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二美のダンジョン管理


  「えーと、一応ここにダンジョンの入り口があるんだけど……見える?」


 二美の方に振り向きながら、縁側の突き当たりに設置させてもらった銀色の扉を指差し訪ねる。

 みんなの邪魔にならないようにと庭にダンジョンの入り口を設置したのだが、二美が使用するには不便だったので移動したのだ。


 「うん、見えるよ。お兄ちゃんが運んでいるときはパントマイムみたいだったけど、本当にあったんだね」


 「……家族を相手にパントマイムをしてまで嘘をつくって……兄ちゃんどんだけ寂しい奴なんだよ」


 二美が父さんを説得した後、とりあえずみんなで銀色の扉を見てみることにしたのだが、自分以外は誰にも見えなかった。

 試しに父さんが触ってみようとしたが、素通りしてしまい触れない。

 そこで僕が扉の上に乗ってみせようとしたとき、小雨が降ってきたので「扉は家の中に運ぶから」と言って、みんなは家の中に移動してもらった。

 その後、扉を両手で抱えて横歩きで軒下までうんしょ、うんしょと運んだのだが、その姿が怪しかったらしい。

 幽霊が見えるって話す人に対して、今後はもっと優しくしようと思う。


 「でも管理人の登録だっけ? お兄ちゃんは機械音痴だから説明書が無いのは痛いよね。よかったね、渡さんが友達で」


 「命がかかってるんだから痛いどころじゃないけど、渡のおかげでだいぶ助かっているのは事実だな」


 二美をダンジョンの管理人に登録するのに思ったより手間取り、結局は渡先生に聞いて登録が完了した。

 ダンジョンのサポートは、スマフロの操作にまで対応していないのか、詳しい操作を教えてくれない。

 説明書があれば一人でも大丈夫なんだけどなぁ……たぶん。


 一路君達が来るまでにあと2時間あまり時間があるので、とりあえず二美を連れて白い部屋に行くことにした。

 父さん達に一路君が来る20分前には帰るからと伝えて、二人で銀色の扉をくぐり白い部屋に到着する。

 二美が「へぇー」とキョロキョロ部屋の中を見ていると、中央にある黒い球体が急に変化しだしたので「へぇー」が「ほぇー」になった。

 ……現実でも「ほぇー」って言うことあるんだな。


 「ダンジョンの現状について大まかには話したけど、とりあえず兄ちゃんが操作するところを見て疑問に思うことがあれば質問したら良いから」


 二美がコクコクと首を縦に振るのを見て、僕は黒い操作パネルにタッチした。

 二美が現状になれて冷静になる間に、ダンジョンの状態を確認しとこうかな。


――――――――――――――――


 「えーと、二美? あと30分ぐらいで一路君との約束の時間なんだけど……」


 「えっ? なに? もうそんな時間!! うーん、これは次回でいっか。すぐに終わらすから」


 そう言って黒いタッチパネルを操作する二美を、僕はそわそわしながら待っている。

 一路君との待ち合わせの時間が迫ってきているのもそわそわする原因の一つではある。

 だが、正直やることがないのが一番の原因だ。

 『ダンジョン管理が出来ているのか?』『困ったことはないのか?』と二美の操作中に何度も声をかけ、「ごめん、分からないことがあったら聞くからちょっと黙ってて」と言われて後ろから見てるだけの一時間。


 最初の20分ぐらいでほとんどの操作をマスターした二美は、サポートさんと仲良くダンジョンに手を加えている。

 たまに「なんでヌートリアが……」とか「やぎ!!」とか聞こえてくるだけで、お兄ちゃん寂しいよ?


