても気に入っているようだ。


 「さて、スマフロの目的だね。……目的は大きく分けて二つだ。一つは君達への慈悲、もう一つは我々の発展だ」


 カリヤさんは手の甲側を目の前に出し、指を一本ずつ伸ばしながらゆっくりと語りだした。


 「僕達への慈悲と、カリヤさん達の発展……」


 僕は言葉の真意を胸に落とし込もうと、カリヤさんの言葉をつぶやいた。


 「ああ、君達の世界はだいぶ無理をしている。資源も含めてだが、時間的にもね」


 「……時間的にですか?」


 資源は理解できるが、時間的とはどんな意味だろう?


 「そう、初めのダンジョンで見ただろう? 君達が呼ぶところの『宇宙』……いや、世界も、生き物と同じで生まれて死ぬ。そして、このままでは君達は『世界の死』に巻き込まれるだろう。このままの発展速度ではね」


 「……時間が足りないということですか?」


 いくら科学が発展しても、『世界の死』なんかに対応できるのだろうか?

 

 「時間ならあるさ。だが、つまらない事に浪費し続けている。発展的に無駄をして、時間的に無理を強いているといったところだね」


 「……お恥ずかしい話です」

 

 スマフロを作れる科学力から見れば、地球の科学力は、さぞ幼稚に見えるだろう。

 人間性的には、あまり変わらないように思……っとダメだ!

 無駄な思考は止めて、とにかく謝れっ!


 「申し訳ありません」


 頭を下げ続ける僕の耳に、カリヤさんの溜め息を吐く音が聞こえてくる。


 「……まあ、いい。さっきのは減点だね」


 「はい、本当に申し訳ありませんでした」


 カリヤさんは普通に話してくれているが、対等ではないのだ。

 意識を入れ替えろ!

 僕だけの命じゃないんだぞ!!


 「ああ、一文路君だけだがね。こんな無礼を許すのは……他の馬鹿共なら家族の首がここに並んでいるから、きもに命じたまえ」


 「はい! ありがとうございます」


 おい、肝くん!

 お聞きになったか!?

 縮こまってる場合じゃないぞ!

 責任が重大過ぎて可哀想には思うが、とにかく頑張れ!

 他の臓器も、肝くんをしっかりサポートするんだぞ!


 あと、脳さんは一部の機能を一時停止でやってくぞ!


 「くっくっ、一文路君は本当に面白いねぇ」


 「……恐縮です」


 僕は本当の恐縮の意味を知った。


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