 それもこれもダンジョンを攻略された時のデメリットのせいだ。

 僕の命が失われるかもしれない事を知った二美は、まず僕をにらむとため息をついて「……メガネめ」と呟き、タッチパネルの操作とサポート音声への質問が荒くなった。

 だから僕は悪くない。なぜか少しの間「二美さん」と、さん付けで呼んでしまったが、僕は悪くないのだ。


 そんな二美さんのダンジョン管理は、はっきり言って僕より上手である。

 やはりゲーム等での経験からか操作自体も速いし、トラップもいやらしい。

 偽のゴールと帰還用の扉を設置したり、簡単に解ける暗号の答えが『この先からは死ぬ可能性あり』だったりで、自主的にお帰りいただける人達も増えた。

 実際『この先は危険』や『この先入るな』の表示を無視して進んだ人達は、酷い目にあっている。進行形で……

 トラップに引っ掛かり、地面から頭だけ出た状態になっているのだ。

 恐ろしい事にそのまま放置するらしい……


 「すぐ楽にしたら、また来るでしょ。三日ぐらいで退場するようにしてるし、装備も吸収できるんだよ? 何度も警告したんだから、泥棒と変わらないよね。だから……このぐらいは仕方ないよ。うん、仕方ない。今度は黒い悪魔も用意しとこっか? コスパは最高だしね」


 彼らがお日様を拝めるのは三日後なのか……

 そしてG様。

 みんな警告はしっかり守るんだぞ。南無南無……


 それと建築の勉強しているおかげか、無理のない設計でダンジョンポイントの節約にもなっている。

ファンタジーぽいのに、現実的でない設計だとダンジョンポイントの消費が激しいなんて考えもしなかった。

 僕はだいぶダンジョンに無理をさせていたようだな。


 そしてダンジョンの中で生存していた動物達。

 そう、彼等はダンジョンという過酷な環境の中でもなんとか生きていたのだ。

 さすが侵略的外来種ワースト100、選ばれしエリート達である。

 まあ、ダンジョンが人間や攻撃的な生物に対して反応しやすいだけで、大きさがある程度以下の生物には対応しきれてないのが大きな要因なんだけどね。

 そこに目をつけた二美は、保健所にいる殺処分する予定の動物達やエリート達が生存しやすい環境にダンジョンを改造し、飼育をしていく予定らしい。

 上手く行けば今後は酪農等も視野にいれているとのことだ。フミゴロウ王国でもつくるつもりなのか?


 ゴミ処理はそのまま継続。

 しかし、危険な産廃等は動物達がいないダンジョンにまとめて処理する予定である。

 ダンジョンポイントに余裕が出てきたら有益な物質やアイテムに変換し、リサイクル施設としてもやっていくつもりだ。


 そんなこんなで二美の第一回ダンジョン管理は終了。

 あと何回かは顔を出すつもりだが、二美だけでもしっかりやっていく事ができそうだ。

 縁側に戻ってから、そのことを二美に話すと、二美も大丈夫そうだと答えた。


 「思ったより自由度が高いよね。何かあればお兄ちゃんに連絡出来る機能も見つけたし、たぶん……いや、絶対大丈夫にしてみせるから!」


 両手を強く握り、力強く答える二美が心強くも微笑ましい。


 「ありがとな。頼もしいよ」


 「うん! 任せてよ!」


 役に立つことを見つけた二美の笑顔は、以前より少し輝いていた。

 未来さきのことは分からないが、現在いまは二美を管理人きょうりょくしゃに選んで良かったと思う。


 「さて、あと25分ぐらいで一路君達が来るはずだから用意しとかないとな」


 「そうだね。……けど大丈夫かな? 悪意は無くても、凄い力はあるんだよね。お兄ちゃんも負けちゃうぐらい。……正直いって少し怖いよ」


 「……そうだな。兄ちゃんなんか自分の力ですら怖いよ。でも普通の人だって、その気になれば人を害することは出来るんだ。車なんか凄い力だしね」


 「……そうだね! けど良いよなぁ~ 私もそんな力が欲しいよ。でも、みんなもそんな怪しい力をよく受け入れているよね。国とかもさ~ もっと規制するもんだと思ってたよ。死人も出てるのにね」


 「……そうだな。なんで……渡。おい、渡? 聞こえてるか?」


 僕は少し焦りながら胸にある連絡装置を押して、渡に声をかける。

 二美はそんな僕の様子を、『へ?』っといった顔で見ていた。




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